テリー伊藤が70年代の超独特なモデル、シトロエン SMを現代風に乗る術を提案!
2020/11/28
▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!GSが欲しかったけど手が出せない。当時のシトロエンは敷居が高い存在でした
~語り:テリー伊藤~
今回紹介するシトロエン SMは、1970年に登場したモデルで、日本にはごくわずかしか輸入されていない激レアクーペです。
搭載されるV6エンジンはマセラティ製。トランスミッションは5MT。そしてこのデザイン! すべてが僕の想像するシトロエンとはかけ離れています!

▲「世の中の車は“シトロエン”か、“それ以外”か」といわれるほど独創的なデザイン、機構を採用していたシトロエン。SMはその中でもトップクラスの変態ぶりです!SMは、野球に例えるとシトロエンが一番大振りバッターだった頃に登場しました。
いかにも芸術の国らしい感性で、デザインされていますよね。車のデザインに威信をかけている。それがひしひしと伝わってきます。
▲エンジンルーム内にある緑色の玉が、ハイドロサスペンションの要であるスフィア現在の車は売り上げが正義で、デザインは二の次になってしまったように感じます。
コンセプトだけでなく、デザインにもマーケティングを取り入れているものが多いし、ヒットモデルが生まれたら、すぐ別のメーカーから似たようなコンセプトのモデルが登場する。
でも、人の意見を聞いていたらこんなデザインは生まれないでしょう。人にどう見られるかなんて全く気にしていない。まさに芸術です!
SMが登場した頃、日本では車好きでもドイツ車の方が圧倒的に人気が高かったと記憶しています。メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲンに多くの人が注目し、シトロエンはどちらかというと「すぐ壊れるんじゃないの?」といわれ、値段が安い2CV以外は相手にされていなかった。
でも、僕はSMと同時期に登場したGSに乗りたくて仕方ありませんでした。シトロエンの独特のデザインがとても魅力的に映ったのです。
▲当時のシトロエンは車好きの間でもカルトな存在。乗るのは相当なマニアでした。僕も欲しかったのですが、さすがに勇気がなかったですそんな話をすると、友人からは「ハイドロが壊れたら修理にお前の給料3ヵ月分が必要だぞ」なんて言われる。
そう言われると、簡単に手が出せなくなってしまいます。信頼性が格段に向上した現代のシトロエンに乗るのとは、全く別の世界の話でした。
それもあり、当時シトロエンに乗っているのはそんな話に怯まないモード系の人や、実際にフランスで暮らしたことがあるような人だった。残念ながら僕にはシトロエンをファーストカーにするほどの力量がなく、GSに乗るという夢を叶えることはできませんでした。
テリー伊藤ならこう乗る!
デビューから50年経ったシトロエンを買うのは、なかなか勇気がいるものです。家におかかえの整備士がいるようなお金持ちだったり、すぐ近所に安心して任せられる整備工場があるならまだしも、普通はそんな恵まれた環境ではないですからね。
故障も一度や二度ならいいけれど、頻繁に起こるとだんだんとその車を愛せなくなるもの。
でもこのデザインは絶対に未来に残すべき。だとしたら外観はそのままに、EVのパワートレインを積んだり、最新のエンジンをスワップしてしまうのはどうでしょう。

▲優雅な雰囲気のコックピット。かなり大きな車体ですが後部座席は2人がけで広さもあまりありませんエンスーなシトロエンファンから殴られそうですが、僕はこのデザインを気軽に長く楽しめる方が幸せだと思います。中身が最新ならちゅうちょせず遠出もできます。
この車で緑の中を走ったら、最高に気持ちいいはずです。秋から冬にかけては、山の中で枯れ葉を舞わせながらゆっくり走ると、フランス映画のワンシーンみたいで最高にかっこいいと思いますよ。


▲シフトレバーも独特な雰囲気。足元のペダルはアクセルがオルガン式で、ブレーキは真ん中の丸いポッチ(?)になりますそして色も塗り替えたい。パールっぽいグリーンにして軽快な感じを出すと、オリジナルよりだいぶ印象が変わるでしょう。シートも白に張り替えて明るい雰囲気にしたいです。
「苦労しそうな車なのに、この人はずいぶん軽快に乗っているな」
そんな印象をもってもらえたら嬉しいですね。
今回お邪魔したコレツィオーネは、イタリアやフランスのビンテージモデルを得意とするショップです。常連のお客さんも車の手練れが多いはずですが、そんな人でもSMを買うのはちゅうちょするかもしれません。なぜなら僕と同じ年配者は当時のシトロエンの大変さを知っているから。
むしろ何もわからない30代くらいの人が「これ、面白いじゃん」とポンと買ってしまうんじゃないかな。
▲「僕ら世代ではなく、若い奴らが自由な感性で楽しんでほしい」とテリーさんでもそれでいいのだと思います。以前、原宿でアルファ ロメオの段付きをシャコタンにして乗っている若者を見かけた時、もう僕はこの世代には敵わないと感じました。
シトロエン SMも僕らとは美に対する意識が全く違う世代に自由な発想で乗りこなしてほしい。だって楽しげなSMが街を走っていたら、見かけた僕らも興奮するじゃないですか!
シトロエン SM
1970年から75年まで製造されたシトロエンの2ドアクーペ。ベースとなったのはシトロエン DSで、FF車で200km/hを超えることを目的に開発されたという。全長は約4.9mもあり見た目の印象はかなり伸びやか。ただ、キャビンは比較的タイトな印象。とくにリアシートはかなり狭い。搭載されるマセラティ製V6エンジンは最高出力170ps、最大トルク22.5kg・mを発生。シトロエンのお家芸であるハイドロニューマチックも搭載されている。
▼検索条件
シトロエン SM(初代)×全国
演出家
テリー伊藤
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。新著『老後論~この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(竹書房)が発売中。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設!
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