メルセデス・ベンツ 300SEL 6.3
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2011/09/27

スポーツカー並の加速力を誇る名サルーンだな
65年から67年の間製造された300SELのボディに「M100」と呼ばれるV8 6.3Lエンジンを搭載。これは当時のメルセデス・ベンツが世界一を目指して作り上げたグロッサー・メルセデス600に積まれていたもので、それを比較的スタンダードなサイズであった300SELに積み、当時のスポーツカー以上の最高速度220km/h、0→100km加速6.5秒という圧倒的な数値を誇った。0→100km加速で言えば当時の911、フェラーリディーノよりも上だったという。
徳大寺 今回はメルセデス特集だね。車種は50年代の300SLあたりから最新モデルまで登場するんだろ?
松本 はい。それで今回の車ですが、ヴィンテージエッジでは何回かメルセデスの弩級クラスを取り上げています。 例えば当時、道玄坂を颯爽と走っていったという300SLガルウィング。
徳大寺 あれは忘れられないな~。恐らく裕次郎さん(石原裕次郎)の車だったと思うんだ。それに300SLと同形のエンジンを使った300SCも取り上げたことがあったな。メルセデスは戦後すぐは実質上3Lを超えるモデルは造れなかったんだ。敗戦国としての経済的な理由らしいが…。
松本 メルセデスは戦前、大排気量とスーパーチャージャーを搭載した770Kや540Kなどのスーパーツアラーを造っていたのですから、規制緩和になるまでウズウズしていたことでしょう。今回見に行く“メルセデス300SEL6.3”の心臓部に宿る6.3LのV型8気筒は、戦前の弩級モデルの再来と言われたメルセデス600プルマンに搭載された、メルセデスの量産ユニットとしてはこれ以上ないエンジンなんですね。
徳大寺 そうだろうな。戦前のメルセデスの高級車には直列8気筒を搭載することが習わしだった。しかし戦後の経済政策で3L以上は造れなかったから6気筒に甘んじていたんだ。それでも300SLのようにシャシーとエンジンに技術の粋を集めて、当時の水準からかけ離れたスポーツカーを造ってしまうんだよな。その技術陣のボスが“ルドルフ・ウーレンハウト”だったんだ。
松本 ウーレンハウトといえば戦前戦後のグランプリカーの主任設計者ですよね。戦後のグランプリカーにスポーティなボディを架装して普段の足に使っていたという伝説の天才エンジニアの。今回見に行くメルセデス300SEL6.3も、ウーレンハウト自身が重役時代に初めから考えていて、量産前に密かに乗っていたという話ですよね。
徳大寺 そうだよ。ウーレンハウトは弱冠30歳にしてグランプリカーの最高責任者だからね。しかも技術者としての才能とドライバーとしての才能も兼ね備えていたので、不具合なんかは当時のグランプリレーサー以上に見つけては対策を練っていたらしい。性格は温厚で誰からも好かれた人物で、ただの頭でっかちの設計者とは全く違っていたんだ。今でもウーレンハウトのようなエンジニアがいればメルセデスも違っていただろうな…。
松本 もちろん自動車メーカーは英知が結集した集団ですからウーレンハウト級のエンジニアも存在するかもしれませんが、現在の社会構造では潰されてしまうのかも知れません。
徳大寺 そうだろうな。おっ!一回この店来たことあるよな。在るぞ、溜色のメルセデスが。良い色だなぁ。内装は黒じゃないといいけどな。あとシートはメルセデス特有のベロアなら最高だ。MBテックスという合成皮革も丈夫でいいけど、このクラスにはベロアだろう。
松本 きれいなマルーンですね。内装はグレーに茶色を軽く混ぜ合わせたような品のいい色ですね。巨匠、ベロアですよ!
徳大寺 やっぱりそうか。これじゃないとな。僕は以前300SEL6.3と450SEL6.9を乗り継いだんだ。そのときもやっぱりベロアだった。ベロアはホールド性も良好だし座り心地もイイんだ。
松本 2台とも乗ったんですね。さすが巨匠(笑) そこが巨匠たる所以だと思います。普通は同じようなモデルは乗り継がないですけどね。300SEL6.3は1963年に弩級リムジーンの600用のユニットとして造られSOHCV型90度8気筒、6.332Lから250馬力と51Kg-mのトルクを発生しました。メルセデス初のV型ユニットであることも特筆すべき点ですね。300SEL6.3は600よりも車重が700キロ以上軽く0-100m/hは6.5秒。これはスポーツカーの領域です。
徳大寺 とにかく、タイヤが減って参ったよ。ホイルスピーンもそうだし。あまりのトルクに600では車重でしっかりと貯めるようにしてから加速するんだけど、これが凄い。後ろから押されるから加速するときにフロントの剛性が低下するんだ。ストップ&ゴーが多い日本では特に現れるだろう。
松本 ものすごい性能ですね、それは。
徳大寺 でもこういうモデルが造り出せたメルセデスは本当の意味で車好きを夢中にさせたメーカーだったんじゃないか。その恩恵があるから現在でもブランドイメージが高いと思うんだ。ウーレンハウトのような一人の天才エンジニアを見つけ出せたメルセデスの首脳陣もまた優秀だったんだろう。これから先のメルセデスにも才能を開花させる首脳陣が必要だと思うな。




【関連リンク】
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
【試乗】新型 アストンマーティン ヴァンキッシュ|V12を積んだ新たなFRフラッグシップは、リアルスポーツからGTまで劇的に変化する乗り味を得た!
6月は北イタリアでスポーツカー三昧! “モーターヴァレー”のスーパーカーブランドが一堂に会する一大イベントとミュージアムへの誘い【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
“SUV疲れ”した人に贈る「代わりに、実用性も備えるスタイリッシュフォルムが新鮮なコレ、どうですか?」5選
~その使命は感情を揺さぶる存在であり続けること~ スーパーカー論【カーセンサーEDGE 2025年7月号】
【試乗】新型 テスラ モデルY|もはや走りにも文句はなくなり全方位進化でBEV最強の1台へ!
【試乗】新型 アウディ A5|堂々たるサイズの新ネーミング基幹車種、ベーシックモデルも必要十分に実用的!
【試乗】新型 ヒョンデ インスター|軽自動車の十八番を奪うBEV! 愛らしいスタイルでも快適性はクラス以上!
その存在意義を考えさせられた、古都を舞台としたコンクールデレガンス
【試乗】新型 BMWアルピナ B4 GT|Dセグメントセダン最上! 良質なライドフィールを濃密に楽しめる“実用スーパーカー”
自由と絶景とハプニング! ルノー アルカナで行く神様が集まる「神津島」への旅