BMWの直列6気筒エンジンが高く評価される理由は、その歴史と哲学にあり!
2022/05/12
▲シルキーシックスという呼び名でも知られるBMWの直列6気筒エンジン。3シリーズや5シリーズ、もっと小さい1シリーズなどの一般的な市販グレードはもちろん、多くのMモデルにも搭載されてきた。写真はE46型のM3が搭載していたM54型ユニット元航空機エンジンメーカーの伝統が色濃く残る直6
どんなに良いエンジンであっても、環境やレギュレーションの変更がある以上、そのままの状態で生産し続けることはできない。
エンジンフードとエンジンのクリアランス確保のためにV型構造にボンネットを低くしたり、クラッシャブルゾーンを稼ぐためにエンジンを短くしなければいけないこともある。エンジン単体を短くすることが目的でV型に変更することだってある。
自動車メーカーは、時と場合によっては内燃機関の歴史や哲学を覆してでも、随時レギュレーションに対応しているのだ。 しかし、それらの理由で長年培われたブランドのアイデンティティであるフロントマスクやボディのデザインに変化が生じてしまうこともある。ただひとつの自動車メーカーを除いては……。バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケことBMWである。
ここまで内燃機関に対する自分たちの哲学を貫き通している会社はない。「ポルシェは?」と思う方もいるだろうが、あちらは特別なスポーツモデルに特化したブランドだ。BMWのような、普通乗用車用として直列6気筒を作り続けているメーカーとはちょっと異なる。
そして、BMWの象徴ともいえるのが、その直列6気筒エンジンである。直列6気筒というのは、複雑な機構を伴わずして最高のパフォーマンスを発揮できる構造となっている。この最高のパフォーマンスとは、スムーズで振動を打ち消す高いパッケージングの基本が備わっているということだ。そして、振動は車両の様々な部分にも少なからず負荷を与えてしまう。また、ドライバーや乗員の身体にも振動が絶えず伝わっていては快適ではない。振動によって苦しむのは、機械も人も同様なのである。高級モデルが6気筒以上の多気筒化をしている理由のひとつが、まさにこの振動問題なのである。
▲BMWは、元々航空機のエンジンを作っていた会社。その後に二輪、四輪車を生産していったというエピソードはあまりにも有名。シンプルで壊れない、信頼性の高い高性能エンジンを作る伝統はこの頃から育まれている
▲BMW初の直列6気筒であるM328を積んでいたのが、数々のレースで好成績を収めた328ロードスター。1936年から1940年まで生産された、BMW史に残る名ロードスターモデルであるではなぜBMWは、この直列6気筒エンジンを作るのが上手いのだろうか。
BMWは理論的に素性の良い部分を磨き、技術の信頼性を向上させてきた歴史がある。それは故障が許されない航空機用の直列6気筒を作ってきた頃から変わらない。BMW=6気筒のイメージが強いゆえんのひとつであろう。
そして、BMWは1916年から現在まで直列6気筒を作り続けている。つまり、100年以上前から内燃機関と向き合い、世界のレギュレーション、環境の変化に対応しながら直列6気筒の進化に磨きをかけてきたということだ。
直列6気筒エンジンには弱手もある。まずエンジン全長が長く、しかもシリンダーが垂直なためにエンジンフードを低くすることが難しい。これが理由でエンジン方式を方向転換する自動車メーカーもあったのだ。ところが、安易に直列式を捨てずに基礎を変えないのがBMWだ。エンジンフードのデザインを工夫し、エンジンの位置を後ろに持っていくプラットフォームの採用により、運動性能とスタイリングに寄与させたのだ。こうした独自の設計理念によってBMWらしいスタイリングが完成したといえるのである。
自動車用として高性能直列6気筒を作ったのが1936年。そのユニットをM328という。このエンジンは航空機技術を導入し、シリンダーヘッドとブロックはともにオールアルミで作られていた。
BMWがエンジン屋として高く評価され続ける理由は、かつての名エンジンを源流とし、それを現代まで強い意志で継承し続けている点にあるのだ。
▲シルキーシックスという言葉や「BMW=直列6気筒」のイメージを世界に広めたのが、1976年に発売された6シリーズの上位グレードである635CSi。搭載された3.5Lエンジンはビッグシックスまたはビッグシルキーと呼ばれ、今も高い評価を得ている▼検索条件
BMW 6シリーズ × 古い順 × 全国
▲現在もカーセンサーEDGE.netで多数の直列6気筒搭載モデルを検索できるが、2000年代のモデルなら比較的リーズナブルに手に入れることも可能。写真は最後の自然吸気直列6気筒を搭載していたE90型3シリーズで、車両本体価格50万円台から探すことができる▼検索条件
BMW 3シリーズ(E90型) × 全国
▲最新のM3やM4に搭載される直列6気筒はターボ化され、最高出力は510psにまで高められている。世界が効率化を求める中、愚直に直列6気筒に磨きをかけ続ける。それが、BMWというブランドのアイデンティティなのである▼検索条件
現行BMW M4クーペ × 全国【関連リンク】
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
“日本の誇り” 日産 R35 GT-Rは果たしてスーパーカーなのか?【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
’07 フェラーリ F430|空力とヘリテージが息づくV8ミッドシップ【名車への道】
【今が狙い目!】昨年2024年登場のメルセデス・ベンツ Eクラス(6代目)の中古車平均価格が1年間で約70万円ダウン!オススメの買い方・選び方を紹介
光岡 M55とダッジ チャレンジャーは本当に似てるのか問題。アメ車好きにも刺さるのか、ガチ比較してみた!
X3が3代目なら200万円代前半で狙える? BMWの人気プレミアムSUV、中古車相場やオススメの狙い方を解説
’73 シトロエン DS|独自のデザインと乗り心地、そのすべてに“哲学”がある【名車への道】
フェラーリの維持費ってどれくらいかかるの? そんなリアルな疑問、専門店に聞いてきた!
~300万では選べない、1000万では高すぎる~ 600万円で探せる一度は乗っておくべきクルマ【カーセンサーEDGE 2025年11月号】
新型T-Rocが海外で発表されたけど初代なら100万円台で買える? 日本にぴったりのコンパクトSUV、中古車相場やオススメの狙い方を解説!
マセラティ MC12ストラダーレ最高額落札の盛り上がりの陰で、マクラーレンの“最終車両”コレクションがひっそりと販売されていた!?









