小さな車と叶える、たくさんの幸せがある家【EDGE HOUSE】
2020/01/27
▲ランチア デルタにミニ、フィアット パンダと、いずれも全長4mを切る車がある家。オーナーの愛する小さな車たちが収まる家は、毎日が楽しくなる工夫に溢れていた家のどこにいても、愛車と家族の気配が感じられる
以前の愛車、ロータス エリーゼを手放したとき、Sさんがたまたま目にした2011年1月号の『IMPORT カーセンサー』。その表紙を飾っていた車が現在の愛車、ランチア デルタだ。
表紙を見て一目惚れしたSさん。すぐに「撮影協力」と記載されていた販売店に連絡したという。Sさんはこの他にクラシックミニと初代フィアット パンダを所有する。
「小さい車が好きなんです。夫婦2人だから、ミニバンのような大きな車はこの先もいらないし……」
その2年後、この3台を収められる家を建てることにした。依頼を受けたのは建築家の関本竜太さん。
「Sさんからは1台だけはビルトインガレージにしたい。そこに収まる愛車をどこからも眺めたいと要望されました」
そもそもガレージは居住部分より天井が低くてすむからスキップフロアが作りやすい、施主のSさんも各部屋の天井を低くしたいという、これに中庭を加えたら……と、瞬く間にすべてが解けていったという。
小さな家に必要な要素を巧妙に配置していった関本さん。まるで小型車の設計のようだった。だからこの家を「フェリチータ ピッコロ=小さな幸せ」の頭文字を取って「FP」と名付けた。
対して施主のSさんは、
「心外です(笑)。この家の幸せは決して小さくなんてないから」
どこにいても愛車や家族の気配が感じられる。四季折々、いくつもの景観が毎日を飾る。収まる車の大きさからは計り知れないほど、毎日の楽しみに溢れた家なのだから。
施主の希望:
大きなLDKは必要ないけどスキップフロアは実現したい
▲左ガレージからわずかに顔を覗かせる愛車はランチア デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネⅡ コレッツィオーネ。インテグラーレの最終限定モデル3台すべて収まるビルトインガレージが理想でしたが、そうなると1階がすべてガレージになってしまうので、1台だけにしました。
例えば30畳とか大きなLDKはあまり好きじゃない。その点、大きな空間が段差で緩やかに仕切られているスキップフロアは気に入っています。
お風呂から中庭を眺められますが、明るいと中庭の向こう側にある窓ガラスに空がくっきりと映り込むなど、時間によって景色が変わるのもお気に入りです。
建築家のこだわり:
「天井は低く」という言葉に我が意を得たり! と思った
▲「各部屋の天井は低い方がいい」と施主のSさん。建物の高さは地表から約5.6mと、周囲の家よりも圧倒的に低い。ガレージ出入口の高さは約1.7m。「これ以上低いとさすがに出入りしにくい(笑)」とSさん。それでも頭を少し下げて入る背の低い住宅は建築家として理想のプロポーションなのですが、それを許してくれる施主はなかなかいません。
ところがSさんは「とことん天井は低くしてくれ」と。我が意を得たりとばかりに(笑)嬉しくなりました。
内装に使ったシナベニアなど、比較的安価な素材は下手に施工すると安っぽく見えます。そのため施工の精度が重要。
幸い腕の良い職人がその意図をよく理解してくれ、㎜単位までこだわって建てることができました。
▲ビルトインガレージの天井部には収納もある。実は取材の翌月にE30型M3が納車され、現在の所有数は4台に。当面は駅近くに借りているタワー式駐車場に収めるが「ここにもギリ、入ります」
▲玄関脇には「廃番になると聞いて慌てて購入した」クラシック ミニと、初代フィアット パンダが止められている。ミニは雨が降るとタワー式駐車場に避難させるので、普段の足は主にパンダだそう
▲内側に開かれた中庭にはヒメシャラが植えられている
▲企業ロゴなどを制作するブランディング会社で社長兼エグゼクティブ クリエイティブ ディレクターを務めるSさん。勤務地は都内だが、ガレージ隣りに仕事部屋を用意
▲ビルトインガレージの上にあるダイニングから直接、愛車は見えないが、夜になると反対側の窓に反射して愛車の姿がハッキリと見えるそう
▲ダイニングから1階に通じる階段の手すりは亜鉛メッキ加工したスチール製
▲精緻な施工を求め、結果的に工期が8ヵ月と、このサイズの家としては異例の長さになった■主要用途:専用住宅
■構造:木造在来工法
■敷地面積:100.45㎡
■建築面積:48.02㎡
■延床面積:78.41㎡(ビルトガレージを含まず)
■設計・監理:リオタデザイン
■TEL:048-471-0260
※カーセンサーEDGE 2020年3月号(2020年1月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
【関連リンク】
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
“日本の誇り” 日産 R35 GT-Rは果たしてスーパーカーなのか?【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
’07 フェラーリ F430|空力とヘリテージが息づくV8ミッドシップ【名車への道】
’73 シトロエン DS|独自のデザインと乗り心地、そのすべてに“哲学”がある【名車への道】
フェラーリの維持費ってどれくらいかかるの? そんなリアルな疑問、専門店に聞いてきた!
~300万では選べない、1000万では高すぎる~ 600万円で探せる一度は乗っておくべきクルマ【カーセンサーEDGE 2025年11月号】
マセラティ MC12ストラダーレ最高額落札の盛り上がりの陰で、マクラーレンの“最終車両”コレクションがひっそりと販売されていた!?
エントリーモデルとして成功を収めたフェラーリの“V8フロントエンジン”の系譜とは【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
BMWのMとは違う“絶妙”な味を堪能できるオススメの「BMWアルピナ」モデル5選【2025年最新版】
~価格だけでは語れない、フェラーリの本質~ フェラーリは本当に高いのか?【カーセンサーEDGE 2025年10月号】
【試乗】新型 ランボルギーニ ウルスSE|普段使いはほぼモーター! スーパーカーの速さを備える800psのスーパーSUVはハンドリングも燃費も上々









