絶滅危惧車の4代目Sクラス S600。12気筒エンジンの走りは圧巻だ!
2019/09/29

贅が尽くされたかつての高根の花も、今では身近な存在に
中古車の醍醐味のひとつは、かつて高根の花だったものが、時間の経過とともに“身近”な存在になっていることだと思う。
そんな中、原稿執筆時点(2019年9月24日)においてメルセデス・ベンツ Sクラス S600(旧々型・4代目)のカーセンサーnet掲載台数が、たった3台になっていることに気づいた。
しかも、驚くほど安くなっている。
旧々型Sクラスは1998年にデビューし、S600は2000年に追加されたメルセデス・ベンツの最上級モデルだった。
至るところに本革が奢られ、天井にはアルカンターラ、ウッドシフト、ウッドステアリング、リアシート用のピクニックテーブル、4席に電動パワーシート/シートヒーター&クーラー……と贅が尽くされていた。
また、前方車両との距離を維持しながら走行できる、ディストロニック・コントロールと呼ばれるクルーズコントロールは画期的だった。
もちろん、世界で初めて採用された機構だったし、自動運転への未来を予感させるものだった。

足回りにはアクティブ・ボディ・コントロールと呼ばれる、油圧式可変サスペンションが奢られた。どんな路面でもフラットライドで、とにかくふんわりと快適。
登場時は排気量5785㏄のV12気筒エンジンを搭載し、最高出力367ps/最大トルク54.1kg-mをたたき出していた。
数値はすごいが、圧倒的なゆとりこそ感じさせながらも、走りは「リムジン」を予感させるような柔らかな雰囲気が重んじられていた。
2002年にはマイナーチェンジが施され、排気量5513㏄のV12気筒エンジンにツインターボが装着されることになった。
最高出力は、スーパーカーも驚くような最高出力500ps/最大トルク81.6 kg-mとなった。
ツインターボ化されたS600は、前期型とはまったく性格が異なるので面白い。
ちなみに0→100km/h加速はフェラーリ575並みの4.5秒!
前期型はどこまでもふんわりした雰囲気だったのに対し、後期型は巨漢ながら異様なまでにグイグイと曲がっていった。
前期型を「リムジン」と評するなら、後期型は「スポーツカー」だった。

もうこんな大排気量モデルは出てこないかも……
前期型の新車時価格は1690万円、後期型の新車時価格は1580万円だった。
そんな車が……今となっては100万円以下から狙えてしまう現状に驚かされる。そして、最も高い物件でも100万円後半だ。
もちろん、メンテナンスフリーとはいかないし、大排気量ゆえのガソリン代、税金なども高額。
同じSクラスでも、最上級モデルで12気筒エンジンならではの走りは別格だ。
大排気量エンジン搭載モデルの宿命ともいえるが、新車時はお金持ちが維持費を気にせず手を出すが、中古車となると堅実な人が多いのか敬遠されがち。
中古車販売店によっては低価格で早く手放そうとするところと、じっくり上客からのアプローチを待つところと分かれる。
よって、相場らしきものは存在しないことが面白くもある。
現在、12気筒エンジンを搭載する高級車メーカー(スーパーカーを除く)は、BMWとメルセデス・ベンツのみとなっている。
高効率エンジンの登場、時代のニーズ、売れ行き、と様々な要因があるだろうが、絶滅の危機に瀕しているのは明らかだ。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!

▼検索条件
メルセデス・ベンツ Sクラス(4代目)×S600L/S600ロング×全国
自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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