世界初のターボに驚愕! テリー伊藤がBMW 2002ターボを見て当時の車好きの姿を思い出す
2022/07/30
▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!ビンテージカー界のアイドル、BMW 2002ターボ!
今回は、「ヴィンテージ湘南」で出合ったBMW 2002ターボについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
今回は久しぶりにビンテージカーのアイドルを紹介します。1970年代に世界初のターボ搭載モデルとして世界中を驚かせた、通称“マルニターボ”こと、2002ターボです。
もしこれに乗っていたら、旧車好きはもちろんそこまで車に詳しくない人からも「すごいのに乗っていますね」と言ってもらえるでしょうし、数年後には間違いなく高く売れますよ。
マルニターボを初めて見たとき、フロントバンパーを外してスポイラーが付けられた姿に驚きました。
▲標準仕様の2002とは明らかに違う、異質なスタイル
▲2002ターボはオイルショックと重なり、わずか1年間しか製造されませんでしたそしてスポイラーに逆さ文字で書かれた“turbo”の文字。これって前を走る車を威圧するためのデザインじゃないですか。すごい発想です。
しかも当時は誰もターボなんて知りません。車好きが「何だよ、ターボって」とざわついたのをよく覚えています。
▲2002 tiiから30%の出力アップを果たしたターボエンジンでも本当のことを言うと、僕はマルニターボよりもノンターボの2002 tiiに憧れていました。見た目は普通のお父さんが乗っていそうなシンプルなデザインなのにすごくスポーティに走る。まさに「羊の皮を被った狼」。
当時の僕らは1968年に登場したハコスカのGTで「羊の皮を被った狼」という言葉を知ったばかりでした。
スカイラインはサニーやコロナと変わらない、いわゆるファミリーセダンです。それなのにGTというグレードになると途端にフロントノーズが長くなり、そこに直6エンジンを押し込んでしまう。その不気味さに僕らは驚愕しました。
▲マルニターボは羊の皮を脱ぎ捨てたモデル。これが登場した時はみんな驚きましたよマルニのtiiも見た目は普通の02シリーズとほとんど変わらないのに、ETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)で培った技術が投入されている。僕はおとなしい佇まいと性能のギャップに興奮したのです。
きっと「羊の皮を被った狼」という言葉には、日本人の琴線に触れるものがあるのでしょうね。
テリー伊藤ならこう乗る!
▲真っ赤なメーターパネルが刺激的な、2002ターボのインテリアBMWは元々航空機のエンジンを製造していたメーカーです。当時の若者はその生い立ちからBMWに一目置いていました。しかもライバルであるメルセデス・ベンツよりも走りに徹しているイメージを持っていました。
まだインターネットがない時代に僕らはどうやって情報を得ていたかというと、オートスポーツをはじめとするレース雑誌でした。
BMWがETCで勝ったぞ! ミニがモンテカルロで優勝した! 普段の暮らしにはまったく役に立たない情報ですが、僕らは海外の自動車メーカーの活躍を雑誌で読みながら、自分がハンドルを握っている姿を想像していました。
▲今回取材した2002ターボは4速MT仕様でしたもうひとつ、僕らが胸をときめかせていたもの。それはゼロヨンのタイムです。
当時は「あのモデルがゼロヨンで18秒を切った」というようなことが大きな話題になりました。
ゼロヨンのタイムというのは、西部劇で活躍する早撃ちガンマンに通じるものがありました。「18秒を切ったのか! すごいな」。若者からおじさんまで、日本中の車好きがその数字がどれくらいのスピードなのかを妄想していたのです。
マルニターボも、車好きの想像力を掻き立てるモデルだったと思います。そしてこの後にポルシェが911ターボを世に送り出しました。僕らはあの大きなリアウイングを見て、「ターボというのはどれだけすごいんだ!?」と盛り上がったのです。
▲バケットタイプのスポーツシートを採用今回出合ったマルニターボでひとつだけ残念だったのは、シートポジションがしっくりこなかったこと。お尻が深く沈み込んで膝が立ってしまうのですぐに疲れてしまいそうです。
もし僕がマルニターボを手に入れたら、シートは普通のマルニのものに交換します。ファンからものすごく怒られそうですが、変な仕様が1台くらいあってもいいじゃないですか。
もちろん手放すときに元に戻せるようオリジナルのシートは残しておきますよ。
▲座るとお尻がすっぽりと落ちてしまい運転しづらそう。このシートは交換したいそしてかつてマルニに憧れていた同世代の人を隣に乗せて青春時代のことを語り合います。
「あの頃はターボという言葉を聞くだけでドキドキしたよな」
「ゼロヨンのタイムで夢中になった頃が懐かしいな」
最初はそんな話をしていても、だんだんと脱線して「僕はあの車で女の子をナンパして海に行ったぞ」というような話になるに違いありません。
でもいいじゃないですか。きっと会話が弾みますよ。
▲僕らのアイドルだったモデルについて、当時を知っている人と語り合いたいねBMW 2002ターボ
1961年のフランクフルトショーで発表された1500シリーズ、そして1963年に登場した1800シリーズ。ノイエ・クラッセ(ニュー・クラス)と呼ばれるこれらのシリーズの2ドア版として開発されたのが02シリーズだ。1973年に発表された2002ターボは1990ccの水冷直4 SOHCエンジンに量産車世界初となるKKK社製のターボを搭載したモデル。最高出力は170hp/5800rpm、最大トルクは24.5kg-mを発揮。最高速度は211km/hに達した。ベースとなった2002には鉄バンパーが付いているが2002ターボはバンパーを廃し、大型のオーバーフェンダーやフロントエアダムなどが装着されている。

演出家
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。現在は演出業のほか、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。テリーさんの半生を綴った「出禁の男 テリー伊藤伝」(イーストプレス)が発売中。TOKYO MXでテリーさんと土屋圭市さんが車のあれこれを語る「テリー土屋の車の話」(毎週月曜26:35~)が放送中。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。
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