’92 PORSCHE 911RS RACING【EDGE/名車への道】
カテゴリー: クルマ
タグ: ポルシェ / クーペ / 男性向け / MT / RR / 911 / EDGEが効いている / VINTAGE EDGE / 名車への道
2017/05/22

クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにもこれから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを探ってみたい
希少なポルシェは歴史を遡るのも楽しくなるね
EDGE:さて、松本さん。今回はまたまた特集に合わせてポルシェにしようと思ってるんですけど、これまで取り上げていない車でいうと993、964あたりなんですよね。
松本:その2台はこの企画にピッタリだね。個人的には993タルガなんかイイと思うんだよ。完全なクーペスタイルで、一見するとクーペかタルガかわからないけど、あれがまた良かった。964もRSみたいな希少なグレードがあるといいんだけどね。
EDGE:すっかり程度の良い空冷911、特にRSやターボは「お宝」状態になってますからね。
松本:最近、930ボディと決別した964ってイイと思うんだよね。新たなポルシェを決めた転換期のモデルだし。なんたって964のサスペンションは従来のトーションバータイプからコイルスプリングに変更されてたんだ。それに伴いフロントとリアのフロアーパンも変更されてたり。それってフレームが全く違うってことだからね。
EDGE:それってかなり大がかりな進化ですよね?
松本:そうだね。すでに70年代からレーシングカーの911で採用されていたし、実績は十分だったんだろうね。しかも964から4WDが市販車として採用されている。リアを動力の中心に考えた911だったけど、GTとして課題であったフロントのスタビリティも解決しようと思ったんだろうね。
EDGE:ちなみに、伝えてませんでしたが、今日見に行くのはご所望の964、しかもレアグレードの964RSレーシング。しかも3000kmしか走っていない個体です。
松本:本当? それを見せてもらえるならすごいよ。
EDGE:もちろん、見せてもらえます。あ、こちらですね。
松本:これはまた状態も素晴らしい個体だね。滅多にお目にかかれるモデルじゃないよ。
EDGE:ところでRSっていうのは何となく分かりますけど、どのようなモデルをいうんですか?
松本:RSというのは「レン・シュポルト」、すなわちレーシングスポーツの意味だね。911で有名なのは73年のカレラRS。当時のレースに勝つために911Sのスペシャル仕様として作られたんだ。これがRSの始まりだよ。承認を得るために初めは500台作ったんだけどね。そのあと人気が出て、およそ1000台プラスして生産されたんだ。その中でも73RSは1000台ぐらいはレース用に軽量化されたモデルだといわれているんだよ。
EDGE:なるほど。しかしただ者でないオーラを放ってますね。
松本:さすがRSだけあって車高も低いね。964のRSは「カレラカップ」というレースで使われていたカレラ2のスペックを、ちゃんとした公認車両にするために作られたモデルなんだ。2400台弱生産されているんだけどね。そしてこのRSレーシングはそのRSをベースにしてバイザッハ工場で専用に作られたモデルで、生産されたのはわずか17台ほどといわれているそうだよ。
EDGE:内装とか、これはもうレースカーですね。
松本:964カレラRSはロールケージなど付いていなくて、簡素だけど日常に差し支えないレベルに遮音材などが装着されていたんだよ。でも今目の前にあるRSレーシングはストリップアウトしてロールケージを組んでいるし、ガラスだってプレキシガラスに匹敵するぐらい薄い強化ガラスが装着されているでしょう。内張りもほとんど剥がされてて、ボディが剥き出しになってる。これは並じゃないよ。964のファクトリーレーシングカーは溶接ですべて取り付けられているんだ。「MATTER」社製だと思うな。ポルシェはここで作らせるんだ。このロールケージは考え抜いた位置に溶接で装着されているんだよ。
EDGE:世界で20台以下って、すごい希少性ですよね。しかもワンオーナー、フルオリジナルだそうですよ。
松本:すごいね。シートも純正SP-Gレカロだけど背中のポルシェロゴの刺繍までキレイな状態だし。
EDGE:この企画をやっていると、普通ではお目にかかれない車を間近で見られて……幸せですね(笑)。
松本:そうだね。外から見ても分からないけど、サスペンションも964RSや964カップと違うらしいし、エンジンもチューニングされて290ps以上出ているらしいよ。
EDGE:こうなってくると調べるのも一苦労ですね。
松本:機会があればじっくり調べてみたいね。レーシングポルシェは手作りだから、資料を探すのもひと苦労だけど、その分「歴史」を遡る楽しみもあるんだよ。




【関連リンク】
※カーセンサーEDGE 2016年12月号(2016年10月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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