伝説のラリースト・新井敏弘のストイックさが見える、愛車・ポルシェ 911 GT3とのカーライフ
2023/01/15

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
世界のトシ・アライが所有するスバル車以外の車
新井さんはプロダクションカー世界ラリー選手権 (現在のWRC2に相当)で2度のシリーズチャンピオンを獲得するなど、90年代から第一線で活躍し続けるラリードライバーのレジェンドだ。2004年からは「アライモータースポーツ」を設立し、ラリーマシンの製作や部品の開発、チーム運営などを手がける経営者としての顔も持つ。
群馬県伊勢崎市にあるアライモータースポーツのファクトリーにはWRXやBRZといったスバル車はもちろん、フォードやポルシェのヒストリックラリーカーなども整備を受けており、じつに壮観な眺めだ。

新井さんといえばもちろんスバルのイメージが強いが、それ以外にも様々なメーカーの車を所有している。その中でも特に気に入っているのがこの997型のポルシェ911 GT3。3.8LのNAエンジンを搭載する後期型。運転席後ろにロールケージが標準装備されるクラブスポーツパッケージを奢ったスパルタンな1台だ。
「基本的に速くてストレスを感じない車が好きなんです。ただ、フェラーリやランボルギーニみたいに派手で目立つのは苦手なんですよ。ポルシェってGT3みたいなセミレーシングモデルであっても遠目には普通の911とそこまでルックスが変わらない。もちろんめっぽう速くてスポーティなんですけど、それほど気負わずに運転できるところが良いですね」
何も考えずウンウンとうなずきながら話を聞いていたが、ふと冷静になってみると2WDで435psを炸裂させるGT3をつかまえて「気負わずに運転できる」とは、さすが新井さんである。筆者のような素人は絶対に口にできない超絶なレビューだ。

ちなみにポルシェ 911は、これまで996型を2台、997型を2台を乗り継いでいるとのこと。スポーツカーに決して向いているとはいえないリアエンジン・リアドライブ方式を採用しながら、絶妙なジオメトリーで優れた回頭性を実現している911は、エンジニアリング的な視点でも非常に興味深い存在なんだとか。ラリーカーをセットアップするうえで参考になる部分も多いという。
「プライベートカーはほとんどチューニングしないです。というのもラリーカーは公道を速く走ることに特化した究極の改造市販車みたいなものですからね。市販車をチューニングしていくと、最終的にはラリーカーになってしまう。仕事とプライベートで走らせるマシンに差異がなくなると面白くないので、あえてやらないようにしています」
GT3はタイヤとホイールが交換されているが、これはどちらかというとパフォーマンスアップというよりドレスアップの一環だという。

海外でもカーセンサーをチェックする無類の車好き
新井さんはプロドライバーであると同時に無類の車好きでもある。スバルのワークスドライバーとしてイギリスを拠点に活動をしていた時期も日本からカーセンサーを送ってもらい、中古車の相場を絶えずチェックしていたほど。
自宅ガレージにはリフトが設えてあり、GT3のオイル交換は自身で行っているという。ドライサンプのため、エンジンオイルを抜くためのドレンが複数あって少々面倒と新井さん。
また、GT3以外にもレンジローバーやランクル60の他。スバル XVの「グレーカーキ」にペイントしたMR-Sなど、新旧・カテゴリーを問わず様々な車を所有する。
「レンジローバーは長距離移動用で、MR-Sは運転を楽しむ用ですね。MR-Sは僕の所有車の中では珍しくチューンしてあるんですよ。足回りに手を入れてロールバーを組んであるんですけど、とにかくボディが軽くて小さいですからね。雨の日に乗るとまるでカートみたいにシビアな操縦性になるので、すごく面白い。雨が降る夜はこいつを引っ張り出して近所の峠を走るのが楽しみですね」

ラリーは運転技術と共に経験値が大きくものをいう競技であり、こうした愛車との時間も何がしか競技へフィードバックできると新井さん。とくに夜のドライブはヘッドライトの昼間に比べ視覚情報量が少ないため、動体視力を向上させるトレーニングになるという。
「じつは一昨日から八ヶ岳に登っていたんです。そこからさらに赤岳、硫黄岳を登って計25㎞ぐらい歩きましたね。しかも途中で気温が氷点下2度まで下がり、雪まで降ってきて……。ここまでくると肉体を鍛えるというより、精神も含めた一種の『修行』です(笑)」
まさに日々是精進のストイックさ。“世界のトシ・アライ”はまだまだ進化している。


新井敏弘さんのマイカーレビュー
ポルシェ 911 GT3(997型)
●購入金額/約1380万円(中古)
●年間走行距離/約2,000km
●マイカーの好きなところ/エンジントルクのすごさ。リアエンジンの特殊な乗り味。ドライビング
●マイカーの愛すべきダメなところ/荷物が全く乗らない
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/週末の早朝 ワインディングを愛車と語りながら走る方(リヤタイヤのグリップを感じながらアクセルをやさしく踏む感覚)

ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌や自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。乗り物系の広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30とカスタムした日産ラルゴの他、トライアンフ スクランブラー(バイク)や、たくさんの自転車。
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