【図説で愛でる劇中車 第15回】映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズに登場する車たち
2020/07/12

国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!
第15回は、2005年から2012年にかけて3作が製作された映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズから、登場人物に負けず劣らずの存在感を見せていた、劇中に登場の「昭和の国産車」を取り上げます。
1964年東京オリンピックより前の「懐かしい東京」を描いた映画
西岸良平氏の漫画『三丁目の夕日』を原作とした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」は、昭和33(1958)年の東京を舞台にした映画で、2005年に公開されました。
舞台は、港区愛宕界隈を想定した架空の街・夕日町3丁目。人々の暮らしや心温まる物語が描かれ、当時を知っている世代だけでなく、生まれていない世代にも、懐かしさや郷愁を感じさせてくれます。
当時の商店街や雰囲気を再現したセット、そして模型と組み合わせたVFXやCGによって生み出された当時の街並み、建設中の東京タワーなども話題になりました。
2007年公開の続編「ALWAYS 続・三丁目の夕日」、シリーズ完結編となった2012年の第3作「ALWAYS 三丁目の夕日 ‘64」ともに、3作すべてが大ヒットを記録。
当時の空気感をよく表しているこのシリーズでは、時代を映し出す鏡である車が、重要なアイテムとして「出演」しており、車好きにも見応えがあります。
昭和30年代を代表するオート三輪ミゼットが活躍

昭和30年代にはもう車は一般的に普及していましたが、メインは戦後の経済復興を支えたバンやトラックなどの「はたらく車」でした。
中でも「オート三輪」と呼ばれ親しまれた三輪トラックは、そのシンプルな構造から戦後すぐに生産が始まりました。
マツダやダイハツ、くろがね(日本内燃機)、オリエント(三井精機工業)、ヂャイアント(愛知機械工業)など様々なメーカーが三輪トラックの生産を行い、昭和30年代初期にはピークを迎えました。
オート三輪を代表する軽の三輪トラック・ダイハツ ミゼットは、昭和32(1957)年から発売を開始。
当初は一つ目ヘッドライトでバーハンドル、ドアもない質素な設計でしたが、昭和34(1959)年から販売されたMP2では、一気に車らしい姿に変身しています。
劇中では鈴木オートの社用車として、オープニングからエンディングまで印象的な活躍を見せてくれます。
なお、映画の設定年とMP2(映画ではその改良型MP3を使用)の登場年が合わないのですが、映画ではリアリティよりも「観客が求める懐かしさ」を重視したとのことで、その流れを受けての採用だったのではないでしょうか。
昭和33年当時から、すでにクラウンは国産最上級車

昭和33(1958)年当時、国産乗用車の種類は少なく、ビッグネームの「カローラ」「サニー」「ブルーバード」ですら登場していませんでした。
一方、昭和30(1955)年登場の初代クラウンは、すでに国産最上級車として君臨していました。
劇中でも、商店街の子供たちがクラウンを見て物珍しげに集まってくる描写があり、当時のクラウンが特別な存在だったことを教えてくれます。
映画に出てくるクラウンは、昭和30(1955)年12月から発売を開始した上級版のクラウン・デラックス(RSD)。1960年のマイナーチェンジ前のモデルですので、時代考証的にもバッチリです。
初代クラウンは日本の自動車技術の粋を集めた乗用車でしたが、当時の国内メーカーはまだ海外の技術水準に至っていませんでした。
「いすゞはルーツ・グループ(英)、日野はルノー(仏)」などのように、各メーカーは海外メーカーの車を日本でノックダウン生産して、技術の習得に努めました。
劇中でその姿を見ることができるオースチン A50ケンブリッジも、日産とオースチンの提携で生まれたノックダウン生産車でした。
オースチンから得た技術は、のちの初代ブルーバードやセドリックで開花することになります。
「ロクちゃん」の人生に影響したパブリカと、幻の軽トラックくろがねベビー

「ALWAYS 三丁目の夕日」の登場人物は基本的に同じで、映画の設定年のとおりに年齢を重ねていきます。
第3作の舞台は東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年。オリンピックを控え変貌する街の姿や、同年開業の東海道新幹線も映像化されています。
シリーズを通して登場するロクちゃんの人生に大きなターニングポイントが訪れるのですが、その相手となる若い医師・菊池がトヨタ パブリカに乗って現れます。
パブリカは昭和36(1961)年に発売された小型大衆車ですが、当時大学の初任給が1.2万円だった時代に38.9万円もしたため、庶民には高嶺の花でした。
菊池は若いですがお金はある人なので、パブリカのデラックス・モデル乗っているあたりがリアルです。
また、第3作では鈴木オートのガレージも大きくなって、いろいろな車が入庫しています。今回は、その中からくろがね ベビーを選んでみました。
軽トラックはオート三輪から四輪車に移行していきましたが、くろがね ベビーはその過渡期の昭和34(1959)年に生まれたモデル。
大手が次々と発表する軽四輪トラックにはかなわず、昭和37(1962)年に生産終了。幻の軽トラックとなりました。
劇中には懐かしい昭和30年代の車がいっぱい!
あの頃の車は数年単位で技術が大きく進歩し、車種もどんどん増えていきました。
鈴木オートに入庫してくる車の多くは瞬間的にしか写りませんが、車好きにはこれらの名前を当てるのもまた一興です。
「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズでは、車はほぼ実車を使用しており、くろがね ベビーも本物が撮影に持ち込まれたそうです。
映画の続編も計画されているという話もあります。その際にはまた、当時を象徴する車たちの活躍が見られることでしょう。期待して待ちたいと思います。

イラストレーター/ライター
遠藤イヅル
1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はサーブ900、VWサンタナほか実用的な車ばかり。
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