テリー伊藤流! フォルクスワーゲン タイプIIで「不便さを楽しむ」という究極の贅沢
2018/01/09

頼りなさや不便さを楽しみたい
今回は、「ガッティーナ」で出合ったフォルクスワーゲン タイプIIについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
ワーゲンバスの人気が高まっていますね。
数年前までは割と手頃な価格で売られていたのに、今じゃ1967年までのアーリー(T1)で程度のいいものだと500万円を軽く超える価格が付けられていることも珍しくありません。僕にとっていつか乗ってみたい車なだけに、気が気じゃないですよ(笑)。
今回見つけたのはアーリーレイトと呼ばれる1969年式のタイプII(T2)で、フォルクスワーゲンのキャンピング仕様を長く作り続けるウエストファリアのモデル。人気があるタイプですね。

お邪魔した「ガッティーナ」の酒井社長いわく、「5年前にアメリカから入ってきたもので、当時はものすごくきれいだったのですが海のそばで乗っていたのでボディがだいぶ錆びてしまった」そう。
僕の読みでは150万~200万円ほどかければキレイな状態にできると思いますが、あえて今のままで乗るのもカッコいいんじゃないかと思いました。



キャンピング仕様といっても、インテリアは洒落っ気のないベニヤとテーブルがあるだけ。人によっては「昔の食堂」のように感じるかもしれませんね。
でも僕は声を大にして言いたい。この雰囲気だからいいんです!
この車がまだ新しかった頃であれば、人々は中を見て「味気ない」と思ったかもしれません。
でも人間は面白いもので、みんなが豊かになると逆に不便さを楽しむことがステイタスになります。大きな別荘を持つことができる富裕層が馬で荒野に出かけ、たき火をしながら一晩星を見ながら過ごすなんて、その象徴でしょう。


テリー伊藤なら、こう乗る!
1960年代のアメリカでは、タイプIIにサイケデリックなペイントを施したヒッピー仕様が流行しました。この個体のリアガラスにもそれをほうふつさせる花柄のステッカーが貼ってあります。せっかくなら当時の雰囲気そのままに思い切りペイントしてみるのも楽しそうです。
日本では車が便利さを追求し、軽自動車のワゴンでもあらゆることを賄えます。僕も仕事の移動には三菱のデリカを使っていますが、非のうちどころがありません。でも欠点がないということは、際立った長所も見つけにくいと言えます。
タイプIIは現代の日本のワンボックスと比べるととても頼りないですよ。でもその頼りなさにハラハラしながら、室内にダイレクトに入ってくるエンジン音をBGMに旅をする。
この感覚をスマホネイティブである小さな子供たちに味あわせてあげたいですね。
だってリアシートを倒してベッドにしたら、家族4人がスペアタイヤの横で寝るんですよ! どうやっても今の車じゃできない体験ですよ。ポップアップルーフ部分についたベッドもまるで担架のようなもの。


インテリアのベニヤといい、普通なら隠そうとするところをあえてさらけ出している感覚がたまらなく好きです。
快適な車で遊園地に出かけて作られた安全な冒険を楽しむくらいなら、こういう車に乗る方がリアルな冒険を体験できるはず。
現代は日本中どこにいたって携帯電話が繋がる時代です。もし旅先で車にトラブルが発生したとしても、助けを呼ぶことができるのですから怖いものはないでしょう。生活がどんどん便利になっている今こそ、こういう車で本物の冒険を楽しみませんか?

フォルクスワーゲン タイプII
ビートルの愛称で親しまれるタイプIをベースに開発されたトランスポーター。T1と呼ばれる初期モデルが登場したのは1950年。今回取材したT2は1967年にデビューした。空冷式の1.6L水平対向エンジンをリアに積み、後輪を駆動させるRR方式を採用している。キャンパー仕様の流通も多く、中でもドイツのウエストファリア社が手掛けたモデルは有名。
■ テリー伊藤(演出家)
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『ビビット』(TBS系/毎週木曜金曜8:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。
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