スズキ アルトワークス(3代目)の中古車に試乗!シングルカムの5ドアATだが意外とよく走る
2019/12/28

自分のイメージと違う5ドアのアルトワークス
「来週、箱根でロケがあるじゃないですか? そのついでに新しく買った僕の車に乗ってほしいんですよ」と、編集部のてんちょ~こと大平氏から連絡があった。
てんちょ~がどんな車を購入したのか全く覚えてなく、当日彼が乗って来た車を見て驚いた。それは年代物の“スズキ アルトワークス”だった。

よくターンパイクを上って来たねー。と思わず冗談まじりに話をした。てんちょ~が購入したアルトワークスは3代目で、しかも、エンジンはシングルカムターボのF6Aで変速機は4ATだという。
3ドアがメインのモデルにも関わらず。5ドアなんてワークスの方向性を真逆にしたような印象もある。「そんなモデルがあったんだ……」と思わず口ずさんでしまった。
と、言うのも私のイメージするアルトワークスは、ツインカムターボのK6Aエンジンに駆動方式はフルタイム4WD、そして5速MTという組み合わせのスポーティモデルだった。
だが、愛妻家のてんちょ~は奥さんも乗れるATで、利便性の高い5ドアをあえて選んだそうだ。
しかし、20年前軽自動車である。走行距離も実に10万kmに達する。乗り味を期待することは正直難しい。
外観を見てみると、大きなへこみはないがピカピカと言うほどでもない。程よくやれた艶があった。
タイヤも古く、贅沢を言うなら交換してもよいかなぁといったレベルだ。


ドアの開閉がとても軽い。幾度となく開け閉めされてきた証しだ。風が吹くと凄い勢いで開いてしまうドアに手を触れながら乗り込む。
純正のシートは、今流行りのヘッドレスト一体型だ。ブルーとブラックのツートーンでスポーティさを演出している。
ステアリングホイールは擦れて艶が出ている。そうとう年季が入った代物だ。


古い割に各部が意外としっかりしていた良い車
いよいよ試乗に入る。キーを回すと軽やかに回るスターターモーターとともにエンジンが始動した。3気筒であるが、振動はそれほど気にならない。
セクターレバーをDレンジに入れると負荷がかかり、アイドリングが落ち込んで振動が発生する。これはマウント類と出力の低下が考えられる。
恐る恐るゆっくりスタートする。ブレーキを試しに踏んでみるが、問題はなさそうだ。ただ、ブレーキホース類が硬くなっている関係でブレーキフィールに柔らかさはない。
電動式のステアリングも全く問題ない。
タイヤは思ったよりも硬化しておらず、ゴツゴツしないので乗り心地がよい。
そればかりか、ちょっとしたFFスポーツのように山間部のカーブも気持ちよくクリアできる。20年がたった10万キロの個体の割には不安定な動きはしない。ただ、ダンパーが少し抜けかかっているので交換すればもっと良くなるだろう。
ATの変速もスムーズで嫌なシフトショックもない。しっかりとできていて正直驚いた。

そしてエンジンは3気筒ターボで、出力はトップモデルより少し劣る60馬力。トルクは8.5kg・mのカタログ値である。下りは性能の差が出にくく低出力でも気にならないが、これから出力差をはっきりと感じることのできる上りに挑む。
目いっぱい引っぱって加速してみる。ターボラグによる、もたつきもほとんどない。ATとの相性も良く意外と扱いやすかった。
エンジン音もしっかりとしていて、スズキのエンジンって良い音だと感じられた。

軽量のボディも相まって、ターンパイクの上りでもまわりの車の迷惑じゃない速度で走らせられる。あなどっていただけに驚いた部分である。
ツインカムでも4WDでも5MTでもないアルトワークスらしからぬワークスは、意外と良い車だった。やはりイメージや先入観だけでなく「乗らないとわからない」という部分が車の良さである。
アルトワークスの主役は、序盤で述べたイメージのスポーティなモデルだが、扱いやすく乗りやすいこんなモデルもあったのだと、スズキのストライクゾーンの広さを改めて感じることができた。



自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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