新居の開拓とツーリングの旅をサポートするハイゼットトラック
2021/11/24

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
ツーリングの途中で偶然の出合い
千葉県南房総市の小高い丘の上に、横浜市内から越してきた高田さん夫妻。土地については「ひと目ぼれ」だった。
「仕事を引退したらどこかで田舎暮らしをしたいとは思っていたのですが、具体的に『どこで』というのは決めてませんでした。
しかし、妻とバイクでたまたまこの付近に来たとき、信号待ちの交差点でふと『このあたり、すごくいい場所だな……』って、ぼんやりとですが感じたんですよね」
BMW製大型バイクのシートから、あくまでなんとなく周囲を見渡していた高田寧彦さんの視界に、ひとりのおじさんが入ってきた。その人はなぜか知らねど、こちらに手を振っている。
「手を振っていた人は、その交差点のすぐ近くにある不動産屋さんの社長さん。『お~い! もしも移住のための土地を探してるなら力になるよ~!』みたいなことを言ってました。
いきなりなので驚きましたが(笑)。これも何かのご縁かな思ってツーリングを中止して、社長さんとその日のうちに土地を見て回ることにしたんです」
社長さんといくつかの土地を見て回った中で、妻の留美子さんとともに「ここだ!」と思えたのが今の場所。小高い丘から、竹林の向こうに内房の美しい海が見え、さらにその向こうに霊峰富士が見える土地だった。

生活を支える必要不可欠な存在
横浜市内の家は子供たちに託し、夫婦での「山の暮らし」が始まった。
そして車は「軽トラ」に変わった。2018年式のダイハツ ハイゼット ジャンボだ。
「昔からの趣味であるBMWの大型バイクを運搬するため――という理由もありますが、そもそもこのあたりでは、軽トラがないと生活が成り立たないんですよね。
まきを運んだり、外構や庭を整備するための資材を運搬したりもしなくちゃなりませんので、軽トラは“マスト・ハブ・アイテム”なんです」
ちなみに高田さん夫妻が暮らす「山の家」は、さすがに建物自体は本職の大工さんが作ったものだが、外構工事やウッドテラスの製作、石垣づくり、スロープのコンクリート流し込み等々はすべて、寧彦さんが自分で行った。
その意味でもハイゼット ジャンボは、『どんなクルマと、どんな時間を。』という詩的なニュアンスではなく純然たるリアリズムとして、山の暮らしにおけるハードコアな“働き手”として、普通に必要な存在だったのだ。

バイクを積んで全国各地へ
しかし――だからといってダイハツ ハイゼット ジャンボが高田夫妻にとってリアリズム一辺倒な存在かといえば、それも違う。
ハイゼット ジャンボの「詩的な側面」が発露されるのは、夫妻でバイクのツーリングに遠征する際のことだ。
「昔からBMWのバイクが本当に好きで、今乗ってるR1250 GS Adventureという1250ccのバイクも、同じ型を2台続けて買ったぐらいです(笑)。
で、BMW仲間と遠出するツーリング会に妻とタンデム(2人乗り)で参加してもいいのですが、やっぱり危ないですし、疲れますから、ハイゼット ジャンボの荷台にR1250 GS Adventureを載せて、そして妻が助手席に座って、2人でトコトコと開催地を目指すんです」
軽トラでの長距離走行というのは聞くからにツラそうだが、実際はそんなこともないという。

「昔のやつはさておき、今のハイゼットは乗り心地がけっこういいですし、普通のと違ってウチのは『ジャンボ』ですから(※編註:通常の軽トラよりキャビン部分が前後に長く、シートのリクライニングが可能なタイプなので)、長い距離を走ってもそんなには疲れないんですよ」
なるほど。だが目的地に到着すれば、寧彦さんはBMWバイク仲間と一緒にどこかへ走って行ってしまう。となると、見知らぬ場所にひとり残される妻の留美子さんは、退屈あるいは不安になったりしないものなのか?
「ぜんぜん(笑)」と、留美子さんは笑う。

「わたしもバイクは普段から乗ってるんですが、まぁツーリングは旦那に任せて、旦那が仲間たちとサーッと行ってしまった後、わたしはわたしで現地のあれこれを楽しむんです。ハイゼット ジャンボをひとりで運転してね」
寧彦さんを見送った留美子さんはハイゼット ジャンボの助手席から運転席に移動し、まずは「全国制覇を目指している(笑)」という道の駅めぐりにまい進する。
さらに、ツーリング開催地の近くにもしもお城があれば、これまた全国制覇を目指している「城郭めぐり」にも精を出す。退屈も不安も感じているヒマはなく、むしろ大いに充実しているのが、ハイゼット ジャンボの“運転席”に座る留美子さんなのだ。

そして仲間たちとのツーリングを満喫した寧彦さんが戻ってきたら、再びBMW R1250 GS Adventureを荷台にくくりつけ、夫妻でトコトコと南房総を目指す。その日、それぞれが体験した「素敵だったこと」を、軽トラの車内で話しながら――。
まぁ、その翌日からまたダイハツ ハイゼット ジャンボは「リアリズムの世界」へと戻っていくわけだが、いつまでもそこにとどまるわけではない。
また半月か1ヵ月もすれば、シートが少しだけリクライニングする銀色の軽トラックは、夢の世界への――ちょっと無骨な――水先案内人へと変わるのだ。

高田寧彦さんのマイカーレビュー
ダイハツ ハイゼットトラック(現行型)
●走行距離/48,000km
●マイカーの好きなところ/リクライニングができるため長距離移動も不便はない
●マイカーの愛すべきダメなところ/特になし
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/生活にもレジャーにも活用したい人

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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