先代アウディ A6後期型の超低走行物件が「新車のほぼ半値!」だが、それって本当にお買い得なのか?
2020/07/30
▲新車時の支払総額は700万円オーバーだった先代アウディ A6後期型の高年式低走行物件が今、総額350万円ぐらいから狙えるのは要注目と言えるが、そこに問題点はないのか? いろいろ検討してみます!メルセデスで言う「Eクラス」に相当するアウディのアッパーミドル
先代アウディ A6後期型の中古車相場が今、けっこうな勢いでお安くなっている。具体的には新車時価格680万円、つまりなんだかんだの総額で750万円ぐらいだった2017年式2.0 TFSIクワトロの低走行物件が、おおむね半値以下と言える総額350万円付近から狙えてしまうのだ。
これはなかなかお買い得のようにも思えるわけだが、世の中というのは光あるところに必ず影がある。それゆえ、一見お買い得に見える先代A6後期の低走行物件にも「影」はあるのかもしれない。
新車の約半値で買える先代アウディ A6の低走行中古車は本当に「買い」なのか? 以下、様々な方面から検討してみることにしよう。
まずは先代アウディ A6という車種自体についての簡単なご説明を。
アウディ A6は、往年の「アウディ100」の子孫と言えるアウディのアッパーミドルクラス。大中小で言うと「中」に相当し(ここで言う大はアウディ A8で、小はA4)、他社の有名モデルで言うと「ベンツのEクラス」とおおむね同じセグメントに属する。
先代A6が日本に上陸したのは2011年8月のことで、当初用意されたパワーユニットは自然吸気の2.8L V6と、スーパーチャージャー付き3L V6の2種類。駆動方式は両者ともクワトロ(フルタイム4WD)だった。
2014年2月には2Lの直4直噴ターボを搭載するFFの「2.0 TFSI」が追加され、2015年7月にマイナーチェンジを実施。これ以降の世代が、俗に後期型と呼ばれている。
このマイナーチェンジの主な内容は下記のとおりだ。
・新デザインのシングルフレームグリルとヘッドライト、テールライト、バンパー、サイドシルなどを採用
・オートハイビーム機能付きの「マトリクスLEDヘッドライト」をオプション設定
・運転支援システムとして「アウディ プレセンス」「アウディ サイドアシスト」「アウディ アクティブレーンアシスト」などを導入
・オペレーターサービスやGoogleとの各種連係機能、Wi-Fiスポットなどの機能を備えた「Audi connect」を全グレードに標準装備
・既存のグレードのうち「2.0 TFSI」「2.8 FSIクワトロ」を廃止し、新たに「1.8 TFSI」「2.0 TFSIクワトロ」を追加
▲こちらが日本では2015年7月に発売となった後期型(マイナーチェンジ版)アウディ A6
▲後期型からオプション設定された「マトリクスLEDヘッドライト」は、カメラによって前方を走る車両や対向車を検知して、ハイビームの部分的マスキングを自動的に行うシステム「新車の約半値」なのはいいが、何か問題点もあるのでは?
前段にて先代アウディ A6のいくつかのグレードについて簡単にご紹介した。しかし今、実際の市場で探せる先代A6の後期低走行物件はほぼすべて「2.0 TFSIクワトロ」であるため、以降はこのグレードに絞った形で検討を進めることとしたい。
で、総額350万円ぐらいから探せる低走行な先代アウディ A6 2.0 TFSIクワトロに関するまず第1の懸念点は、「とはいえ今やちょっと古くさく見えるんじゃないか?」ということだ。
これは確かにそのとおりで、後期型とはいえ、先代のアウディ A6は今や(ちょっとだけ)古い感じにも見えてしまうかもしれない。
これには3つの原因がある。ひとつは、2015年7月にマイナーチェンジを受けているとはいえ、内外装デザインの基本線は2011年のもの、すなわち9年前のセンスで作られたものだからだ。
そして第2の原因として、2019年3月に、やたらとカッコよくて未来派なデザインの「現行型A6」がデビューしてしまったということ。あれを見た後では、どうしたって旧型は古く見えてしまうものだ。
▲こちらが2019年3月に発売された現行型のアウディ A6。なんというか、さすがにカッコいいですな……さらに第3の原因として「アウディの宿命」というのがある。近年のドイツ車は、アウディに限らずどれもしゃれたモード系のデザインを採用しているが、アウディはそのなかでも「とりわけモード系」であるため、どうしてもデザイン的な旬の期間が短い。1世代、いや0.5世代でも古くなると、途端に「……あれ?」という感じになるのが、アウディという車の宿命なのだ。
ということで、先代A6の後期型には「今やちょっと古く見えてしまう」という懸念はあるのだが、この問題は2016年10月以降の世代、要するに「2017年式以降の中古車」を選べば、ある程度解決できる。
先代アウディ A6は2016年10月に一部改良を行っていて、このとき、「それまではオプションだった『Sラインエクステリア』が標準装備になる」という改変を受けている。
具体的には、従来は一体型だったフロントバンパーのエアインレット部が3つに独立し、サイドシル部もより拡幅。そしてリアディフューザーのデザインを変更することで、高級感というかモダンな感じが増しているのだ。
さらに、オプションの「Sラインパッケージ」装着車であれば「S6」と同デザインのシングルフレームグリルとなり、内装もスポーティでいい感じである。
ということで、第1の懸念点については「確かにそのとおりだが、2017年式以降の中古車を選 べば、ある程度問題なしである」というのを回答としたい。特にオプションの「マトリクスLEDヘッドライト」が付いている個体であれば、全体としての満足度はなかなかのものとなるだろう。
▲こちらが2016年10月以降の「一部改良」が行われた世代。それまではオプションだった「Sラインエクステリア」が標準装備となったことで、微妙だが確実にスポーティなイメージが増している
▲一部改良世代はリアディフューザーのデザインも変更されている。これまた微妙な変化ではあるのだが、しかしけっこう大きくイメージが変化するデザイン変更ではある唯一の懸念材料はトランスミッションか?
第2の懸念点は、「とはいえ現行型と比べると走りや乗り味もかなり劣るのでは?」というものだろう。
これまた答えは「ある意味そのとおり!」となる。最新世代のA6と比べてしまうと、先代A6の走りや乗り心地はいささか弱いと言わざるを得ない。
だがこれは「先代後期のアウディ A6がダメ」という意味では決してなく、あくまでも「現行型のA6が良すぎる」という話だ。
新設計された現行型A6のシャシーと可変ダンパー、そしてマイルドハイブリッドシステムは本当に素晴らしく、ほとんど魔法のじゅうたんといった感じの乗り味なのだが、それは「1000万円級の車だからこそ」である。
つまり「比べる相手が強すぎる」ということ。総額300万円台で買える車のなかだけで考えるならば、先代A6後期型の低走行中古車も「トップクラスの一員」である。普通に考えれば十分以上に大満足な走りっぷりなのだ。
▲「最強アッパーミドル」と言われることもある現行型A6と比べてしまうとさすがに分が悪いが、一般的な車と比べるのであれば、先代も十分以上に「スポーティかつ上質!」と評せる走りを披露してくれるだが本当の問題というか懸念は「ところで7速Sトロニックは大丈夫なのか?」ということだろう。
7速Sトロニックというのは、先代アウディ A6 2.0 TFSIクワトロに採用されているデュアルクラッチ式のトランスミッション。ダイレクト感にあふれる素晴らしいトランスミッションなのだが、これの故障例がいくつか報告されている。そしていざ本当にここが壊れたとなると、症例にもよるが、修理にはけっこうな額のマネーが必要になったりもするのだ。
とはいえ「7速Sトロニックは必ず壊れる」という話では決してなく、むしろぜんぜん壊れず普通に乗れるケースの方が圧倒的に多い。しかし「ここが逝ってしまうケースも希にある」というのが、先代アウディ A6という車の評価をややこしくしている。なんとも断言しづらい、難しい問題である。
▲写真は、先代アウディ A6後期型本国モデルの、日本でいう「Sラインパッケージ」に近い仕様のインテリアということで、「新車の約半値で狙える先代アウディ A6後期型は買いや否や?」という検討課題に対する暫定的な結論は、とりあえず下記のとおりである。
「2017年式以降で、なおかつマトリクスLEDヘッドライトなどのオプション装備が充実している個体であれば魅力は大。ただしSトロニック問題のことがどうしても気になる人は、最初から手を出さぬが吉」
以上、多少なりともご参考になったならば幸いだ。
▼検索条件
アウディ A6(4代目・後期型)×総額400万円未満×全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
この記事で紹介している物件
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