【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】新しい生活様式と自動車について(前編)
2020/11/14

親愛なる読者諸賢。初めまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。
日経ビジネス電子版を中心に、様々なメディアで車の記事を書き散らかしております。どうぞお見知りおきを。
半年ほど前、コロナ禍が中古車市場に与えるインパクトを日経で記事にしようとカーセンサーの西村編集長にインタビューをする機会がありました。中古車市場はもちろん、話は自動車業界全体から世相や消費動向にまで及び、大いに盛り上がることとなりました。
しかし、記事にできたのは話のうちのごくわずか。何しろ日経ですからね。あまり途方もないことは書けないのです。
で、当然『これを記事にしないのはもったいない!』という話になりまして、あらためてwebカーセンサーで放談企画として形にしたというのが当欄の始まる経緯であります。
他社の企画のオイシイ部分をガサっと頂いて記事にしてしまうのですから、恐るべきはリクルート。日経BP社の怨嗟の声が心地よく耳に響いてまいります。
一応テーマは設けるものの、私と編集長が好き勝手にくっちゃべる文字どおりの砲弾……いや違う放談企画です。ごゆるりと流し読んでいただければ幸甚であります。
さてさて、記念すべき第1回のテーマは「新しい生活様式と自動車」
日本のカーライフは、どう変わった?

西村さん、よろしくお願いします。

よろしくお願いします。好き勝手話したいところではあるのですが、一応、自動車メディアですので(笑)「新しい生活様式と自動車」というテーマでお話できればと思います。

ウィズコロナ、アフターコロナにおける自動車ということですね。「新しい」といいますと、まずは目先で今年の3月、4月の自動車販売実績。新車販売も中古車販売も大幅に下落して、5月から徐々に復活してきた。先日マツダの方を取材したときに、アメリカでは5月からロードスターの対前年比が30%もアップしたと聞きました。みんなで集まって野球を見に行ったり、コンサートに行ったりということはできないので、個人的な趣味に走っているようです。ロードスターはまさしく趣味の塊のような車ですからね。

それは新車のロードスターですか?

新車です。
一方で、日本ではバイクが売れているという話を、ホンダの人に聞きました。ホンダのバイクも、ありがたいことに売れていると。ただし、小さいバイクばかり売れているそうです。

きっと、移動用に買われているのですね。

はい。125cc以下が盛大に売れているそうです。


興味深い動きですね。
実は、中古車でもおもしろい動きがありまして、軽自動車の貨物車両、軽トラックや軽バンの問い合わせが増えているという現場(販売店)からの声が多く上がってきています。これは、去年からAmazonや佐川急便などが、配達を個人にも委託し、Uber Eatsのようなことをしているからではないかと思っています。実際、買いに来る人は法人ではなく個人で運送業をしているという人が多いそうです。

そんなスタイルで個人が荷物を運んで来ることがあるのですか。僕の家には、佐川急便もヤマト運輸もいつも同じ人が必ず来ますけど。

結構増えましたよ。僕の家には、よく来ます。インターホンを押して、最初に「Amazonです」と言うんです。驚くほど「普通の人」が来ます。

そのような人たちを使わなければいけないほど、小口貨物配送の仕事が増えている、つまり物理的な量が増えているということですね。

そうだと思います。去年あたりから、輸送などのキャパシティの問題が膨れ上がってきていたところに、新型コロナウイルスの問題がきたので、個人配送パートナーのようなものが増えたのでしょう。
飲食店などにも影響がありましたね。今までは、店で待っていて一生懸命サービスを提供すれば人が来てくれていたところが、来なくなりました。そうすると自分で配りに行かなければいけない。

Uber Eatsや、自社でピザを配送する、などですね。
ピザといえば、「ナポリの窯」というお店をご存じですか。そこの経営者が僕の後輩で、飲食業界はどこも低迷しているので、「おまえのところも大変だろう?」と聞いたら、「あんまり大きな声じゃ言えないんですけども、昨対70%アップです」と。70%ですよ!

すごいですね!

ちなみに、都心はダメで、東京の店舗は30%ぐらい落ちているそうです。しかし、地方の住宅地では売り上げがすごく良いと。青森、秋田などの東北では、昨年の120%アップだそうです。

プラス120%、つまり昨年の220%で2倍ということですか。

そう。倍以上になっているということです。地方にはまだUber Eatsがないので、総取りできると言っていました。自動車社会である地方都市でも、実は宅配の需要がすごくあるのです。
そうそう。話はいきなりぶっ飛びますが、ホンダがF1撤退というニュースがでましたね。僕はちょうど来週、ホンダの(レジェンドの)インタビューがあるんですが、開発者の方に、なぜF1をやめるのかという話を聞こうと思っています。


ホンダの社員からも、すでにいろいろな声が上がっていましたね。

僕も個人的に10人ぐらいの社員とやりとりしていますが、冗談抜きで会社を辞めると言っている人もいます。F1のためにホンダに入ったのに、これじゃ話にならん、辞める、と。待て待て、落ち着け。だって今よそへ行ったってF1なんかできないじゃないか、と。これからルノーへ行くのかと(笑)。

今年の4月の人事を見ていて、モータースポーツをかなり強化していく感じだったので、僕は違和感を感じました。こうなったのは新型コロナウイルスが影響したのではないか? と思ってしまいます。

新型コロナウイルスの影響のことは、記者会見で一言も言いませんでしたね。僕が恐ろしいと思ったのは、撤退とは言わなかったことです。終了という言い方をしたので、もうやらないと捉えました。今までは必ず、撤退という言い方をしていました。

我々でいうところの、休刊と廃刊と一緒ですね。

廃刊とイコールですが、休刊というと少し含みがあります。恐ろしいことになっていると思いました。まぁ、ホンダに限らずどこも大変ですよね。車もそうですし、飲食店もそうです。
このコロナ禍で、外で過度な会食や宴会をしなくていいことも分かってしまいました。行きたくない宴会って、たくさんありましたものね。僕は基本的に義理宴会には行かないようにしていて、全社の忘年会とか取引先の偉い人の就任記念とか、行かないと顔が立たないパーティにはサクッと行って、乾杯だけして帰ってきていました。しかし、もうそんなこともしなくてもよくなりました。私だけでなく、ホッとしている人は割と多いのではないかと思います。
それでも何も困らず、会社は普通に動いています。ではその義理宴会は何だったのかと。ごく一部のオッサンだけが喜んでいただけではないのかと。こんなことがイッキに明らかになってしまいました。
で、それを乱暴に車に結び付けると、要らない車と要る車が明確になるのではないかと。いま編集長がおっしゃった軽自動車の貨物車両は、本当に今の世の中に必要な訳ですよね。だから売れている。価格が維持できている。
するとスポーツカーはどうなるのか。普通に考えると不要不急の遊び車なんだけど、実際にアメリカではすごく売れている。ロードスターが30%もアップするって、本当にすごいことです。普通の車じゃそんなことはあり得ない。あの車は安価で安全でソコソコに速くて燃費も良い。何か新しく趣味の車を……という人にはピッタリですよね。翻って日本でもスポーツカーがよく売れているかというと、残念ながら今のところその兆候は見られない。日本ではロードスターの売り上げが伸びたという話は聞きませんし、スープラなんかとても残念なことになっている。

スポーツカーが要るか、要らないか、という話とは少しそれてしまうかもしれませんが、僕らが生活している都心とは少し状況が違う関西の子たちにも、少し話を聞いてみましょうか。今日はこの放談を近畿大学の学生が見学したいということでオンライン会議をつないでいます。若い彼らが車をどう思っているか、新型コロナウイルスの影響でなにか変わったか、聞いてみましょう。

良いですね。リモートで現役の大学生と話ができるんだ。今っぽくて良いですね(笑)。

(次回へ続く!)

コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。
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