現車を1回も見ないで中古カングーを買ってみた
2015/04/15
各種のスペックを見れば中古車の状態はだいたい想像がつく?
現車を1回も見ないまま、かなり遠方の販売店から通販的に中古車を買った。08年式の旧型ルノー カングー(5MT)である。自称芸術家ならぬ「自称・輸入中古車400勝」な筆者であっても、当然ながら中古車というのは現車のコンディションを自身の目で確認したうえで買うべきだとは思っている。そしてこれまた当然だが、カーセンサー編集部もそれと同じことを強く推奨している。
しかし今回筆者は、まるで現車を見ないまま契約した。なぜかといえば「めんどくさかったから」だ。
「めんどくさかったから」というのもかなり語弊のある表現ではある。しかし、「わざわざ遠方の販売店まで飛行機で出向いてコンディションを確認しないでも、そのカングーの状態が悪くないことはほぼわかりきっている。ほぼわかりきっていることを、時間とお金をかけてわざわざ行うのはめんどくさい」と思ったのだ。

筆者が「悪くないことはほぼわかりきっている」と考えた根拠は下記のとおりだ。
1. 歴史のある大手販売店が販売している物件である(具体的には創業48年。地場で多数の輸入車正規ディーラーを展開している企業の1店舗)
2. 走行距離短めのワンオーナー車である(カーセンサーnetによれば08年式で走行4.1万km)
3. 正規ディーラーでの整備記録簿が豊富である
4. カーセンサーnetに掲載された多数の写真を見る限りでは、内外装の劣化はかなり少なそうと判断できた
5. 問い合わせフォームおよびメール、電話でやりとりした先方セールス氏が、普通に優秀でマジメな社会人であると、やりとりの内容から推測できた
これら5つの条件が重なっているだけで、輸入中古車400勝としては経験上「おそらくは悪くない感じの中古車だろう」と推測できるわけだが、今回はそれに加えて下記2つの鉄板な条件もあった。
6. 同年式・同型の中古車の平均価格を大きく上回る価格だった
7. 値引きを断られた

筆者が購入した08年式カングーの車両本体価格は138万円。購入時の先代カングー平均価格は約81.7万円で、ボリュームゾーンは60万円台から90万円台といったところ。で、筆者が目を付けた個体の価格は138万円ということで、平均価格よりも50万円以上高い。もちろん「高い中古車=必ず上モノ」というわけではなく、「単なるボッタクリ」という可能性もある。だが普通に考えて「地方都市で50年近く商いを続け、なおかつ正規ディーラーも多数展開している企業が、歌舞伎町のぼったくりバーみたいなことはしないだろう」とする方が、理には適っている。
しかし「さすがにちょいと高いかな……」と感じた筆者は若干の値引きを販売店に打診したのだが、先方セールス氏はソフトに、しかし毅然と、値引きを拒否した。そこが、筆者としては逆に高評価ポイントとなった。「値引きしてでも売り急ぎたい物件」ではなく、「価値をわかってくれるお客が現れれば、ぜひお売りしたい。しかしそうでないならば、売らない」という販売店の“自信”を見て取ったのだ。
以上の判断をもとに、そして様々な契約条件や追加で送信された写真などを仔細に眺め、担当セールス氏と電話会談を重ねたうえで、契約を締結した。
輸入中古車400勝として中古車の良し悪しを見分ける能力にはそれなりの自信を持っている筆者だが、中古車に「絶対」はない。それゆえ「今回は久しぶりに大ハズレでした!」となる可能性もなくはない。……果たして結果はどうであったか?
――大勝利だった。
東京から約800km離れた地方都市からフェリー等により輸送されてきた08年式ルノー カングーは、カーセンサーnetの写真どおり、いや、それ以上の輝きを放つ美品であった。担当セールス氏が電話で言っていたとおり車内の異臭もなく、カングーにありがちな開閉部(ドアやリアゲート)のきしみもない。トランスミッションも快調。足回りもたぶん大丈夫。
さっそく千葉県南房総市までの釣行や、静岡県御殿場市での取材活動などに使用してみたが、実際走ってみても不具合らしい不具合はまったく見当たらない。燃費も旧型カングーとしてはまずまず良好ゆえ(約800km走行し、2回給油した時点での平均値が13.1km/L)、エンジンの調子も悪くないのだろう。
しかし、中古車というのは「一見調子が良くても、見えない部分や、素人にはわかりかねる部分に病巣を抱えている」こともなくはない。それを危惧した筆者は、単なる自己診断だけでなく、神奈川県横浜市のイタリア・フランス車専門工場「モストロコルサ」に24ヵ月点検相当の詳細な点検を依頼した。
その診断結果は、「年式なりの微々たるオイルにじみ等はあるが、全体としてはかなりのグッドコンディション。7年落ちの中古車としては極上とすら言える。さしあたって急きょ直さなければいけない箇所はひとつもない」というものだった。専門家のお墨付きもいただいたことで、今回の「見ないで購入」は大勝利に終わったと結論づけたい。
しかし、長々と書いてきた本稿で筆者が伝えたいことは「どうです? ボクの中古車を見る目って凄いでしょ!」という自慢ではなく、ましてや「中古車は現車を見ないまま買っても大丈夫ですよ」ということでもない。冒頭で述べたとおり、やはり中古車は現車の状態ならびに記録簿等を確認したうえで買うのが鉄則である。今回の筆者の購買活動は、それゆえあまりホメられたものではない。もしもあなたがどうしても通販的に中古車を買いたいのであれば、それがもたらす結果は「自己責任」ということでお願いしたい。
そうではなく、言いたいのは「中古の輸入車って、ちゃんとしたお店で、それなりのお金を払って買えば、割とフツーに乗れちゃうものなんですよ」ということだ。
世の中には中古車というものを必要以上に忌み嫌い、特に輸入車の中古車販売店については「信用ならないんでしょ?」という、ふた昔前のイメージを引きずっている人もいる。しかし品質が標準化し、ネットを通じたクチコミなども発達した現在では、そんなこともない場合が非常に多いのだ。「輸入中古車=絶対安心!」とは言わないが、「輸入中古車=ちゃんと選びさえすればけっこう安心!」とは、声を大にして言いたいのである。なにせ今回の筆者ぐらい、ある意味テキトーに選んでも大丈夫だったりするのだから……!
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