ポルシェ 911(空冷・993型)の中古車価格約1800万円に絶望した人に贈る「1/3で買えるコレ、代わりにどうですか?」5選
2024/06/11
▲10年ぐらい前までは総額300万円台でも買うことができたポルシェ 911の「タイプ993」ですが、近頃は最安値でも約1000万円で、高いものだと1億円を超えることも。今後値下がりする気配もなさそうであるため、遺憾ながら「タイプ993の代わりになり得るモデル」を探してみることにしましょう!タイプ993の911は1億円を超える中古車も!
「世界一のスポーツカー」かどうかはさておき、「世界を代表するスポーツカーのひとつ」であることは間違いないポルシェ 911。
その素晴らしさは言わずもがなだが、特に1998年まで販売されていた「空冷フラットシックスを搭載するポルシェ 911」は、唯一無二のフィーリングと高揚感をドライバーに与えてくれるという意味で、素晴らしすぎるほど素晴らしい存在だ。
だが素晴らしすぎるだけあって、その中古車価格も高すぎるという事実がある。
空冷911の最終世代である993型(1994~1998年)は、10年ほど前までは「911カレラ」を総額300万円台でも狙うことができた。しかし、ご承知のとおり今や最安物件でも約1000万円であり、中古車の平均価格は1753.3万円に達している(※2024年5月下旬現在)。そしてカレラRSに至っては1億円を超える物件も登場した。
そしてこの先、993型ポルシェ 911の相場が「なぜか大幅に下落しました」となることは、おそらくないだろう。そのためタイプ993の入手は――筆者のような普通人にとっては「かなり難しいこと」となってしまったのだ。
とはいえそのことを嘆いてばかりいても仕方ない。まずはしっかり前を向き、「タイプ993の代わりになり得るモデル」について考えてみたいのだ。
もちろん、空冷ポルシェ911の代わりになるモデルなんて存在しないということは重々承知である。
それでも「993型にある程度近い満足度」を得られるモデルはあるはずで、なおかつそれを993型の3分の1ぐらいの価格=総額600万円ぐらいで入手できたなら、人生はなかなかハッピーなものになるのではないだろうか。
ということで探してみることにしよう。おおむね総額600万円ぐらいの予算で、「993型にある程度近い満足度」を得られるモデルを!
候補1|ポルシェ 718ケイマン(タイプ982・現行型)
予算目安:総額600万~700万円
▲2016年4月に上陸したポルシェ 718ケイマン「より最新に近いポルシェ」を入手することでもって993型の満足感に対抗しようと考えるなら、適任は「718ケイマン」になるだろう。
ご承知のとおりポルシェ 718ケイマンは、ポルシェのミッドシップスポーツとして登場した「ケイマン」の第3世代。基本となる搭載エンジンは2Lまたは2.5Lの水平対向4気筒ターボで、従来型ケイマンが搭載した2.7Lまたは3.4LのNA水平対向6気筒より気筒数は減少している。
だがスペック的にはよりパワフルになっており、2Lターボでは従来型2.7L NA比で25ps増の最高出力300psをマークし、2.5Lターボでは350psの大パワーが炸裂する。
4気筒ゆえ、993型に限らず911全般が有している重厚感のような部分では「少し違うかな?」とは思うが、同じく911全般が有している「精密感」や「鬼のような接地感」については718ケイマンも同等または同等以上。そこに4気筒ターボゆえの「軽さ」が組み合わされているのだから、718ケイマンのドライブフィールが素晴らしくないはずがない。
そしてオプション装備の「ポルシェ・トルク・ベクタリング(PTV)」が付いた中古車が見つかったなら、その電子制御機構はタイプ993のマルチリンク式リアサスペンション以上の働きをするだろう。
総額600万円で狙えるのは2.5Lターボの「718ケイマン S」ではなく2Lターボの「718ケイマン」に限られるが、それでも十分というか、十分以上である。
▲トランスミッションは7速PDK。7インチのマルチタッチディスプレイや150Wのオーディオシステムを標準装備する▼検索条件
ポルシェ 718ケイマン(タイプ982・現行型) ×全国候補2|BMW M3クーペ(E92型)
予算目安:総額500万~600万円
▲現行世代の「M4クーペ」から数えると2世代前に相当するE92型BMW M3クーペポルシェ 718ケイマンも素晴らしい選択肢だとは思うものの、「4気筒」という部分に若干の抵抗を覚える人もいるのかもしれない。
ならば「いっそV8エンジンを選んでしまう」という行動に出るのはどうだろうか? つまりは2007年から2014年まで販売されたE92型BMW M3クーペである。
BMW 3シリーズをベースとする超スポーティモデルであるM3は、ご承知のとおり初代は直4DOHCを搭載してDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)を戦い、その後の2世代は3~3.2Lの直6DOHCを搭載した。
しかし2007年9月に登場したE92型M3クーペは、当時のM5に搭載したV10エンジンから2気筒分を切り落とした4L V8を採用。だがそれでいて直6エンジンよりエンジン単体では15kg軽量化され、パフォーマンスとしては最高出力420ps/8300rpm、最大トルク40.8kgm/3900rpmを発生した。
それでも車両重量は1630kgもあるため、おおむね1300kg台後半だった993型ポルシェ 911カレラとは乗り味の方向性は異なる。
しかしV8ユニットならではの短いクランクシャフトは超が付くほどの高回転を許容し、最高出力は8300rpmで発生される。この怒涛の高回転特性と怒涛のパワー、そして見かけによらず洗練された乗り味をもってすれば、993型ポルシェ 911の「完全な代替品」にはならないとしても、かなり近いボリュームの満足を得られることは間違いない。
トランスミッションはコンベンショナルな6MTと、7速DCTである「M DCT ドライブロジック」の2種類で、それぞれの流通比率はおおむね半々。どちらをお選びになっても良いとは思うが、「993型カレラに近い歓びを得る」という目的から考えるのであれば、オススメは6MTだろうか。
▲シンプルなブラックを基調とする武闘派なインパネまわり。トランスミッションは写真の6MTの他、7速DCTも選択可能▼検索条件
BMW M3クーペ(E92型) ×全国候補3|ポルシェ 911カレラ(タイプ997・後期型)
予算目安:総額700万~800万円
▲2004年から2011年まで販売されたポルシェ 911の997型。写真は2008年6月にマイナーチェンジを受けた後期型カレラ「総額600万円ぐらい」という想定ラインを超え、タイプ993の1/3よりはやや高めで恐縮だが、やはり「993型の代わりになり得る一台」といえばこれを外すわけにはいかない。993型から数えて2世代後の、水冷フラットシックスを搭載した911カレラである。
初めて水冷化されたタイプ996は新車当時、「いささか乗用車的な乗り味でつまらない」「全体的な質感が(911としては)やや低い」というような評価もされた。
だが2004年に登場した第2世代の水冷911であるタイプ997は、エクステリアデザインの面で伝統的な丸目ヘッドランプへと回帰し、インテリアの質感なども向上した形で登場した。
とはいえその前期型はインターミディエイトシャフトと6番シリンダーの問題によって評判を落としたわけだが(といってもすべての前期型997で問題が発生したわけではなく、問題発生の確率は低かった)、2008年6月以降の後期型からはエンジンを完全新設計の直噴タイプに変更。
排気量は前期型と変わらず3.6Lだったが、最高出力は前期型の325psから345psに向上。そして前述した問題についての懸念も払拭された。
さらに後期型ではオートマチックトランスミッションを、それまでのトルコン式5速ATであるティプトロニックSから7速DCTの「PDK」へと刷新。DCTならではの電光石火な変速が堪能できるようになった。
……というような成り立ちを持つタイプ997後期型のカレラであっても、空冷フラットシックスを搭載したタイプ993の「完全な代替品」になるとは筆者も思っていない。
とはいえ同じ911ファミリーの中の「より進化した存在」としての997後期型カレラは、993型カレラに“近い”満足感を与えてくれることは確かだ。そしてその中古車価格は“近い”どころではなく、993型の約半額である。
▲後期型からAT車のトランスミッションは7速PDKに。6MTを探すこともできなくはないが、流通量は少なめで、中古車価格もPDKより高めになる▼検索条件
ポルシェ 911(タイプ997) ×2008年6月~2011年10月生産モデル×カレラ×全国候補4|アルピーヌ A110(2代目・現行型)
予算目安:総額660万~750万円
▲超軽量なシャシーのミッドに、程よくパワフルな直噴1.8Lターボエンジンを搭載するアルピーヌ A110ポルシェとはいささか毛色が異なるがフランスの「アルピーヌ A110」も、993型ポルシェ 911の代わりとしては十分以上に機能すると思われる。
ご承知のとおり現行型のアルピーヌ A110は、1960年代から70年代にかけて活躍した元祖A110を現代の最新技術で蘇らせた軽量ミッドシップスポーツ。
アルミ製軽量ボディの採用により、車重はガソリンタンクに燃料を満たした状態で1080kg。これは最近のフル装備な軽自動車とほとんど変わらない重量だ。
搭載エンジンは、前出のM3クーペなどと比べれば可愛らしい数値といえる最高出力252psの1.8L直噴直4ターボだが、アルピーヌ A110の走りは、その軽量さとも相まってきわめて強烈。いや強烈というよりは「痛快&爽快!」というべきだろうか? とにかくポルシェ 911とベクトルは異なるが、分量的には同じぐらいの「走る歓び」を得られるのがこの車だ。
作りもコンセプトも異なる車同士を無理やり比較するのはナンセンスだが、それでもあえて言うとしたら、「普通ぐらいの速度」で走っている際のドライビングプレジャーは、993型ポルシェ 911よりもアルピーヌ A110の方が上であるように思う。
それでいて中古車価格はタイプ993の約3分の1、総額660万~750万円付近のゾーンで普通に見つけることができるだろう。
▲993型ポルシェ911のやや無骨な世界観とは大きく異なるアルピーヌ A110のインテリア▼検索条件
アルピーヌ A110(2代目・現行型)×全国候補5|スバル アルシオーネSVX(初代)
予算目安:総額150万~500万円
▲スバル初の高級ラグジュアリークーペとして1991年に発売された「スバル アルシオーネSVX」718ケイマンもM3クーペも、そしてアルピーヌ A110も、ナイスな選択肢であるとは確信している。だが世の中には「自分はどうしても水平対向6気筒が欲しいのだ!」という人もいるのかもしれない。
そういった場合は1000万円以上の予算を投じていずれかのポルシェ 911を買うのがベストなのだが、もしも1000万円を投じたくないというのであれば――911と同じく水平対向の6気筒エンジンを搭載した「スバル アルシオーネSVX」でどうだろうか?
スバル アルシオーネSVXは、1991年から1997年まで販売されたスバルのスペシャルティクーペ。その最大の特徴は、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロのオリジナルコンセプトに基づく斬新なデザインといえるだろう。
水平対向エンジンならではの低いノーズと、ルーフ以外の360°全面をガラスで覆った、まるで航空機のキャノピー(操縦席を覆う天蓋)のようなキャビン。そしてそのサイドウインドウには、ルーフ部分まで回り込む複雑な三次元曲面ガラスが採用された。
▲「グラスキャノピー」を実現させるため、ピラーはすべてガラスの内側に存在している。また徹底したフラッシュサーフェス化により、空力抵抗係数も0.29という抜群の数字をマークそんなアルシオーネSVXに搭載されたエンジンは、新開発の3.3L水平対向6気筒「EG33」。これは北米向けレガシィの2.2L水平対向4気筒SOHCに2気筒を加え、さらにはDOHC24バルブ化したというもの。低回転域から高回転域までひたすら豊かなトルクが発生し、なおかつきわめて静かでもあるという「至高の6発」だったのだ。
とはいえその乗り味は「優雅なラグジュアリークーペそのもの」といったニュアンスで、いささか硬派な993型ポルシェ 911のそれとは大きく異なるものである。
しかし、タイプ993とはキャラクターもデザインもここまで違うアルシオーネSVXだからこそ、水平対向6気筒ならではのテイストは味わいつつも、その他の部分は(あまりにも911とは違うため)あきらめがつくというか、993型ポルシェ 911のことを忘れられるのではないか? と思うのである。
2024年5月下旬現在、スバル アルシオーネSVXの中古車流通量は約20台。価格は「応談」である場合も多いのだが、筆者のこれまでの取材経験によれば、リフレッシュ費用を含めて350万~500万円ほどの総額を用意すれば、かなり満足のいくアルシオーネSVXが手に入れられるはず。
決して万人にオススメしたい選択肢ではないのだが、ある種の人には、きわめて深く刺さる1台であるはずだ。
▲インテリアもポルシェ 911とは真逆の世界観。この「平成レトロ」な感じが今、逆にシブいのかも?▼検索条件
スバル アルシオーネSVX(初代) × 全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。
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