「自分の車がある毎日」は大正解だと教えてくれるBMW 3シリーズツーリング
2019/12/21

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
年式とかグレードとかはよく分からない
筆者が見たところ、その車はいわゆる後期型のE91(旧々型BMW 3シリーズのツーリング=ステーションワゴン)で、グレード的には2L直4ガソリンエンジンを搭載する320iだ。
しかし、持ち主である伊東佑馬さんにそのあたりのことを尋ねても「や、年式とかグレードとか、車検証見てみないとよく分かんないっす。……何だったっけ?」と言う。
細かな部分にこだわり、メカニズムやヒストリーなどのディテールを愛する正統派な車好き各位からすると、そのように(ある意味)適当な態度で車を購入し、そして維持している伊東さんみたいな人に対しては「けしからん!」と感じるかもしれない。
彼が「いわゆる正統派で古典的なタイプの車好き」でないのは確かだろう。
しかし、何事も人が百人いれば、そこには「百通りの愛し方がある」のである。
▲伊東佑馬さん(29)。太陽光発電所の物件仲介や発電所部材卸販売などの事業を展開する「One Ten」という会社を起こし、経営する若き社長
▲愛車のBMW 3シリーズツーリング伊東さんがこの年式不詳なBMW 320iツーリングを購入したのは今年9月のこと。いや、話はその前、約2年前に初の愛車として買ったアウディ A4アバント(こちらも年式やグレードは不詳)から始めるべきだろう。
東京都内の城南地区に生まれ育った伊東さんは、今現在は「城西」と呼ばれるエリアにお住まいだが、今でも地元・城南地区の友人たちと親しく交遊している。
で、皆さん地代がやたらと高い都内にて、ハタチも越えて親元を離れて暮らしているゆえ、当然ながら(?)自家用車を持っている仲間はほとんどいない。伊東さん自身も、26歳までは車を持ってなかった。
「でもある日、『めんどくせえ。……ならオレが車ってやつを買ってやるよ!』って思ったんです。カネ、なかったんですけどね(笑)」
どういうことかと言えば、友人らと週末ごとにあちこちへ繰り出すのは楽しいが、電車やバスで移動するのはかったるい局面もある。また、不特定多数の人間が集まる公共交通機関の車内や駅構内などでは、正直不愉快な出来事もなくはない。
「……ってことで主にはレンタカーを借りて使ってたんですが、それはそれでめんどくさいんですよ。返す時間を気にしなくちゃいけないし、かかったお金をいちいちワリカンでどうのこうのと友人と話すのも、正直かったるいし」
ということである日「あーもうめんどくせえ!!!」と爆発した伊東さんは、前述のとおりアウディA4アバント(ステーションワゴン)を買った。車種は「アウディって、なんとなくカッコいいから」ぐらいの理由で決めた。
このA4アバントは中古車販売業を営む友人を通じてかなり安く買えたが、これまた前述のとおり「それでもカネがなかったので、けっこう大変でした」と言う伊東さん。
だがそのようにちょっと無理をして手に入れた「自分の車がある毎日」は、大正解だった。
「何より時間のことを気にしなくていいし、交通機関でよくある不愉快な思いもしないで済む。酒も飲まなくなりましたしね」
地元の友人らを乗せて出かける先では「酒」がからむことが大半だそうだが、当然ながら伊東さんは、運転する日はいっさい飲まない。
「飲酒運転がいけないっていうのは当然すぎるほど当然として、別に飲みたいとも思わないんですよね。それよりも、しっかり運転することで彼女や友だちが安心してくれたり、楽しんでくれたりすることの方に、今は歓びを感じるんです」
今の話で「彼女」として登場した、伊東さんと同居しているパートナー・川越さんも、「今や車のない生活は考えられない」と言う。

「前のアウディの車検が満了するってことで今のビーエムに買い替えることになったんですけど、その際にちょっと“間”が空いたんですよ」
格安アウディ A4アバントから格安BMWに替わる際に、家に車がない期間が少々あったのだという。
「で、そのときには『えーっ、週末とかどうしよう!』って、かなりパニクっちゃいました(笑)。アウディが来る前は『車なんて無いのが当たり前』だったのに、贅沢な話ではあるのですが、もはや戻れないんですよね……」
車が無いなんて考えられない
▲最新のBMWデザインに近くなるようキドニーグリルがカスタムされているのだが、これも前オーナーの趣味らしく、詳しくは分からないそう
▲ホイールも同様に前オーナーのカスタマイズふたりは週末ごとにアウトレットに行ったり、伊東さんが好きな総合格闘技の試合を各地まで見に行ったりしている。
車内では、主に歌ってるそうだ。
「彼女(=川越さん)、元シンガーなんですよ。で、高速道路とかではふたりでハモって。でも僕は下手なんで、彼女に『音程が1コ違う!』とかビシビシ歌唱指導されながら運転してます。『1コって何の1コだよ? 分かんねえよ!』って感じなんですが(笑)」
川越さんは川越さんで、「走行中の車内で眠ることができない」という。
「や、この人(=伊東さん)ってめっちゃ運転うまいんですよ。すっごくスムーズで。でもわたし自身が運転中に助手席の人に寝られるのがすっごく嫌だから、どうしても寝ることができないんですよね……」
「オレの運転が下手なのかな? とか思っちゃうんで、僕としてはぐっすり寝てほしいんですけどね」
「やー無理無理! わたし絶対寝れない!!!」

相変わらず、ふたりはこのBMWの年式もグレードも知らない。
だからといって、このように「車がある毎日」を大いに楽しみ、そしてその楽しさをもたらしてくれる車のことを「いやほんと、車があるっていいですよね……」と感謝しているふたりのことを、「でも年式もグレードも知らないから、この人たちは車好きじゃない」なんて言えるだろうか?
筆者は、そうは思わない。


伊東佑馬さんのマイカーレビュー
BMW 3シリーズツーリング(E91型)
●購入金額/約76万円
●年間走行距離/約7000㎞
●購入する際に比較した車/ジープ ラングラー
●マイカーの好きなところ/イカリングLED
●マイカーの愛すべきダメなところ/走行中のフワフワ感
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/女子を乗せたい人

インタビュアー
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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