【国際福祉機器展2019】最新の福祉車両をレポート
カテゴリー: レース&イベント
タグ: トヨタ / 日産 / ホンダ / ダイハツ / 福祉車両 / ヴェルファイア / セレナ / ノア / アルファード / ヴォクシー / N-BOX / タント / イベントレポート / 自動車関連のイベント / ぴえいる / c!
2019/09/26
▲1974年(昭和49年)から毎年開催されている福祉機器の国際展示会「国際福祉機器展」。昨年は3日間で約12万人が来場した大きなイベントだ。今年はトヨタ・日産・ホンダ・ダイハツ・スズキの5社が福祉車両を展示新機能を携えた福祉車両を紹介
自動車メーカーが毎年福祉車両を展示している「国際福祉機器展」。46回目となる今年は9月25日(水)~27日(金)まで東京ビッグサイトで開催されている。
福祉車両はベース車がフルモデルチェンジしない限り、なかなか新しい機能や装備に切り替わらない。
しかし、ここ2~3年はベース車のフルモデルチェンジが相次いだこともあり、これまでにない機能を備えた福祉車両が登場している。
会場で見つけた、そんな新しい福祉車両を中心に早速紹介しよう。
足腰の弱った両親も1人で簡単に乗り降りできる
トヨタ アルファード/ヴェルファイア サイドリフトアップチルトシート仕様車
アルファード/ヴェルファイアには、2017年12月のマイナーチェンジで「サイドリフトアップチルトシート仕様車」が加わった。
この長い名前のシートは、従来の回転&昇降して足腰の弱い人の乗降を助けるシートと異なり、座面が斜めになって車外に出るのが特徴だ。
▲従来の回転&昇降シートと違い、車外へのシートの飛び出しがこれだけとのため、狭い場所でも乗り降りしやすい
▲このように、やや前傾体勢でお尻からシートに座る。あとは電動で車内に収まる。降りるときは前傾姿勢のため立ち上がりやすい座面が斜めになることで、足腰の弱っている人が楽にお尻から座ることができる(乗り降りに必ず介助が必要なほど症状の重い場合を除く)。
これなら高齢になり、杖をついていても、子供や孫たちと一緒にドライブに出かけやすいはずだ。
このサイドリフトアップチルトシートはトヨタ独自の技術で、ヴォクシー/ノア/エスクァイアにも採用されている。
主に高齢者の乗り合い乗車を目的にした福祉車両
トヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイア ウェルジョイン
2017年7月にマイナーチェンジしたヴォクシー/ノア/エスクァイアをベースに同年9月から販売されたのが「ウェルジョイン」だ。
主に公共交通が少ない地域での、高齢者の乗り合いによる移動を想定した福祉車両だ。
▲2列目を横幅の狭い専用シートにして、手すりを追加することで3列目シートへの移動を楽にしている。介助は不要だが足腰の弱い人が乗り降りしやすいよう、手すりも随所に備えられている
▲助手席が回転&昇降する助手席リフトアップシートも同時に備えることができる2列目シートには2名座れるので運転手も含め7人まで乗車可能。ただし2列目は横幅が狭いので、大人が長距離を座るのは難しい。
そのため主な用途が乗り合いで近所へ出かける場合になるが、子供が2列目に座るなら家族での利用も十分可能だ。
車いすの人も介助者にもうれしい、介助時間の短縮化
トヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイア ウェルキャブ車いす仕様車 タイプIII
上記ウェルジョインと同じく2017年9月に登場したのが、トヨタオリジナルの車いす「電動ウェルチェア」と「ワンタッチ固定装置」を組みあわせた福祉車両だ。車いすの着脱が介助者の足による操作だけで簡単にできるのが大きな特徴。
車いすの固定や脱着が簡単なので介助する時間の短縮につながる。時間の短縮は介助する側はもちろん、介助される車いすの人にもうれしい機能だ。
▲ワンタッチ固定装置は、車いす側にも独自の構造が必要になるため、使える車いすが電動ウェルチェアに限定される。ちなみに電動ウェルチェアは車メーカーならではの技術を用いた快適な乗り心地を提供してくれる
▲固定装置に車いすを押し込むと固定フックが自動で引っ掛かり、瞬時に固定する
▲電動スロープも用意されている。リモコンの「下」ボタンを押し続けるだけで、スロープが降り、同時に車体後部も下がる。収めるときは「上」を押せばスロープがしまわれ、車体後部も通常の高さに戻るオプションで用意されている、動作の速い電動スロープを備えれば、スロープの出し入れの時間も短縮できる。
障がいのある家族と一緒にアウトドアを楽しめる
日産 アドベンチャーログキャビン
日産が今回提案するのは、セレナをベースとした、いわばアウトドア仕様の福祉車両だ。身体だけでなく、なにがしかの障がいのある人は、健常者と一緒にアウトドアへ出かけるチャンスが少ないのが現状。
そこで家族で「どんなところへも気軽に車でお出かけしよう」をテーマに開発されたのがこの車というわけだ。
▲タイヤ&ホイールもアウトドアルックのタイプを使用。カラーリングもアウトドア風だ
▲3列目シートがなく、5名乗車となる。ベッドは分解してラゲージに収納できる車中泊はもちろん、キャンプやレジャー、ドライブ中の休憩にも使えるベッドキットを装備しているのが最大の特徴だ。販売は未定だが、反響次第で販売を検討しているそうだ。
日常使いがしやすかった旧型をさらに改良
ホンダ N-BOX スロープ仕様
旧型では、開発の企画段階から車いす仕様車を作ることを想定して開発されたN-BOX。特に車いすを載せないときはスロープを床に沿って畳めたのは当時としては珍しかった。
今でもたいていの車いす仕様車はリアゲートに沿って、つまり垂直にスロープをしまうが、これだとリアゲートを開けて荷物を入れようとするとスロープが邪魔になる。それを解決したのが旧型N-BOXの車いす仕様車だった。
2017年9月にフルモデルチェンジしたN-BOXに、福祉車両が登場したのは2018年4月。旧型の使いやすさを、さらに進化させている。
▲新型のN-BOXスロープ仕様。電動ウインチやスロープを折り畳める旧型の良さはそのままに、使い勝手をさらに向上させた
▲旧型N BOXの車いす仕様車。スロープが斜めに収まるため、その上にボードを備えて床を平行にする手間が必要だった
▲新型N-BOXはスロープがこのように平行に収まるので、ボードをいちいち備える必要がなくなった
▲旧型では後席を畳むにはヘッドレストを抜く必要があったが、新型ではそのまま畳めるようになったその他、車いすの人用のグリップの角度調整が簡単になるなど細かい改良が重ねられている。
骨格の強度を高めることで備えられたグリップとリフト
ダイハツ タント ウエルカムターンシート
2019年7月にフルモデルチェンジしたタント。福祉車両チームがイチから開発に加わった、今までにない車だ。
最初から福祉車両を想定しながら開発したため、福祉用装備を備える部分には最初から骨格の強度を高めることができた。
▲福祉車両はベース車の完成車を、ある意味「改造」するのが普通。ところがタントでは最初から福祉車両を、ベース車と平行して開発。製造もベース車同様に工場でライン生産される
▲助手席から降りる際にちょうどいい位置にある「ラクスマグリップ」。これを備えるためにAピラーのこの部分の骨格を太くしている。またシートはあえて30度しか回転しないが、これはモニタリング調査から導き出した角度。
実際に座って試してみると、確かにこの角度は降りやすい。むしろこれより回転すると、グリップを含め、車のあらゆる場所をつかみにくくなるため、立ち上がったり座る際に足腰に負担がかかる。
ちなみにウエルカムターンシートには標準で、他のほぼ全車もディーラーで取り付けられるオプションとして用意されている。
さらに、車いすを収納する「パワークレーン」が天井に標準で備わる。これまでは車いすを載せるこの手のアームを備える場合、ラゲージの床が定番だったが、それだとラゲージの床面積が減る。しかし、パワークレーンでは天井からアームをつるすことでラゲージを使いやすくした。
▲天井にある装置からベルトを引き出し、車いすに掛け、スイッチを押せば電動でつり上げてくれる。30kgまで対応。天井のこの部分の骨格の強度を高めたことで実現できた動作などの改良で昇降時間を最大約2割減らした
ダイハツ タント ウエルカムシートリフト
タントの特徴であるBピラーのない大開口部から、回転&昇降シートを使って乗り降りできる福祉車両。2つのモーターを使って回転&昇降した旧型に対し、新型では3つのモーターを使うことで、より効率的な回転&昇降の動作を実現。昇降時間を最大約2割短くした。
▲回転や昇降スピード自体は従来どおりのため、座った人が怖がることはない。シートの動き方だけで時間を短縮した開口部が広いため、車いすからの移乗もしやすく、介助する人も動きやすい。乗降時間が短縮されたことで、さらに使いやすくなっている。
スロープを床に格納できるので、日常で使いやすくなった
ダイハツ タント スローパー
スロープと電動スロープを使って車いすの人を乗せる福祉車両。ホンダのN-BOX同様、タントも新型からスロープを床に格納できるようになった。
▲スロープの折り畳み方の改良の他、車いすを固定するベルトの取り扱い方法をわかりやすくするなど、旧型に対して使い勝手の向上が図られた車いすを乗せないときはラゲージに荷物を載せやすいので、他のタント同様、子供の送り迎えや買い物などに使いやすい。上記のウエルカムシートリフトと同じく、介助と日常使いを兼用できる福祉車両だ。
他にもたくさんの福祉車両が展示されている国際福祉機器展。複数の福祉車両を試せる機会はそう多くはないので、ぜひ会場に足を運んで見てほ「しい。

ライター
ぴえいる
『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。
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