多趣味な男のガレージハウス
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2015/12/17

「見せる」と「イジる」を両立させた男のガレージ
車好きにもいろいろある。愛車をとことん乗り倒し、「車は走らせてナンボ……」を標榜する人。つねに愛車をピカピカに磨き上げ、オドメーターの距離が延びることをよしとしない人。ガレージにもその違いは表れ、メンテナンスを意識した実用的なものとするタイプや、あくまでも「見せる」ことに特化するタイプなどさまざまだ。
今回訪れたガレージハウスは、そのどれにも分類されない。というよりも、すべての要素を一軒で成立させてしまったというべきか。見せるためのガレージ、メンテナンスを優先させたガレージ、そして機動性を重視した外ガレージ。これらを併せ持つという贅沢なO邸をご紹介しよう。
場所は千葉県千葉市。広い道路と敷地で整然と区画整理された新興住宅街。その一角にO邸はあった。モノトーンで統一されたスクエアな外観により、周囲からひときわ目立つ存在。向かって右手には2台分の幅をもつガレージが備えられ、左手の外ガレージにはメルセデス・ベンツ Eクラスが収まっている。
周辺の街並みは広い歩道が備わるが、O邸はさらに2mほどセットバックして建てられているため、全体的にゆとりが感じられる佇まいだ。じつはこのセットバックには明確な理由があることが、のちほど判明する。
さて、気になるインナーガレージには、ポルシェ 911カレラSとケータハム スーパー7が格納されていた。奥行き・幅ともに十分なスペースが与えられ、広い窓から注ぎ込む自然光と相まって閉塞感は皆無。加えて、Oさんの几帳面な性格からかホコリひとつない空間は清潔感にも満ちている。
ポルシェ側のフロアは黒光りするタイル貼り。対してスーパー7側は鮮やかな赤色の滑らかな塗装が施され汚れのつきにくい床表面としている。ポルシェは玄関側に位置しているので、門を入ったエントランスからと、内部の玄関からその姿を見ることができる。
つまりポルシェ側は「見せる」ためのガレージといえる。スーパー7側の後方にはコンプレッサーやジャッキ、作業台や本格的なツールセットが備えられ、ひと目見てマニアックなスペースであることがわかる。すでに14年愛用しているというバイクはスーパー7側に置かれ、複数のヘルメットやライディングジャケットがガレージ内を彩るのに一役買っている。
外界の視線をシャットアウトし、プライバシーを確保
ガレージへの動線は2経路。ひとつは正面のシャッター部分から、もうひとつはガレージ後方にあるOさんの寝室から、家族との共有スペースを通過せずにガレージへ直接アクセスできる。その動線は、逆方向の正面玄関にも繋がっている。
面白いのは寝室からのルートで、ガレージ専用の玄関で靴を履き、スーパー7のボディ上に置かれたグローブ、ステアリングを手にして車内に乗り込む……という、一連の流れの動線上に各アイテムが置かれているという点だ。じつに洒落の利いたレイアウトであると感心。
Oさんは、車やオートバイだけではなく、ダイビングや自転車など多趣味。現在所有している車は、自宅に置いてある911、スーパー7、Eクラスのほかにもジャガーやマセラティなど国籍もキャラクターもさまざま。共通しているのは、すべての車を確実に乗りこなしているということだ。
バイクは「オフィスへの通勤用」。ポルシェは「雨の日の通勤、または買い物用」で、スーパー7は「天気がいい日の買い物用」。メルセデスは「子供の送迎など」と明確に役割が分けられている。
そんなマニアックなOさんのガレージハウスを設計するからには、建築家の方もさぞかしカーガイぶりを発揮してくれるのかと思いきや、「もともと車にはそれほど詳しくないので、Oさんからいろいろと教わり、大変勉強になった案件でした」とは設計を担当した佐藤さん。
つまり、Oさんからイメージを伝えてもらい、それを具現化することに注力したというわけだ。それによりガレージ内へのホコリの侵入を最小限にするオーバースライダーが用いられたり、換気扇を回さなくても空気の入れ換えが可能な窓を設置したり、スーパー7側のフロアにオイル漏れがあっても変色や腐食のない素材を使用するなど、細かい配慮が至るところに行き届く結果となった。
前述した前面歩道からのセットバックの件だが、これはポルシェ 911の長いオーバーハングが理由だ。道路から敷地までの高低差が高めで、一般的な傾斜ではフロントリップの部分が路面と干渉してしまう。そこで佐藤さんはオーバーハングの長さとアプローチの傾斜を緻密に計算して、なんとか地上高10㎜のクリアランスを保つことに成功した。
その裏には、「じつは911の車高を前後10㎜上げて、さらにガレージを出入りする際にはサスを一番硬くしているんですよ」という苦労もあるようだ。しかし、そんな手間もOさんにとってはなんのストレスにもならず、かえって「儀式」として楽しんでいる様子。
キャラクターの異なる好きなモノに囲まれて、それらの魅力を存分に味わいながらのガレージライフ。O邸は、そんなイメージだ。








【多趣味な男のガレージハウス 設計・監理:佐藤 淳】
■今回のこだわり:どうすれば便利で使いやすいガレージになるのかということをOさんに徹底的にヒアリングをして、勉強させてもらった。狭い空間が嫌いなので、ガレージも広く見せる工夫を施したほか、細かいところではガレージに備えた換気扇を止めた状態でも通気ができるように、上部と下部に小窓を設けて、つねに内部の空気が流れるようにした
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:198.35平米
■建築面積:97.71平米
■延床面積:187.14平米
■設計・監理:佐藤 淳(マザーズホーム一級設計事務所)
■TEL:043-298-5615
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2016年1月号(2015年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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