寛ぎのひとときを演出する愛車のショーケース【EDGE HOUSE】
2022/10/08
▲写真では表現しきれていないが、実際にはポルシェ 911の美しいボディラインが、暗闇からスッと浮き上がるように照明が配置されている
玄関のある道路側には窓がひとつもない家。そのため、外からは明るくて広いLDKやショーケースのようなガレージがあるなんて、とてもうかがい知ることはできない。黙して語らない、このガレージハウスの正面。その寡黙なデザインには、それなりの理由があった
ポルシェが美しく見える照明や窓の高さにこだわる
一般的に日が当たる家の南には大きな窓を配置するものだ。しかし、今回取り上げる家の南側には窓が一切設けられていない。正面となる南側は道路に面しており、ガレージとカーポートそして、その間を入った先に玄関がある。道路側に窓がないのは、施主のプライバシーを守れるから、ということは想像できるが、理由はそれだけではないという。
ガレージに収まるのは、ポルシェ 911とボクスター。ドアの開口部が大きい2ドアクーペを2台駐めても乗り降りがしやすいようにと、ガレージ幅は約6mも確保している。そしてガレージとリビングの間に備えた大きなガラス窓越しに、いつでもリビングから愛車を眺めることができる。
「だからといって、単に大きな窓を備えればいいというわけではないんです」とは、建築家の角 直弘さん。窓を大きくするほど、愛車以外の部分、ガレージ内部が細かく見えてしまう。
ガレージの壁や天井、シャッターの折り畳み線は、愛車を愛でる時のノイズになる。何ものにも邪魔されずに主役の愛車だけがスッと浮き上がる、そんな「ショーケース」であることが理想だと角さんは語る。
そのため窓の高さは、建築中のLDKに実際に立ち、そしてソファを置く位置に座って決めたという。さらにポルシェが白だったので、ガレージ内の壁やシャッターは白いボディが映えるよう黒を選んだ。
ガレージ幅が広いと、間に柱や壁を入れて支えたくなるが、それも排し、2台のポルシェのボディラインが美しく浮き上がるように、照明の位置を綿密に調整した。
▲吹抜けから光が燦々と降りそそぐLDK。構造上、どうしてもLDKに柱を入れる必要があったので、最も目立ちにくい位置に鉄柱が備えられた
▲2階にある施主の趣味部屋。奥に換気扇付きの塗装ブースが備わるなど、好きなプラモデルを存分に作ることができるスペースだ。逆側には飾り棚もある
▲壁や天井、シャッターも黒くして、白い愛車だけが浮き上がるように照明の位置が工夫されている。木造で約6mもの幅にもかかわらず、間に柱や壁がない愛車を愛でる場所となるLDKは、友人をたくさん招きたいという施主のもうひとつの要望を叶えた場所でもある。この家が建つ土地は、外に閉じられた南側を頂点に北へ向かって緩やかに下っている。
ガレージの奥にある約20畳のLDKは、北側を向くと周辺を見下ろすほどの高さがある。一方、ガレージ側の窓を絞ったこともあって、LDKに開放感が欲しかった。
そこで、天井はガレージのある南側の2階床よりも高く取っている。その南側と北側の高さのズレが気にならないよう、そして光を取り込めるように、南側と北側の緩衝帯には吹抜けのある階段を設けている。
▲鉄柱以外に支える柱のない、開放的な約20畳のLDK。高台の端に位置するので、北西の窓からは遠くの家の屋根まで見渡せる
▲LDK 側の天井が高いため、階段の踊り場はガレージ側の2階の高さに合わせ設けられ、そこから90度曲がって北側へと続いている
▲南側と北側をつなぐ吹抜け。2階の主寝室側に中庭が、北側にはテラスを設けることで、各個室や浴室に明るい日差しを届ける
▲2階の廊下。南側(ガレージ側)から北側を向いた時の何気ない階段3段分のズレが、毎日の暮らしのアクセントになったりもする柱のない広い2台分のガレージと約20畳のLDK。木造でこれだけの大きな空間が隣接すれば、本来は建物の構造が弱くなる。だからこそ、南側の建物には窓の代わりに耐力壁を忍ばせている。
南側が閉じているもうひとつの理由は、この構造上の問題を解決するためでもあった。窓がない南側は、特に黒いシャッターを閉めると凜として見える。角さんはそれを『寡黙な表情』と表現。
黙して語らない正面は、華やかなショーケースとにぎやかなLDKを人知れず支えている。
▲現在右手のガレージにはポルシェ 911とボクスター、左手のカーポートには日常の足として、トヨタ C-HRとミニが収められている
▲道路からは窓が一切見えないため、ガレージのシャッターを閉めると通行人からの視線が遮断され、プライバシーを完全に守ることができる■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:303.7㎡
■建築面積:79.5㎡
■延床面積:132.9㎡
■設計:角 直弘(一級建築士事務所 設計組織DNA)
■TEL:075-354-5115
■プロデュース:ザウス
■TEL:0120-054-354(関東)/0120-360-354(関西)
※カーセンサーEDGE 2022年11月号(2022年9月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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