初代アウディ R8。それは「スーパーカー嫌いなスーパーカーファン」に勧めたい1台【NEXT EDGE CAR】
カテゴリー: クルマ
タグ: アウディ / R8 / EDGEが効いている / 伊達軍曹
2021/06/29
▲アウディ初のミッドシップスポーツとして2007年に発売された初代アウディ R8 4.2 FSIクワトロ。写真はロペライオ練馬が販売する走行3.6万kmの2007年式で、車両価格は618万円今のうちから注目しておきたい「未来の名車」を探せ
こちらは6月24日発売の雑誌カーセンサーEDGE 8月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。
なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。
今回の題材は、アウディ初のミッドシップスポーツとして2007年に登場した「初代アウディ R8 4.2 FSIクワトロ」。
それは、「スーパーカーは欲しい。だが“一線”は越えたくない」と考える多くの常識人にとってはかなり魅力的な、素晴らしい乗り物であった。
▲ミッドシップレイアウトゆえ、ボディ後端には放熱のためのスリットが多数。得も言われぬ有機的な造形と併せ、なんともエモーショナルなリアビューといえるランボルギーニ ガヤルドの姉妹車
初代アウディ R8の何がどう素晴らしかったかをご説明する前に、アウディ R8という車のプロフィールもごく簡単に述べておこう。
アウディ R8は、日本では2007年7月に発表されたアウディ初の市販ミッドシップスポーツ。その車名は、ル・マン24時間耐久レースで5勝を上げた「アウディ R8」から採られている。もちろん中身はまったくの別物だが。
当時はアウディ傘下だったランボルギーニが作っていた「ガヤルド」とプラットフォームなど多くの部分を共有する姉妹車だが、R8のボディサイズはランボルギーニ ガヤルドより少々大きい(全長4435mm×全幅1905mm×全高1250mm)。
当初の搭載エンジンは、最高出力420psの高回転型4.2L V8 DOHCで、0-100km/h加速は4.6秒、最高速度は301km/hをマーク。トランスミッションは当初、「Rトロニック」と名付けられたシングルクラッチ式の2ペダルMTのみだったが、2009年2月には6MTも設定。
そして同2009年の4月には、最高出力525psの5.2L V10エンジンを搭載する「5.2 FSIクワトロ」を追加し、2013年1月にマイナーチェンジを実施。このマイナーチェンジで、トランスミッションがシングルクラッチ式6速セミATから、7速のデュアルクラッチ式ミッションである「Sトロニック」に変更された。また、もちろん内外装もデザインも、このタイミングで少々変えられている。
そして2016年3月、新型(現行型)R8へとフルモデルチェンジされた――というのが、若干駆け足となってしまったが、初代アウディ R8の概要だ。
で、今回ご紹介する物件は2007年式すなわち前期型のR8 4.2 FSIクワトロで、走行距離が3.6万km、車両本体価格は618万円也という1台である。
▲車体の中央付近にマウントされる4.2LのV8 DOHCエンジン。低重心化と激しい横Gに備えるため、エンジンオイルの供給方式はドライサンプ式を採用。ちなみに「V10 FSI」と貼られている部分はノンオリジナル
▲初代アウディ R8のコックピット。前期型のトランスミッションはシングルクラッチ式の6速2ペダルMTである「Rトロニック」。ノーマルとスポーツという2つの走行モードが用意されている
▲ハードでスポーティな雰囲気の車内ではあるが、7スピーカーのオーディオなどを備える快適空間でもある。撮影車両は新車時のオプション装備だった本革シートが装着されている。標準はレザー+アルカンターラだったスーパーな諸性能を静かに堪能したい人に
で、冒頭付近で申し上げた「初代アウディ R8は『スーパーカーは欲しいが、“一線”は越えたくない』と考える多くの常識人にとってはかなり魅力的な、素晴らしい乗り物である」という旨について、ご説明申し上げよう。
スーパーカーすなわち「スーパーな性能や、スーパーな存在感などを有する車に乗りたい」と考える人間は常に一定数存在している。だが、その人間たちは、同じ1つのグループに属しているように見えて、実は2つのタイプに分かれている。
ひとつは、バリバリに目立ちたいタイプ。
もうひとつは、スーパーカーならではの諸性能や存在感は堪能したいが、基本的にはあまり目立ちたくはない、そっと静かに暮らしていたい――と考えるタイプだ。
あなたがもしも前者であるならば、わざわざアウディ R8を選ぶ必要はあまりないように思える。「目立ちたい」あるいは「強い刺激が欲しい」と考えるなら、アウディR8の姉妹車であるランボルギーニ ガヤルドや、その後継モデルであるウラカン、またはフェラーリのV8ミッドシップモデルなどを選んだ方が、様々な点でより満足できるはずなのだ。
しかし、「あまり目立ちたくはない」という人が、うっかり間違えてランボルギーニ ガヤルドを買ってしまうと、ちょっと大変なことになる。
ガヤルドやウラカン、あるいはフェラーリなどは、あまりにもデザインと存在感、そしてエンジン音などが強烈であるため、家に止めておけば近所中で「……山田さんのお宅、いったい何があったのかしら?」とヒソヒソ噂話をされてしまい、用事などのため街へ乗り出せば、本人的にはそんな気はまったくないのに、「けっ、エラそうに……」といったニュアンスで、通行人からジロジロ見られることになる。
▲アウディらしく、よく整理されたメーター類が並ぶ、黒と赤と白を基調とする色の世界観も、他のアウディ各モデルと同様のものだ。エンジンを始動させると、メーター類の針は一度右側に振れる
▲タイヤサイズは前235/35R19、後ろ295/30R19。ブレーキシステムは前8ポッド/後ろ4ポッドのキャリパーに、アルミ材を用いたコンポジットディスクが組み合わされているもちろん、元来「目立つことが好き」というタイプの人は、そうやってヒソヒソ噂されることや、街角でジロジロ見られることすら逆に「快感」なのだろう。
だが、後者の場合は違う。
できればヒソヒソと噂されたり、見知らぬ人から「けっ!」などと思われることなく、ただただ「自分はスポーツカーが好きなのだ」といった領域を、静かに堪能したいだけなのである。
そしてそんな場合にこそ、車に詳しくない人が一見する限りでは「よく知らないけど、アウディのスポーツタイプの車」にしか見えない、だがその内実はランボルギーニの姉妹車であるアウディ R8こそが、向いているのだ。ついでに言えば初代アウディ R8は乗り心地も、ランボルギーニ ガヤルドと比べればはるかに良好である。
もちろん、ランボルギーニ的なものを好む人は逆にそれらを、つまり乗り心地がよいことや、さほどアグレッシブなデザインや存在感ではないことを「物足りない! そんなのはスーパーカーじゃない!」と感じるのだろう。
だが、これはもう趣味と信念と美意識の問題であって、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているというものでもない。
もしもあなたが「ランボルギーニ的なるもの」を好物としているのであればまったく勧めないが、そうでないスーパーカー好きなのであれば――相場的に割安ということもあって、初代アウディ R8は、ぜひともチェックしておきたい存在のひとつである。
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アウディ R8(初代)×全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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