信号待ちで最新モデルが隣に来ても、フェラーリ F355オーナーが胸を張っていられる理由
カテゴリー: クルマ
タグ: フェラーリ / クーペ / 富裕層向け / 成人向け / 目立つ / セレブ / MR / EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2016/04/28

100万円のド中古車なのに、なぜか2000万円超の車に対して上目線
過日。愛車の1台である96年式マツダ(ユーノス)ロードスターで東京都港区の某所を走行中、不思議な感慨を覚えた。都内の一等地ゆえ、信号待ちの際はフェラーリ カリフォルニアやらポルシェ ボクスターやらの高額オープンカーがしょっちゅう隣に並ぶのだが、そういった際でも劣等感のようなものが一向に湧いてこないのだ。それどころか「あぁカリフォルニアですか、そうですか(半笑い)」ぐらいの意味不明な上目線で、それらキラ星系を見下ろしている自分に気づいたのである。こちとら時価せいぜい100万円ぐらいのド中古車で、向こうは700万円級あるいは2000万円級の高級品だというのに。
自宅へ帰ったのち考え、そしてわかったことは「初代ロードスターは路上の階級闘争から(好むと好まざるとに関わらず)解脱しているからなのだろうな」ということだった。
例えば筆者が2014年式ポルシェ ボクスターS PDK(新車価格809万円)に乗っている若手経営者か何かで、信号待ちの際に2000万円超のオープンカーであるフェラーリ カルフォルニアや、あるいは超最新のポルシェ718ボクスターに並ばれたら、やはり心中完全におだやかではいられないだろう。「他人の持ち物を気にするなんて無意味だし、そもそもオレ、今のボクスターが超気に入ってるし!」と心底思っていたとしても、どうしても嫉妬や、より新しいモデルへの買い替え欲などが多少は湧いてきてしまう。程度の差こそあれ、そういった煩悩を108個ぐらい有しているのが我々人間である。
しかしざっくりいって「古い車」であれば、いや、ただ古いだけでなく「名車」としての評価がある程度定まっているちょっと古い車で、なおかつオーナー自身がその車に対して大いに満足しているならば、そのような煩悩からはほぼ完全に自由でいられるのだ。
筆者の場合でいえば、傍から見れば単なる古い国産オープンカーかもしれないが、本人としては「歴史的な意義もある世界的名車の一つを、きれいにレストアしながら乗っているのだ」というプライドのようなもの(もしくは自己満足)があるので、隣に1000万円の車が来ようが2000万円の車が来ようが、自らを卑下しようがないのである。それどころか先述したように2000万円超の車を「あぁ、ただ新しくて高いだけの車ですね(半笑い)」と見下すという暴挙に出てしまうことすらある。これはもちろん大いなる勘違いであり、失礼で悪趣味な行為だ。反省している。しかしついそう思ってしまうような力が、「名車としての評価がある程度定まっているちょっと古い車」にはある。

自己満足に浸りたいならF355こそ最高に好ましい選択の一つ
ということでカーセンサー.net/カーセンサーEDGE.net読者諸兄には、新しくて高額な車を追い求めるだけでなく、ときにはちょっと古い車、なかでも「名車としての評価がある程度定まっているちょっと古い車」に注目していただきたいわけだが、さすがにここで初代のマツダ(ユーノス)ロードスターを勧めるのは若干場違いだろう。
では何をお勧めオススメしたいかといえば、様々な候補があるなかで、やはり「フェラーリ F355」が最強に近いのではないかと思う。

ご承知のとおりF355は最新作から数えて4世代も前のV8フェラーリであり、最終年式でももはや17年落ちとなる、言ってみれば「ド中古車」だ。しかしその佇まいは、好みや考え方にもよるだろうが昨今のV8フェラーリからは失われた感もある優美さと可憐さがあり、ソプラノボイスが炸裂するエキゾーストノートも、最新のV8フェラーリである488GTB(これはターボエンジンだ)を向こうに回しても決して引けをとらない。むしろ「音に関してはF355の方が断然イイよ」という人の方が多いかもしれない。
もちろん、新しい世代ならではの魅力や新世代テクノロジーの威力を存分に味わいたい人や、それを手にすることで何らかの優位性を感じたい人にまで無理やり勧めるつもりはない。しかしそういった部分にさほど興味がなく、ただただ自分好みのモノを手に入れ、そして自分の世界の中で心静かに陶酔していたいという人間にとっては、フェラーリ F355は最高に好ましい選択の一つであることは間違いない。

ただし古い車というのは「メンテナンス/故障の問題」というのもあるわけで、それはそれでちょっとやっかいというか鬱陶しい話ではある。しかし幸いにしてというか何というか、ミッドシップのフェラーリは何もかもが強烈であるため、そのオーナーは「毎日乗る」ということがほとんどない。なかにはそういう人もいるのだろうが、たいていのミッドシップ・フェラーリオーナーは月に一度とか、せいぜい週に一度ぐらいしか乗らないのだ。そのため年間走行距離は2000kmとかそれ以下である場合がほとんどだ。
ということは、しかるべき部分が整備済みである良質な個体さえ買えば、メンテナンス代も実はさほどかからないのである。なぜならば「あんまり乗らないから」。たいていのF355オーナーの年間走行距離が2000km程度であるのと同時に、たいていのF355オーナーの年間メンテナンスフィーは、筆者の取材によればせいぜい数万円である場合が多い。エンジンオイルおよびフィルターの交換で年に1回3万~4万円ぐらいのお金がかかり、その他2年に一度の車検でいくばくかの整備代がかかる……というぐらいのモノなのだ。

購入にあたってのイニシャルコストは当然高いが、買っちゃえば後はなんとかなるし(リセール価格が鬼のように高いですから)、路上のくだらない階級闘争からもほぼ完全に自由でいられるフェラーリ F355。ある種の人にとっては最高の車の一つだと、やはり断言せざるを得ない。
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