’94 JAGUAR XJ220
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2012/04/24

当時のメーカーはロマンを売ることも忘れてなかった
発表時点では6L V12エンジンを搭載し、フルタイム4WDを採用するとアナウンス、開発が進められていたが、その後重量の問題などでその方針は変更される。最終的にはV6ターボ、後輪駆動に仕立て直され発売されたのだが、この仕様変更が開発の遅れに繋がり、発売が開始されたのは1992年頃。日本ではバブル崩壊後にあたってしまったため、販売は苦戦を強いられた。同世代のスーパーカーに比べ、内装などの高級志向が強いのが特徴。
徳大寺 今回はスーパーカー特集なんだろう?スーパーカーと聞くと60年代後半から70年代の印象が強いけど、80年代後半のバブル期にもいくつかあるよな。
松本 フェラーリF40やポルシェ959、それとホンダNSXなんかもそうですね。
徳大寺 だな。当時の自動車メーカーは採算だけでなく、ロマンを売ることも忘れていなかった。だからこそ昔のモデルを見ることは大切だし、なにより楽しいんだろうな。
松本 そうですよね。ということで今回はこちらにあります、その年代に登場したジャガーにしてみました。
徳大寺 少し前にジャガーのスーパーカーをやったよな。たしかXJR-15。
松本 今回はスタディモデルを1988年にバーミンガムショーでアナウンスして、未来的なデザインでかなり話題になった「XJ220」です。1994年モデルの量産型で、全くの新車の状態で販売されているそうです。
徳大寺 こんなのが日本にあったのか?
松本 驚きますよね。XJ220は生産モデルに様々な制約があったためショーモデルと全く同じとはいきませんでしたが、それでも今こうして見るとショーカーのただならぬ未来的な雰囲気は十分伝わってきますね。
徳大寺 そのプロトタイプには乗ったことがあるよ。バーミンガムショーで発表したあの実車。
松本 ホントですか? それって凄い話ですね! あれはショーカーですからデザインありきで走らせるには厳しいと思っていました。
徳大寺 XJ220は当初は生産に移す気はなかったんだ。しかし当時ジャガーのレーシングチームを率いていたトムさん(トム・ウォーキンショー)が生産する意義を考えながら様々な実験を行ってみて、ジャガーとしての存在理由があると判断したんだ。
松本 巨匠がドライブしたXJ220はル・マンでも実績があったレーシングV12気筒をさらにチューニングしたものですよね。しかし生産に至ってのXJ220はジャガーのシンボリックな12気筒ではなくV型6気筒のツインターボだった。ゴージャスなエキゾチックカー好きはテンションが下がったのではないでしょうか。
徳大寺 この車両がそうか。良いコンディションじゃないか。いろいろ昔を思い出すな。XJ220のこのデザインは現在ではジャガーになくてはならないデザイナーであるイアン・カラム氏が描いたそうなんだ。フロントの部分からリアにかけての柔らかい形は1960年代のレーシングジャガーのスタイルを描いていた空力の専門家マルコム・セイヤー氏のラインをオマージュしてデザインされたそうだよ。それでいて新しさも感じさせる。彼が現在もデザイナーとしてシンボリックな存在になっている、その理由がよく分かるよ。イギリス人らしい華やかな色だけどシックでとてもクラシックにまとめてる。XJ220に乗ったときに思ったんだけど、内装の趣味がいいんだよ。エクステリアの未来的部分とは対照的にクラシカルで、もちろんレザーは最上ランクのコノリーを使ってたな。
松本 XJ220はグループCカーをかなり意識したと思うんですよ。12気筒では重すぎることを、ジャガーをル・マンの覇者にしたTWR(トム・ウォーキンショーレーシング)も分かっていたんでしょうね。軽量コンパクト化することによって公道だけではなくスポーツカーレースでも最速を目指したんじゃないですかね。
徳大寺 彼(トム・ウォーキンショー)はレース好きで自分のレーシングカーを作りたかったんだ。だからその後にXJR15という純レーシングカーを作っちゃってジャガーの逆鱗に触れてしまった。勝つためのジャガーを彼は作りたかったが、ジャガー側はエレガントで速いという当時のコンセプトを守りたかったのだろう。
松本 ところでジャガーで初めてV型6気筒を搭載したのはこのXJ220なんですよ。
徳大寺 確かにそうだな。凄いのはこのエンジンのもとがGMのV型8気筒をアルミ製にして、さらに2気筒切ってしまったことなんだよ。イギリスというのはちょっとやそっとですべてをダメにしない。たとえ少量のスーパーカーであっても磨き上げて最高の水準に仕上げる。これがジョンブル魂だよ。そのあたりの精神は日本人には結構合うところもあるんじゃないかな。




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