巨匠 ジウジアーロがデザインした中古で買える輸入車を5モデル選んでみた
2025/06/06

現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ
4月11~13日にかけて幕張メッセで開催された「オートモビルカウンシル2025」はカーデザイン界の巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが来場し、トークショーを行ったことで大きな話題となりました。
ジョルジェット・ジウジアーロは、1938年にイタリアで生まれた工業デザイナー。17歳でフィアットのデザインセンターに入社して以来、様々な企業および自らが設立した「イタルデザイン」で自動車の傑作デザインを連発。そして車だけでなく鉄道車両やカメラ、バスケットボール、パスタ等々においても名作デザインを発案し続けたことで、伝説の工業デザイナーとなりました。彼のことを「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称したとしても、決して過言ではないでしょう。
そんなジウジアーロがデザインした車は、中古車マーケットを通じて普通に買うことができます。
とはいえもちろん、彼が1960年代あたりにデザインした車はもはや普通には流通していなかったり、流通していたとしても、希少な絶版名車としてかなりの高額で取引されています。

しかし、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」の筆によって誕生した傑作デザインを堪能することは可能です。この記事では、そんな「今でも普通に買えるジウジーアロデザインの輸入車」5モデルをご紹介します。
ジウジアーロってどんな人?
ジョルジェット・ジウジアーロは1938年、北イタリアの小さな村の芸術家一家に生まれました。14歳で画家を志して名門美術高校に進学しましたが、この時代にたまたま書いた「フィアット 500トポリーノ」のイラストが、まさにその車の設計者の目にとまり、17歳でフィアットのデザインセンターに入社。
そして21歳のときに名門カロッツェリア「ベルトーネ」のチーフスタイリストとなり、アルファ ロメオ ジュリアGTなどの傑作を担当。27歳になると「カロッツェリア・ギア」にヘッドハントされ、そこで初代マセラティ ギブリや、いすゞ 117クーペなどの傑作を残すことになります。
そして諸事情あってカロッツェリア・ギアを退職した1968年2月に誕生したのが、自ら興した「イタルデザイン」です。
既存の自動車メーカーに代わってデザインワークからエンジニアリングまで行う能力を持っていたジウジアーロのイタルデザイン社は、初代フォルクスワーゲン ゴルフや初代フィアット パンダなどの歴史的傑作といえる小型車のデザインを連発。そして初代ロータス エスプリやBMW M1などのスーパースポーツの世界でも、多数の名作を生み出しました。


1981年には自動車以外の工業製品をデザインする「ジウジアーロデザイン」を設立。ニコンの様々なカメラやブリヂストンの自転車、イタリアの標準型電話機として長く使われた電話機「シーリオ」など、様々なプロダクトがジウジアーロデザイン社のデザイン室から誕生しています。
ジウジアーロは2015年7月にイタルデザインの株式をすべて売却しましたが、87歳となった今も、息子のファブリツィオ・ジウジアーロとともに“現役の工業デザイナー”として、様々な作品を発表し続けています。

中古で狙えるジウジアーロデザインな輸入車①
フィアット パンダ(初代)|中古車価格:総額100万~190万円
1980年に発売された小型車「初代フィアット パンダ」をデザインするにあたり、フィアット社からイタルデザインへの依頼は「先代に相当する『フィアット 126』の重量とコストを超えず、なおかつ革新的なコンセプトであること」という無茶なものでした。
しかしジウジアーロは「既存の小型セダンの縮小型ではなく、必要不可欠な内装をもった“素朴なコンテナ”」というコンセプトを発案し、無茶な要求に応えることに成功しました。

具体的には、曲面ではなく平面のガラスを採用し、内装にも内張りは与えず、代わりに外装色で塗装。そして内装のトリム類は必要最小限とし、ダッシュボードの棚もあえて露出させました。
また小さなボディの中に広大な空間を確保するため、初期型のシートは簡素な構造になりましたが、後席の背もたれをフルフラットやハンモック状に調節できるようにしたことで、汎用性と適応性は向上したのです。

2025年5月下旬現在、初代フィアット パンダの中古車価格は総額100万~190万円といったところで、約20台が流通しています。
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フィアット パンダ(初代)中古で狙えるジウジアーロデザインな輸入車②
アルファ ロメオ アルファブレラ(初代)|中古車価格:総額130万~210万円
アルファ ロメオ アルファブレラは、2002年のジュネーブショーでイタルデザインが発表して大きな話題となったコンセプトカー「アルファ ロメオ アルファブレラ コンセプト」が、ほぼそのままのデザインで市販された2+2クーペです。

この車の場合、独立した丸形3灯ヘッドランプと特徴的なラジエターグリル、中央部が台形に盛り上がっているボンネットなどのフロントセクションも印象的ですが、それ以上にグッとくるのがリアまわりのデザインでしょう。
ボディ形状的にはクーペなのですが、フォルムとしてはハッチバックに近いバランスを採用し、得も言われぬ微妙な曲面とV字を描くリアウインドウを組み合わせたリアセクションの造形は、「さすがはジウジアーロ先生……!」と唸るほかない出来栄え。個人的な話で恐縮ですが、筆者はブレラのお尻を見ているだけでもごはん3杯はイケます。

そんなアルファ ロメオ アルファブレラの中古車流通量は約15台と少なめですが、総額130万~210万円付近のゾーンにて、2.2L直4直噴ターボまたは3.2L V6エンジン搭載グレードを見つけることが可能です。
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アルファ ロメオ アルファブレラ(初代)中古で狙えるジウジアーロデザインな輸入車③
アルファ ロメオ アルファ159(初代)|中古車価格:総額50万~200万円
前掲のアルファ ロメオ ブレラとほぼ同時に発売となったのが、アルファ ロメオ アルファ156の後継モデルとして2006年2月に登場した中型セダン「アルファ ロメオ アルファ159」。
こちらも、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが主なデザインを担当した1台です。

ヒップラインがあまりにも印象的なブレラと比べると、セダンである159は若干没個性にも思えるかもしれません。しかしボディ全体のウエッジシェイプと、セダンにしてはロングノーズ&ショートデッキなフォルムによって“前進感”が強調されており、フロントフェンダーの膨らみと、豊かな全幅を生かしたボディ後部の絞り込みによる“踏ん張り感”によってダイナミックなスポーツ性も表現されています。

中古車の流通台数はブレラよりも豊富な約40台で、価格も総額50万~200万円という手頃な水準。デザイン的に「ひと味違う」と感じられるセダンを現実的な予算で入手したい場合には、悪くない選択肢といえるでしょう。
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アルファ ロメオ アルファ159(初代)中古で狙えるジウジアーロデザインな輸入車④
フィアット プント(初代)|中古車価格:総額70万~120万円
初代フィアット プントは、1993年9月のフランクフルトモーターショーでデビューしたコンパクトカー。本国で用意されたハッチバックボディは3ドアおよび5ドアで、エンジンはガソリンが1.1Lガソリンから1.7Lディーゼルまで計5種類が用意されました。


日本への輸入が始まったのは1997年3月で、導入されたのは5ドアボディに1.2Lガソリンエンジンと富士重工製CVTと組み合わせた「セレクタ」と、アバルトのエアロパーツが装着された日本専用モデル「スポルティング アバルト」。スポルティング アバルトのトランスミッションはCVTではなく5MTです。
こちらのデザインを担当したのもジウジアーロ率いるイタルデザインで、初期段階のアイデアでは市販バージョンよりも背が高い「ワンボックスと2ボックスの中間的スタイル」だったようですが、いずれにせよ、コンパクトなボディの中に思いのほか広い社内空間を実現させているあたりに“ジウジアーロ魂”を感じます。
現在、初代フィアット プントの中古車流通量はきわめて少なくなってしまいましたが、それでも2025年5月下旬現在、2台のスポルティング アバルトがいちおう流通中です。
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フィアット プント(初代)中古で狙えるジウジアーロデザインな輸入車⑤
サーブ 9000(初代)|中古車価格:総額450万円
本国スウェーデンでは1984年に登場し、日本へは1990年から1998年まで正規輸入されたサーブのフラッグシップ「サーブ 9000」のデザインも、ジウジアーロが関わったものです。

サーブ 9000は、フィアットとランチア、アルファ ロメオ、サーブの4社によるアッパーミドルFFプラットフォーム共同開発計画「ティーポ4プロジェクト」から生まれた兄弟車のひとつ。
サーブ 9000以外の兄弟はフィアット クロマとランチア テーマ、そしてアルファ ロメオ 164です。このうちのアルファ ロメオ 164はピニンファリーナがデザインを担当しましたが、サーブ 9000を含む3車はジウジアーロのイタルデザインが担当しました。

とはいえ2025年5月下旬現在、サーブ 9000の中古車は「きわめて希少」という状況になってしまっているのですが、それでもコレクターズアイテム的なコンディションの1台が、いちおう流通しています。かなりのレア感も堪能できるということで、サーブとジウジアーロの双方に興味がある人は、ぜひチェックしてみてください。
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サーブ 9000(初代)
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。
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