テリー伊藤が憧れの車を前にしてつぶやく。「ロータス エランは田中邦衛のような存在だ」
2021/06/28

ライトウェイト2シーター史上最大の存在感をもつモデル
~語り:テリー伊藤~
おそらく、今の若い人たちにロータス エランと言っても「何それ?」という感じでしょうね。エッジ読者だってエランを知ってこそすれ、この車が輝いていた時代をリアルに体験した人はほとんどいないでしょう。

日本のモータースポーツ創成期に、サーキットを疾走するエランを見た僕ら世代にとってはまさに憧れであり、特別な車でした。
イギリス車好きというと、なんとなくジャガーへの憧れがきっかけのように感じる人も多いでしょう。でも、僕らはロータスやモーガンに憧れてイギリス車を好きになっていったのです。

でも、「いつか乗りたい」と考える人はほとんどいなかったと思います。なぜなら、まだ「いつかは軽自動車」という時代でしたから。
エランはあまりにも高価で、大げさに言えばジェット機や超高級クルーザーを手に入れるのと同じくらいの感覚です。
当時の車雑誌には、巻末の方に中古車の怪しい広告が掲載されていて、僕はそれを見るのが楽しみでした。エランは、トヨタ 2000GTより高い値段がついていたのを覚えています。

そんな車だったからこそ、実車が目の前にあるということだけで興奮します。
初代マツダ ロードスターが、エランを参考にしながら開発されたのはあまりにも有名な話。
いつしか2シーターのライトウェイトオープンが姿を消してしまったとき、僕はなんとも言えない寂しさを感じていました。
そこに突然登場したロードスターを見て、「エランの再来だ!」と感じ、お金もないのにすぐ飛びつきました。
「エランのフロントガラスからもこんな感じの景色が見えたのかな」と、ロードスターを運転しながら想像するのはとても楽しかったですね。

でも、ライトウェイト2シーターオープンでエランを超えたモデルはいまだに存在しないのではないかと思います。
もちろん、性能面ではエランをはるかに凌ぐものはたくさんあるでしょう。ただ、存在感という面では今でもエランが一番ではないでしょうか。それくらい、世の中に与えた衝撃は大きなものでした。

テリー伊藤ならこう乗る!
実は、僕は過去に一度エランを買おうとしたことがあるんですよ。
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』をやっていた頃だから、1990年代初頭だったと思います。10万円の手付金(申込証拠金)も払ったのですが、最終的にはキャンセルしました。
その時ショップにあった中古車は、エランのシリーズ3とシリーズ4でしたが、僕はどうしてもシリーズ1が欲しかった。違いはいろいろありますが、僕はドアに窓枠がないシリーズ1こそがエランだという思いが最後まで拭えなかったのです。

もちろん、あれから30年経った今ではそこまでこだわることはありません。むしろ、エランが今でも残っていることを嬉しく思います。
この車は、ブルーと白のボディが特徴的なエランスプリント。これだけきれいな状態で残っているのは感動的です。
この状態に手を加えるのはもったいない! もし僕がこの車を手に入れたら、どこもいじらずこのまま乗り続けます。ホイールもキレイだから変える必要はないですね。


ライトウェイト2シーターオープンというと、ワインディングや海沿いを気持ちよく走るイメージがありますが、街を走らせるだけでも十分に気持ちいいもの。僕もエランと一緒に街の雰囲気を楽しみたいです。
でも、今エランで街を走っても、誰も振り返らないでしょう。横目でちらっと見て「ロードスターだな」と思うかもしれません。小さなボディを見て、他の車とひとくくりに「かわいい」と言われておしまいかもしれない。
でもそれでいいのです。なぜならエランは孤高の車だから。
ランボルギーニやフェラーリが遠くから走ってきたら、多くの人は振り返ります。スーパーカーはグラビアアイドルみたいなもの。オーナーも「見られてナンボ」という思いがあるでしょう。
エランはスーパーカーとは明らかに立ち位置が違います。
決して主役ではないし目立たないけれど、その人がいないと作品がしまらない名バイプレーヤーのような存在ではないでしょうか。例えるなら、田中邦衛さんのような存在。ぜひ、1人でエランと過ごす時間を存分に楽しみ、自己陶酔に浸りましょう。

ロータス エラン
ロータス エリートの後継モデルとして1962年から1975年まで製造された2シーターライトウェイトスポーツ。バックボーンシャシーの上にFRP製ボディを載せており、ロータス初のリトラクタブルヘッドライトが採用されている。エンジンはフォードのユニットをベースに、ロータスが開発したロータスツインカムユニットを搭載した。デビュー時はオープンモデルのみだったが、シリーズ2でクーペを追加。シリーズ3では2+2のエラン+2が追加されている。今回取材したのはシリーズ4に設定されたロータス エラン スプリントで、バルブを大型化したビッグバルブエンジンを搭載している。

演出家
テリー伊藤
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。新著『老後論~この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(竹書房)が発売中。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設!
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