金森の家+中村高淑(後編)
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2010/08/17
夢の暮らしを諦めないための時とともに変化する家づくり
せっかく長く住むことになる家なのだから後悔したくないし、させたくもない。そんな想いから生まれた「金森の家」は、住人の生活スタイルに合わせて姿を変えていくことを念頭に置いた住宅だ
作り込みすぎず自由度のある空間を提供
設計は、建築家の中村高淑さんが担当。施主であるTさんの要望は、「クルマ(シボレーとハーレー)は絶対に中に入れたい! というものでした。さらに玄関との境をガラス張りにして、家の中からもガレージが見えるように」
わりと、あっさりとしたオーダーだったようだが…。
「まずコストありきでした。できるだけイニシャルコストを抑え、後回しにできることは将来的な予定に入れる。省くところは省くべきだが、本当に欲しいモノは諦めるべきではないというのが、私の考えです」
なるほど。ビルトインガレージの形態や住宅本来の広さを、後々変更するのは容易なことではない。まず「ハコ」は確保しておいて、少しずつ本来の目標に近づけていく…という手法だ。
この中村さんの考え方は、リビングルームにも生かされていた。
玄関を入ると、左手にウッディなら旋状の階段。右手は一面ガラス張りとなり、ガレージ全体を見渡せる。階段を上がると、リビングルームのほぼ中央に出た。2階は33・5畳のワンルームという贅沢な作り。ただし、現在8歳と3歳という2人の子供たちが大きくなり、それぞれの部屋が必要になった場合には、4畳半の子供部屋が2つ生まれる作りになっている。つまりガレージと同じく、住空間も今後「可変」することを見越して設計されている。
「若い夫婦の場合、家を建ててからもライフスタイルは何度か変わります。ですから作り込みすぎないで、大らかに作っておく必要があるのです。そして、時とともに変化する生活のスタイルに合わせて家も変わっていくようにするといいと思うんです…」
つぶやくように中村さんが教えてくれた。
階段の周辺は1mほどの壁面で覆われていて、階段を上りきった瞬間は、船のキャビンからデッキに出てきたような感覚だ。子供たちは、この周辺を駆け回っているというから、広いリビングルームを確保した甲斐があるというもの。バルコニーも、子供たちが遊ぶには十分なスペース。どこにいても、アイランドタイプのキッチンで家事をする母親の目が届く。たとえ視界に入っていなくても、気配が伝わる作りとなっている。
あらためて階段を下りてみると、最終コーナーを抜けたところで正面にシボレーとハーレーがドンッ。この家に迎えられたゲストにとっては、辞去する際の景色のほうがドラマティックだ。それを演出するにも、ら旋状の階段がベストだ。ゲストだけではなく、Tさん本人もきっと、毎日この「絵」を目にし、自らのモチベーションを高めてから出勤するに違いない。
近い将来、ガレージやリビングルームがどのように変化していくのか。子供たちにそれぞれの部屋が必要になった頃、もう一度訪れてみたい。そう思わせる住宅であった。
文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi
構成・石井 隆 editorial / ISHII Takashi
玄関を入ると右側にガレージ、左側に2階へと続く階段が姿を現す。ガレージ側全面を窓としているため、閉鎖感は一切ない
階段の位置を境にして、奥は子供たちのためのスペースとなっている。将来的にはリビングとは壁で仕切って子供部屋を作る予定だ
天窓から差し込む自然光と、踏み板と支柱に使われた木の素材感によって、ら旋状の階段も温かみのある雰囲気に仕上がっている
金森の家
建築家:中村高淑
中村高淑建築設計事務所
tel.045-978-4335
http://www.unit-h.com
所在地:東京都町田市
主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦、子供2人
構造:木造、一部鉄骨造 規模:2階建
敷地面積:124.35㎡ 延床面積:122.56㎡
設計・監理:中村高淑、簗井理美子/中村高淑建築設計事務所
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