「中古のアルファロメオ」とかけて「夏の甲子園のマウンド」と解く。その心は「どちらもモロモロ承知で乗ってます!」
カテゴリー: クルマ
タグ: アルファ ロメオ / アルファ145 / アルファ147 / アルファ155 / アルファ156 / アルファGTV / EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2016/08/13

「連投問題」に対する甲子園経験者の見解
「夏の甲子園」こと全国高校野球選手権大会がいよいよ佳境である。筆者は野球というスポーツ自体は愛好しているが、夏の甲子園に関しては否定的な感情を抱いていた。炎天下で10代の少年に毎日120球とか150球とかの連投をさせ、その結果当然ながら肩などを激しく壊す選手も出てくるあの大会について「正気の沙汰ではない」と感じていたのだ。
しかし今現在は、あの大会を是とする考えに宗旨替えしている。なぜならば「当事者の肉声」を聞く機会があったからだ。
「たしかにおっしゃるとおりな部分も大です。でもね、あの大会に出ているみんながみんな、プロや大学に進もうと思っているわけではないんです。『ここで俺は壊れるかもしれないが、それでもいい。ここで全力を出しきれたならば、仮に俺の野球人生が今日終わったとしても悔いはない』みたいな覚悟であの場に立ってるやつも多い。なので、一概に否定はできないと思うんですよね……」

そう教えてくれたのはMさん。「春のセンバツ」に投手として出場し、ベスト16まで勝ち進んだ。その後プロ球団からドラフト指名の打診もあったが、某大学へ進学して硬式野球部に入部。しかすぐに肩の激しい故障が発覚し、一時はマウンドからホームベースまでの18.44mすら投げられない状態になった……という人物だ。
まさに筆者が危惧していた事態の当事者そのものである。しかしその当事者が、「本人たちは覚悟のうえでやっているのだから、外野が簡単に否定すべきものではない」と言うのだ。
筆者は草野球をたしなむ者だが、本気の競技者から見れば「おままごと」でしかないだろう。それゆえ、あの場所に立つ高校生の心を本当の意味で理解することなどできない。しかしそれでも、Mさんの話を聞いた筆者は「それ、なんとなくわかります!」と絶叫した。
甲子園は、中古のアルファロメオに少しだけ似ているのだ。

「中古のアルファは大変だ」って? そんなの最初から承知のうえです!
最新世代では決してそんなこともないが、ちょっと前までのアルファロメオはお世辞にも「頑丈」とは言いかねる車だった。筆者が過去所有していた99年式アルファロメオ GTVは幸いほぼ故障ゼロだったが、それはレアケースだろう。少なめに見積もっても新車のトヨタ車の2倍ぐらいは壊れやすいのが、ひと昔前のアルファロメオだ。
それゆえ外野の人々は、あくまで親切心から「壊れるからやめといた方がいいんじゃない?」などと忠告してくれる。まるで筆者が夏の甲子園に対して「正気の沙汰じゃない!」「即刻廃止を!」と思っていたように。
……しかし当事者(中古アルファを買おうと思ってる人間)からすると、「そんなのとっくに承知で、それでも欲しいって言ってんだから、ほっといてくれよ!」としか言いようがないのだ。
たしかに近所のディーラーで国産新車を買う行為に比べれば、中古のアルファロメオというのはなかなかリスキーだろう。しかし、だからといって(筆者に言わせれば)凡庸なエンジンと凡庸なデザインをまとった、何らかの「安心できる(でもつまらない)車」を代わりに買えというのか? ……冗談じゃない。そんなモノに乗るぐらいならわたしは歩く。
多少の故障が発生する可能性は大だが(もちろん筆者のGTVのように全然壊れない可能性だってある)、そんなものは、ひと昔前のアルファロメオ製エンジンとデザインだけがもたらしてくれる陶酔と感動とのトレードオフで考えれば、ハッキリ言って屁でもない。アルファロメオに乗ることで経験する苦労ではなく、それに乗らないことがもたらす人生の損失こそを気にした方がいい。

「ひと昔前のアルファ」を今から買うならこの5モデル
さて、以上のとおりまるで甲子園のマウンドのような(?)魔力を備えているひと昔前のアルファロメオを今から買う場合、どんな車種を選ぶべきかといえば、基本的には「気に入ったモデルであれば何でもいい」というのが正解だ。しかしおせっかいを承知でアドバイスさせていただくなら、以下の5モデルが好適なのではないかと思う筆者である。
■アルファロメオ 155(92年9月~98年12月)
■アルファロメオ 145(96年9月~01年9月)
■アルファロメオ 156(98年5月~06年2月)
■アルファロメオ 147(01年10月~11年3月)
■アルファロメオ GTV(96年1月~06年4月)
上記モデル群のなかからMT車に絞り込み(そもそもMTしか存在しないモデルもあるが)、なおかつ内外装が極力キレイで、なるたけフルノーマルで、整備記録が極力充実している物件を、できればイタリア車専門店で購入するのが勝利への道だ。痛快すぎるほど痛快なエンジンとセクシーな造形により、あなたは陶酔の極致へと導かれることになる。そういった良好物件でも乗っているうちにそれなりの故障(というか消耗部品の劣化)はほぼ必ず生じるが、覚悟を決めている人間にとってはどうということもない。
これら以前のFR世代も当然素晴らしいわけだが、今やかなり希少であるため「マニアの選択」となるだろう。また04年6月~12年4月まで販売された2ドアクーペ「アルファロメオ GT」もいいが、オススメとなるV6エンジン搭載グレードの流通量がきわめて少ないのが微妙なところだ。06年2月から11年途中までの159世代(ブレラ等を含む)はGM製のシリンダーブロックとシャシーがややダルな印象であるため、筆者個人のイチ推しではない。が、あの世代が好きだという人もたくさんおり、もちろん悪い車ではないので、もしもあなたが欲しいのであれば全然アリだ。
いずれにせよ、ひと昔前のアルファロメオには「ある程度のものを犠牲にしてでも手に入れるだけの価値」が猛烈にある。本格的な野球競技の奥深い部分は正直わからないが、こと中古車については自信をもって断言できる筆者である。もちろん万人にオススメする類の中古車ではないが、ある種の人には絶対のオススメゆえ、ぜひ、騙されたと思ってマウンドならぬコックピットへGOしていただきたいのである。





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