「ミニクラブマンは後悔するからやめとけ」は本当か? 輸入中古車評論家がお答えします!
2023/11/09
▲絶妙なサイズ感と適度な「抜け感」がかなり魅力的なミニ クラブマンという車ですが、ネットで検索すると「後悔」「やめとけ」的なワードがひんぱんに出てきます。ミニ クラブマンとはどんな車で、そして本当に「やめといた方がいい車」なのでしょうか? 中古車評論家がズバリ回答します!ミニクラブマンはやめとけ? 後悔する車? 専門家がお答えします!
そもそも非常におしゃれで可愛らしい「ミニ」という車ですが、ミニのシリーズには、その全長を微妙に長くした「ミニクラブマン」というモデルがあります。ステーションワゴン的でありながら、しかしワゴンよりはちょっと短いフォルムが絶妙におしゃれであるため、きっと気になっている人も多いのではないかと思います。
しかし、そんなミニクラブマンのことが気になってネットで検索をしようとすると、途端に出てくるのが「やめとけ」とか「後悔」などのサジェストキーワードです。さらには「生産終了」というキーワードも出てくるため、こちらとしては何やら不安になってしまうわけです。
そんなミニクラブマンとは、本当に「買うと後悔する車」であり、「やめといた方がいい車」なのでしょうか?
いろいろと調べてみることにしましょう。
▲こちらは初代のミニ クラブマン。本当に絶妙にステキなサイズ感なので、もしも問題がないようならぜひ入手したい1台ではあるのだが、果たして真実は?【モデル概要】ミニをストレッチした小ぶりなステーションワゴン
まずは「ミニクラブマンとはそもそもどんな車なのか?」ということをおさらいいたします。
ミニクラブマンは、普通の3ドアハッチバックのミニが第2世代へとフルモデルチェンジされた際に登場した、ミニの全長とホイールベース(前輪と後輪の間隔)を少し長くした派生モデルです。
ちなみにその“ご先祖さま”は1970年代に英国で販売された「ミニ クラブマン エステート」という車です。
1960年代のご先祖さまはさておき、初代ミニ クラブマンが発売されたのは2008年3月のこと。3ドアハッチバックのミニの全長を24cmほど延ばし、ホイールベースも8cm延ばした初代ミニ クラブマンは「シューティングブレーク」と呼ばれるボディタイプの車でした。シューティングブレークというのは、英国の貴族が狩猟用に使っていた小ぶりなステーションワゴンです。
リアゲートは観音開きのしゃれたタイプで、後席へ乗り込みやすくするための「クラブドア」という小さなドアも、車の右後ろ側面に用意されました。
▲こちらが2007年から2014年まで販売された初代ミニ クラブマン
▲ミニの全長を24cm延ばして「シューティングブレーク」と呼ばれるタイプのボディ形状にして、右サイドの後ろ側に「クラブドア」という、観音開きの小ぶりなドアが設けられた
▲同世代のミニ ハッチバックとおおむね共通するデザインとなる、初代ミニ クラブマンの運転席まわり基本となるグレードは「クーパー」と「クーパーS」の2種類で、クーパーには最高出力120psの1.6L自然吸気エンジンが搭載され、クーパーSには同175psのターボ付き1.6Lエンジンが搭載されました。トランスミッション(変速機)は6速ATまたは6MTです。
そんな初代ミニ クラブマンは2010年5月にエンジンが刷新され、同年10月にはデザインも少し変更するマイナーチェンジを受け、2015年10月まで販売されました。
現在も販売されている2代目ミニクラブマンがデビューしたのは2015年10月。初代は「3ドアのミニをちょっとストレッチした車」というニュアンスでしたが、2代目は全長4270mm×全幅1800mm×全高1470mmというまずまず立派なサイズに生まれ変わり、後部のドアも、片側だけの「クラブドア」ではなく、両サイドに通常サイズのドアが設けられました。
つまり2代目は、狩猟用のシューティングブレークではなく「やや小ぶりなステーションワゴン」といえるスタイルの車に変身した――ということです。これにより車内空間がまずまず広くなって実用性が向上したとともに、各部のつくりは「ちょっと上級なニュアンス」へと移行しました。
▲こちらが2代目ミニ クラブマンの前期型
▲ミニをストレッチした初代クラブマンよりもさらに全長を29cm延ばし、後席の両サイドに一般的なドアが設けられている
▲「円」のモチーフを多用している2代目ミニ クラブマンの運転席まわり「クーパー」に搭載されるエンジンは最高出力136psの1.5L直3ターボで、「クーパーS」は同192psの強力な2L直4ターボを搭載。2016年4月には、1.5L直3ターボの出力を少し抑えた「ワン」というエントリーグレードが追加され、それとほぼ同時に2種類のディーゼルターボエンジンも追加されています。
2019年10月にはマイナーチェンジを行い、エンジンとトランスミッション、そして内外装デザインを変更。そして、諸般の事情により2023年いっぱいで販売終了となることが先日アナウンスされた――というのが、初代および2代目ミニ クラブマンの大まかな概要です。
▲2019年10月のマイナーチェンジでこのようなデザインに。このタイミングで運転支援システムの内容も向上したそれでは次章以降、「ミニクラブマンはやめといた方がいい車なのか?」を、世代別にそれぞれ検証していきましょう。
【第1世代】格安車は避け、「クーパー」を中心に選ぶ
2023年11月上旬現在、初代ミニクラブマンの中古車流通量は約380台とまずまず豊富で、価格帯は総額30万~220万円といったところ。この中から「どれをどう選べばいいのか?」ということを検討してみましょう。
多くの人は、まずは総額30万~60万円ぐらいの格安な初代ミニクラブマンに引かれるのかもしれません。「こんなにカワイイ車が、こんなに安く買えるなんて!」というニュアンスで。
その気持ちはわかりますが、格安価格帯の初代ミニクラブマンは、正直あまりオススメはできません。
▲「いくら以下」と明確なラインを引くことはできないが、とにかく格安価格な初代ミニ クラブマンの中古車は、正直あまりオススメはできないもちろん中古車のコンディションというのは価格だけで測れるものではありません。しかし、格安価格帯の初代ミニ クラブマンは一般論として、ネット検索時のサジェストキーワードとして出てくる「後悔」「やめとけ」的な現象につながる可能性もある選択肢なのです。
ややこしい機械の話はなるべく割愛しますが、この世代のミニのエンジンは「タイミングチェーン」というものに関連する部品や、エンジンの冷却に関連する部品などに問題を抱えている可能性もあります。
もちろん、常日頃からしっかりと点検および整備を受けてきたエンジンであれば問題ないのですが、オイル交換もろくにしないタイプのユーザーが「ほぼ乗りっぱなし」で乗っていた個体は、前述したタイミングチェーンや冷却関係の部品が激しく劣化しているかもしれないのです。
そういった物件を上手に避け、初代ミニクラブマン選びを成功させるコツは、おおむね下記のとおりとなるでしょう。
クーパーSというのはターボ付きのエンジンを採用しています。で、ターボ付きエンジンというのはパワフルで素敵なのですが、その分だけ、エンジンオイルの管理などをきちんとしないと激しく劣化します。そのため、この場合はターボが付いていないクーパーを選ぶ方が「安全策」になるでしょう。
▲こちらがノンターボエンジンを搭載する「クーパー」。クーパーSほどの速さはないが、普通に使う分には十分以上な、特に不満は感じないはずの動力性能を発揮する▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(初代) × 「クーパー」系グレード×全国
先ほどから言っている「タイミングチェーン」や「冷却関係」、あるいはその他に「ラッシュアジャスター」という部品など、初代ミニクラブマンのエンジンにおいて注意すべき部分はいろいろあります。
そしてそういった各種のポイントをいつ、どのように整備すればいいかを、ミニを専門的に扱っているショップであればよく知っているはず。逆にいうと非専門店では、そのあたりに手と頭が回っていない可能性も考えられます。
そのため、初代ミニ クラブマンの中古車はできるだけ「専門店」または「ミニに強いショップ」で買うことが、これまた安全策になりえるでしょう。
先ほどもいったように、中古車というのは「価格」だけで状態を測れるものではありません。しかし市場を見渡してみると、初代ミニ クラブマンの品質としての境目は、どうやら「総額100万円」あたりに存在している模様です。
「総額100万円以上の中古車なら絶対に大丈夫!」と断言はできないのですが、あくまでもひとつの目安として、参考にしてみてください。
▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(初代) × 総額100万円以上×全国▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(初代) × 全国【第2世代】前期型ディーゼル車は「リコール作業済み」であることを要確認
2023年11月上旬現在、2代目ミニ クラブマンの中古車流通量は約660台と、初代以上に豊富です。そして中古車の価格帯は総額90万~490万円といったイメージ(※超スポーティな「ジョン・クーパー・ワークス」というグレードを除く)。
こういった状況下で「どんな2代目ミニ クラブマンを選ぶべきか?」ということを検討してみましょう。
▲ミニとしてはやや大ぶりなサイズとなった2代目ミニ クラブマン。その中古車は、どのような観点で選べばいいのだろうか?
タイミングチェーンなどにいくつかの問題を抱えている可能性もある初代と違い、2代目ミニ クラブマンは比較的安心して購入できる車です。とはいえ最初期のモデルはもはや8年落ちですので、ノーメンテで荒っぽく扱われていた個体は、今となっては故障リスクの塊かもしれません。
そういった「故障リスクの塊」を避けるためには、まずは「総額150万円以上をひとつの目安にする」という方策がある程度有効でしょう。
何度も申し上げているとおり、中古車の品質というのは価格だけで測れるものではありませんし、また「走行距離」だけで測れるものでもありません。しかしながら、どうやら総額150万円付近に「中古車品質の境目」がありそうですので、ひとつの目安としてご活用ください。
▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(2代目) × 総額150万円以上×全国
2代目ミニ クラブマンは2019年10月にエンジンを変更するマイナーチェンジを受けたのですが、それ以前の世代のディーゼルターボエンジンは「EGRバルブ」という排気ガスの再循環装置に問題を抱えていました。これの耐久性が不十分であったためにエンジンがギクシャクしてしまったり、水漏れを起こしてしまった個体もあったのです。
しかし、ミニ(BMW)は2023年3月にこれのリコールを国土交通省に届け出て、当該の部品は対策品に無償で交換されることになりました。
現在ショップで販売されている前期型ディーゼル車のほとんどはリコール作業済みかとは思います。しかし「万一」ということもありますので、ディーゼルターボエンジンを搭載する「クーパーD」と「クーパーSD」の2016~2019年式を購入する場合は、EGRバルブのリコール作業が完了しているかどうか、販売店に確認するようにしてください。
▲2019年10月以前のクーパーDまたはクーパーSDを狙う場合は、EGRバルブという部分のリコール作業が完了しているかどうかを必ず確認したい
若干値段は高くなってしまいますし、「マイナーチェンジ後の後期型だから絶対大丈夫!」と言い切ることもできません。しかし、より信頼性が上がった2019年10月以降の世代を選ぶようにすれば、ネットで言われているような「後悔」「やめとけ」みたいな話になる可能性は大幅に低下するはずです。
後期型を選ぶ場合の予算目安は総額270万円~といったところ。この予算を無理なく拠出できるかどうかが、「後期型作戦」を実行できるかどうかのカギとなります。
▲こちらがマイナーチェンジ後の後期型。中古車価格はまだ若干高めだが、機械としての安心感はある▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(2代目) ×2019年10月以降生産モデル×全国▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(2代目) × 全国以上のとおり初代および2代目のミニクラブマンは、選び方によっては、ネットで言われているとおり「後悔」「やめとけ」みたいなことになる可能性も秘めています。 しかし逆にいうと、今回ご紹介したような手法を駆使して慎重に選べば、「後悔!」「やめときゃよかった!」みたいなことになる可能性は大幅に低減させることもできるのです。
そして、そもそもミニクラブマンは新旧問わず、なんとも絶妙なフォルムのカワイイ車です。ぜひこの機会に、今年いっぱいで新車の販売が終了となってしまうミニクラブマンにあらためてご注目いただけましたら幸いです。
※記事内の情報は2023年11月1日時点のものです

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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この記事で紹介している物件
ミニ
ミニクラブマン ジョン・クーパー・ワークス 4WD 禁煙車 ACC 衝突軽減ブレーキ 前車接近警告 障害物センサー パーキングアシスト HDDナビ バックカメラ シートヒーター パドルシフト ヘッドアップディスプレイ LEDヘッドライト
本体価格359.0万円
支払総額377.8万円
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