西川淳の「SUV嫌いに効くクスリをください」 BMWアルピナ XB7の巻
2022/05/16

アルピナらしい快適さは果たして効くのか?
アルピナの創始者、ブルカルト・ボーフェンジーペンは世界の潮流がSUVに移ってからもなお、背の高いアルピナには否定的だったという(その気持ち、よくわかるなぁ~)。後継者である息子のアンドレアスがようやくアルピナを時流に載せた。
古くからのファンの中には「アルピナよ、お前もか」、とおっしゃる向きもあると聞く。とはいえ、フェラーリまでもがSUVを作る時代である。いかに孤高のブランドとはいえ、SUVを無視するわけにはいかなかった。マーケット=客が欲しているのであれば、それに応えてみせることもまた上等なブランドの使命というものだろう。
そう自分にも言い聞かせてみたいところだけれど、世界の動向と個人の趣向はまた別次元のハナシである(笑)。
アルピナはまず、X3およびX4をベースとしたモデルを成功させると、いきなり今度はフラッグシップモデルであるX7を商品化した。高性能と見栄え、クオリティの高さで勝負するアルピナにとっては、SUVを主力と考えた場合の将来の成功への布石になるというわけだ。

クーペやサルーンでは見慣れたはずのアルピナグリーンも、体積のあるボディに塗られると雰囲気がまるで違う。街を走っていると巨大なグリーンのSUVはかなり目立つようで、よく振り向かれた。ロゴ入りの控えめなエアダムや迫力の23インチクラシックタイプホイール(オプション)など、スタイリングは従来と同じ定石にのっとって仕上げられている。巨大なホイールを履いているため、遠くから見るとX5くらいの大きさだ。けれども、近づいてみればやはり相当にでかい。
アルピナ初となる3列シートのMPVである。インテリアのグレードアップにはもってこいの素材だ。ドアを開ければまばゆいばかりのホワイトレザーが景色を占領し、そこから高級レザーの香りが立ち上っている。乗り込むことさえ一瞬、ためらってしまうほどに全席ファーストクラス質感で、さすがはアルピナのインテリア仕立てだ。


走り出せば、少なくともドライバーズシートもまたファーストクラスであることがわかる。これまでもアルピナの、特にシャシーセッティングの巧妙さに関してはB3やB8で散々味わってきたつもりだったが、そんな筆者でさえ三たび驚かされる快適さだ。23インチホイールを履いていることがにわかにも信じ難い。
一般道ではさすがにボディの大きさを感じる。それでも鈍重さはまるでなく、車体の動きも実にわかりやすい。背の高さからくる不安なロール感もまるでない。またしてもアシの出来栄えが極上であることを、街中のドライブから早くも思い知らされた。

さらに、アルピナ最大の魅力であるグランドツーリング性能も最高だった。東京から自宅のある京都まで一気にドライブする。期待していた以上の安楽さ。そのうえ、ドライブ自体も楽しいのだ。高速領域ではどこからでも十二分な力を発揮し、心地よいノートをたなびかせる。このV8エンジンはやはり良い。加速はいつだって滑らかなフィールで、もちろん力強い。それゆえ、かえってゆったりとしたドライブを楽しむことができる。だから疲れないというわけだ。
500kmのロングドライブを楽しんだのち、京都の街中を走る。大きさが気になるのでは、と思っていたが、その頃にはもうすっかり車体との一体感も出来上がっていて、X5くらいのSUVを転がしている気分だった。
ガレージと、もちろん懐事情にさえもっともっともっと余裕があれば買うのになぁ。
ロールスロイス カリナンに次ぐ、“欲しいSUV”の登場であった。だんだんと背の高い車も受け入れる身体になってきたようだ。





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自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
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