シンボルツリーと、シンボルカーのある住宅【EDGE HOUSE】
2021/02/28
▲Tさんの仕事部屋から中庭のテラスに出て、正面にガレージ、右手に玄関を眺めた様子。ガレージに掲げられたアルファロメオのロゴに、ちゃんと光が当たるよう、照明が設計されている。仕事の合間にも愛車をこうして眺めることができる仕事部屋からもリビングからも、眺められる愛車
施主のTさんが建築家の鈴木秀雄さんにガレージハウスを依頼するのは、このアルファロメオの家で2度目となる。
最初の家はユーノスコスモ時代。中古のいすゞ117クーペから始まったTさんの車歴は、NA型ユーノスロードスターの1.6L車、同1.8L車、日産 ラシーンを経て、13Bのユーノスコスモへ。
「ロータリーは壊れると聞いていたけど、ホントに8万kmでやられました」。それでもエンジンを載せ替えて、結局10年以上は乗り続けた。
そして「親が土地を遺してくれたので、家を建てることにしました」。この頃はまだ独身。どうせならカッコいい家がいいなと、建築家を紹介してもらえるサイトにアクセスしたところ、23も提案があった。
その中からTさんが選んだのが、鈴木さんの案だった。傾斜地を利用して地下1階にガレージを備え、地上の2階部分は三角形を基調とした形状のコンクリート打ちっぱなしのガレージハウス。
地下から地上2階の間に7つのスキップフロアが折り重なる、なかなかアバンギャルドな家だった。
その後、ユーノスコスモからアルファロメオのアルファ166、そしてアルファ159へと愛車は替わり、会社を辞めて自ら事業を興し、結婚もした。
しばらく夫婦はユーノスコスモの家で暮らしたのだが、次第に奥さまの母親のことが気がかりに。「お義母さんは今も昔も、とても元気なんですが......」。とはいえ高齢の1人暮らし。
何かと不便だろうと、奥さまの実家を2世帯住宅に建て替え、一緒に住むことにした。そこで再び設計を鈴木さんに依頼し、出来上がった家がこの"アルファロメオの家"というわけだ。
▲2階フロア。四方をガラス窓で覆った中庭の吹抜けを中心に、くるりと回遊すれば、食事や入浴、就寝など暮らしの活動のすべてが事足りる
▲2階の廊下から眺めた景色。夜、リビングから寝室へ行く動線の中で、あるいは出かけようとする動線中に、こうして愛車を眺められる
▲ガレージだけでなく中庭や玄関など、あらゆる場所で照明が計画されている。また中庭に面する外壁の塗り方も一工夫され、陰影で表情を作る
▲玄関の扉を開けると、大きなガラス窓越しに、シンボルツリーがこのようにお出迎えしてくれる。右手は"シンボルカー"の収まるガレージだ
▲ガレージには車止めを備えている。その車止めの奥(写真左手)にもドアがあり、仕事用の倉庫から仕事部屋へと回遊できるユーノスコスモの家は、初めて建てたこともあり、要望がまだふんわりとしていたし1人暮らしだった。
今回は2世帯住宅で、自宅に仕事の作業場も必要など、要望が細かくハッキリしていた。それを受けて鈴木さんが考えたのが「回遊できる家」だった。
「イメージとしては各部屋で中庭を囲む感じです。中庭を作ればすべての部屋が暗くならず、風通しがよくなります。それでいて外からの視線を気にせずに暮らすことができます。
加えて"回遊できる動線"にもこだわったのがこの家です」。回遊できることで、掃除や洗濯などの家事動線がスムーズになることはもちろん「家族が今どこにいるかも分かりやすい」と奥さま。
Tさんも「仕事で1階にこもっていても、息抜きにガレージへ行って車に触れたり、中庭のベンチまで出てタバコを吸ったり......と、回遊することで気分転換しやすいんです」。
中庭にはシンボルツリーとして常緑樹のシマトネリコが植えられた。しかし、この家の本当の"シンボル"は愛車のアルファ159 だと鈴木さんはいう。
「回遊できる風景の中に、Tさんが大好きな車を登場させたかったんです」と鈴木さん。だからガレージの一部をガラス張りにすることで、仕事部屋、2階のリビング、そして廊下からも見えるように配置した。
夜になって、リビングからスイッチをオンにすればガレージ内に明かりがともり、愛車が浮かび上がる。 今はアルファ159に乗るTさん。今後も愛車は替わるだろうが、少なくとも、いつも愛車がこの家の主役になるに違いない。
▲仕事部屋から中庭方向を眺めた様子。中庭へ出なくても、仕事の合間にふと振り向いたり、トイレに行くたびに愛車を眺めることができる
▲シンプルでスクエアな外観。外側に窓がほとんどないため、プライバシーを守りやすい。ガレージには木製のスライダーが備えられている
▲2階のLDK、食事をするテーブルは中庭に向いている。写真奥のバルコニーはリビングとつながっているように感じられ、数値以上に広がりがある
▲360度視界をさえぎるものがなく開放的な屋上。南側はデッキ材が張られていて、風景をのんびり眺めたりバーベキューを楽しんだりできる
▲屋上から中庭を見下ろした様子。ここからも愛車がちらりと見える。シンボルツリーのシマトネリコは常緑樹で、多少日が当たらなくても成長する■所在地:埼玉県春日部市
■主要用途:専用住宅
■構造:木造軸組構法
■敷地面積:252.61 ㎡
■建築面積:102.02 ㎡
■延床面積:174.82 ㎡
■設計・監理:鈴木秀雄(一級建築士事務所バサロ計画)
■TEL:03-3651-3395
※カーセンサーEDGE 2021年4月号(2021年2月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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