GT-R▲2007年から世界で販売されてきたR35型GT-R。累計生産台数は約4万8000台で、その37%(約1万8000台)が日本で販売された

大人気の中古車もついに1年弱で40万円以上ダウン!

約5年間の沈黙を経て、2007年12月に復活した「GT-R」の名前。それまでのスカイラインという“サブネーム”を捨て、「究極のドライビングプレジャーを追求した21世紀のスポーツカー」として誕生した。

それから約18年。ついに2025年8月26日に最後の1台がラインオフした。もう中古車でしか手に入らなくなった今、どのGT-Rを中古車で探せばいいのか? 早速検証していこう。
 

GT-R

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日産 GT-R(R35型)
 

モデル概要:日本を代表するスポーツカー

日産を、いや日本を代表するスポーツカー、R35型GT-R。選ばれた匠のみが組み立てる3.8LのV型6気筒ツインターボエンジンを搭載し、2007年12月の日本デビュー時点のスペックで最高出力480ps/最大トルク588N・mを発揮した。そこで発生する駆動力を6速デュアルクラッチトランスミッション(2ペダルMT)を介して電子制御式4WDにより四輪に伝える。

足回りにはビルシュタインの電子制御式ショックアブソーバーとブレンボ製ブレーキを備え、日常からサーキット走行まで、あらゆる路面で高い安定性を発揮。2008年4月にはニュルブルクリンク北コースで量産車世界最速のラップタイムを記録した。こうした各方面での活躍は枚挙にいとまがない。

そんなR35型GT-Rは、約18年間という異例の長期間販売されてきたがゆえに年式によって見た目や性能が異なる。

R35型GT-Rの中古車を手に入れるなら、まずは主な変更履歴を確認していこう。
 

GT-R▲コンセプトは「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」
GT-R▲GT-R伝統の4つのリング型テールランプが採用された
GT-R▲走りながら車両のセットアップを変更できるセットアップスイッチが、運転姿勢で手が届くインパネ中央部に搭載された
GT-R▲デビュー時のシートにはホールド性が高く、かつロングツーリング時に膝から前を自由にしてリラックスできるシート形状が採用された
GT-R▲基本、乗車定員は4名。後席には身長160cmくらいまでなら無理なく乗れるだろう。トランクはゴルフバッグなら2セット積める
 

R35型GT-Rの主な改良歴

究極のドライビングプレジャーを追求するがゆえに、毎年のように改良が行われたGT-R。そのすべてを記載するだけで1冊の本ができそうだ。ここでは主な改良点を下記にまとめてみた。

また、基本的にはモデルイヤーごとに異なるが、さらに「前期/後期」と大きく分けてみた。カッコ内はそのモデルイヤーの販売期間を示している。

【前期】

2008年モデル(2007年12月~2008年11月)
・デビューモデル

2009年モデル(2008年12月~2009年11月)
・エンジンを改良。最高出力が480psから485psに

2010年モデル(2009年12月~2010年10月)
・新型カーナビゲーションの採用
・走行性能の向上、足回りの再チューニングなど

2011年モデル(2010年11月~2011年10月)
・内外装の変更。エクステリアの変更で空力特性が向上
・エンジンの改良、最高出力が485psから530psに
・走行性能の向上。ボディ剛性の向上や足回りの改良などが図られた
 

GT-R▲2011年モデルのエクステリア。バンパーとフロントグリルの開口部が拡大された

2012年モデル(2011年11月~2012年10月)
・エンジンの改良、最高出力が530psから550psに
・走行性能の向上、足回りの再チューニングなど

2013年モデル(2012年11月~2013年11月)
・エンジンの改良、レスポンスの向上
・走行性能の向上、足回りの再チューニングなど

2014年モデル(2013年12月~2014年3月)
・基本性能の向上。「大人が楽しめるGT-R」を掲げ、上質な乗り心地と優れた性能を追求。エンジンはそのままに、足回りやステアリング、ボディ剛性……と手が加えられた
・エクステリアの変更、LEDのヘッドライト&リアライトを採用
・「NISMO」グレード追加。レーシングテクノロジーに基づく圧倒的な速さを極めたGT-Rとして登場。エンジンスペックの最高出力600ps/最大トルク652N・mは最後まで変わらない
 

GT-R▲2014年モデルから追加された「NISMO」。カーボン製のフロントバンパーなど専用のエアロパッケージを備える
GT-R▲NISMOのリアにはカーボン製のリアスポイラーを採用
GT-R▲NISMOのアイデンティティであるレッドがあしらわれたインテリア。シートはレカロ製専用カーボンバックバケットシート

2015年モデル(2014年11月~2016年6月)
・走行性能の向上、足回りの再チューニングなど
・振動の低減、静粛性の向上

【後期】
2017年モデル(2016年7月~2017年10月)
・内外装の刷新。フロントグリルに日産のデザインシグネチャー(当時)であるVモーションを採用。インテリアではセンターディスプレイが7インチから8インチに拡大し、スイッチ類はより直感的に操作できるように配置が見直された
・基本性能の向上。ボディ剛性向上や、足回りの見直し、遮音性の向上が図られた
・エンジン改良。「NISMO」グレードの技術を基に最高出力を530psから570psに
 

GT-R▲新デザインのグリルは、開口部の拡大により冷却性能を向上させながらも、バンパーサイドの形状を最適化することで、従来の空気抵抗・ダウンフォースを維持
GT-R▲サイドシル前部が従来と比べて張り出した。またリアでは、新形状サイドアウトレットなど空気の流れを改善するデザインが採用された
GT-R▲オプションで熟練職人がインパネに貼り込むナッパレザーが設定された
GT-R▲NISMOの2017年モデル。新形状のフロントグリルやカーボン製フロントバンパーなどが採用された

2018年モデル(2017年11月~2019年5月)
・装備の強化、車両防盗システムを全グレードに標準装備。Apple CarPlayに全グレード対応

2020年モデル(2019年6月~2021年9月)
・エンジン改良。「NISMO」グレードに採用してきたターボ技術を採用し、加速時のレスポンスを向上
・トランスミッションの改良、Rモードでの加速感を向上
・ブレーキの改良
・「NISMO」グレードの改良。エンジンの冷却とダウンフォース性能向上し、軽量な専用カーボン製フロントフェンダーを装備。また、シートはホールド性を高めた新開発のレカロ製カーボンバックバケットシートに変更。その他、ブレーキの変更や空力性能の向上、エンジンなどの冷却効果の向上と、徹底的な軽量化が図られた
 

GT-R▲NISMOの2020年モデル。GT3レーシングカーで採用されている新型ターボチャージャーを採用して、加速性能を向上

2022年モデル(2021年10月~2023年3月)
・2種類の「Tスペック」と、「NISMO スペシャルエディション」の追加(下記参照)

2024年モデル(2023年4月~2024年5月)
・空力特性の向上。新型のフロントバンパーとリアバンパー、リアウイングに変更
・新車外騒音規制対応、新構造マフラーを新開発
・「NISMO」グレードの改良。空力特性の向上、足回りを再チューニング。前輪へより多くの駆動力配分が行えるフロントメカニカルLSDを採用
 

GT-R▲2024年モデル。タイヤの接地性やハンドリング性能も高めるため、空気抵抗を増やさずにダウンフォースを増加させる新デザインのフロントバンパーとリアバンパー、リアウイングなどが採用された
GT-R▲NISMOの2024年モデル。新デザインのリアウイングが高い位置にセットされるなど、空力性能が磨き込まれた
GT-R▲フロントメカニカルLSDの採用によるコーナリング性能の向上に伴い、新型の専用レカロ製カーボンバックバケットシートが備えられた

2025年モデル(2024年6月~2025年8月)
・新色の内装色を採用

以上が主な変遷だ。「究極のドライビングプレジャーを追求」してきただけに、最終モデルがR35型GT-Rの頂点と言えるかもしれないが、上記の変遷を参考に、好みや予算で「欲しいGT-R」を絞っていくようにしよう。
 

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日産 GT-R(R35型)
 

グレード構成:基本グレード以外にも特別仕様がたくさんある

イヤーモデルごとに違いのあるR35型GT-Rだが、グレードによる違いも無視できない。そこで歴代で設定されたグレードや特別仕様車を下記にまとめた。

【カタロググレード※一部特別仕様車を含む】
ベースグレード
ベーシックな仕様のグレード。

ピュアエディション
2011年モデルより従来のベースグレードがこの名称に。2012年モデルから設定。

ピュアエディション トラックパック
上記ピュアエディションのサーキット走行専用車。2012年モデルから設定。

ブラックエディション
専用レカロ製シートやバックモニターなどが標準装備となる、ブラックインテリアが基調の中核グレード。

プレミアムエディション
BOSEサウンドシステムや盗難防止装置(2018年モデルから全グレードに拡大設定)などを標準装備するラグジュアリーグレード。

スペックV
専用カーボンセラミックブレーキや専用サスペンション、レカロ製カーボンバケットシート、レイズ製アルミ鍛造ホイールが備わる。2009年モデル~2013年モデルに設定された。

エゴイスト
オーナーに合わせてセッティングされるサウンドシステムなど、世界で1台だけのGT-Rにすることができた。2011年モデル~2013年モデルに設定された。

NISMO
レースで蓄積されたノウハウをフィードバックしたスペシャルモデル。2014年モデルから設定された。
トラックエディション engineered by NISMO
専用拡幅フロントフェンダーや専用サスペンションなど、「NISMO」グレードの専用部品を備えたグレード。2015年モデルから設定された。
トラックエディション engineered by NISMO Tスペック
上記「トラックエディション engineered by NISMO」に専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リアスポイラー、専用カーボンルーフやカーボントラックリッドなどが追加された特別仕様車。2022年モデルから設定された。2025年モデルから下記「NISMOスペシャルエディション」と同じ高精度エンジン部品が追加採用されている。

プレミアムエディション Tスペック
ラグジュアリーグレードの「プレミアムエディション」に専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リアスポイラー、専用エンジンカバーなどが追加された特別仕様車。2022年モデルから設定された。2025年モデルから下記「NISMOスペシャルエディション」と同じ高精度エンジン部品が追加採用されている。

NISMO スペシャルエディション
エンジンに高精度部品を採用し、20インチの専用レイズ製アルミ鍛造ホイールや、専用カーボン製エンジンフードを備えた特別仕様車。2022年モデルから設定された。

【特別仕様車】
スペシャルエディション
2013年モデルをベースとした世界限定100台の特別仕様車。特別塗装色ミッドナイトオパールや専用鍛造アルミホイールなどを装備する。

45th アニバーサリー
GT-Rの初代モデル「スカイライン2000GT-R」誕生45周年を記念した特別仕様車。2001年に発売された「スカイラインGT-R M・Spec」(R34型)の特別塗装色「シリカブレス」を採用した。2015年モデルをベースに2015年2月より、45台限定で販売された。

50th アニバーサリー
GT-Rの初代モデル「スカイライン2000GT-R」誕生50周年を記念した特別仕様車。日本グランプリシリーズで活躍したGT-Rレーシングカーのエクステリアをモチーフとしたツートーンカラーの外観色の組み合わせが採用された。2019年モデルをベースに、2019年6月~2020年3月までの期間限定販売。

大坂なおみ選手 日産ブランドアンバサダー就任記念モデル
内外装のカラーに、プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手の着想を取り入れた記念モデル。2018年モデルをベースに2018年12月より、限定50台で販売された。
 

 

中古車状況:昨年の上昇傾向は一服したものの予断を許さない状況

異例のロングセラーとなったR35型GT-R。さすがにデビューから15年と「普通の市販車なら2回はフルモデルチェンジできる」くらい長くなると、販売終了の噂がたびたび聞かれるようになった。

さらに、デビュー時は777万~834.8万円だった新車本体価格は、2025年モデルでは1444.3万~3061.3万円にまで上がっている。当然中古車価格に影響を与え、そこに販売終了の噂をもとにした投機目的も重なったこともあり、2024年の中古車の平均支払総額は上昇。

今年に入っていったんは落ち着いたものの、3月に新規受注停止のニュースが流れると販売終了の噂が再燃。中古車平均支払総額はじわりと上がり、7月には1820.7万円となった。
 

BMW キューブのグラフ▲2024年8月~2025年7月までの中古車平均支払総額推移

一方で中古車流通量はというと、7月時点で392台。ここ2年近く流通量はほぼ横ばいだ。生産が終了していて、しかも次期型GT-Rが販売されるかどうか現状は不明なだけに、今後中古車が劇的に増える可能性は極めて低いだろう。

BMW キューブのグラフ▲2024年8月~2025年7月までの延べ掲載台数推移

それならば、流通量が豊富なうちに欲しいGT-Rを探すのは賢い考えではないだろうか。また、生産が終了したことで「ないものねだり」感が強まれば、中古車の平均支払総額が高まる可能性もある。

少なくとも、値落ちを待ち続けて、気がつけばなくなってしまったとなる前に、早めに欲しいGT-Rを探す方が賢明だ。

なお、カーセンサーnetに掲載されている物件の平均均走行距離は約1.9万kmだった。約18年前から販売されているモデルで、この平均走行距離の短さは異例と言えるだろう。

特に2022年モデルから設定された「トラックエディション engineered by NISMO Tスペック」「プレミアムエディション Tスペック」、「NISMOスペシャルエディション」の3グレードはほとんどが0.5万km未満で、8割以上が0.1万km未満だ。0.1万km未満の中古車の支払総額は約2400万円~6400万円。いずれも2022年モデルの新車時車両本体価格より高いプライスになっている。

また、NISMOも前期型の走行距離3万km未満で支払総額約1700万円からと、2014年のデビュー時の新車時車両本体価格1501万5000円より高い状況。

こうしたプレミアム価格の付くグレードもある中で、どんなGT-Rを選べばいいのか、早速考察していこう。

 

オススメの選び方①:安く狙うなら5万km超の2007年12月~2016年6月式 カタロググレード3本柱

とにかく安く手に入れたいなら、カタロググレードの「ピュアエディション」「ブラックエディション」「プレミアムエディション」で、前期型の走行距離5万km超えのものから中心に探そう。
 

GT-R▲写真は2011年モデル。前期モデルの中でも2011年モデルと2014年モデルは、改良ではなく「マイナーチェンジ」に位置づけられている

該当の3グレードは新車時こそ車両本体価格に差があったが、前期型の走行距離5万km超の中古車ではグレードよりも中古車の状態が重視されるため、グレードによる価格差はほとんどない。

社外品のエアロパーツや、前オーナーによるチューニングの有無など、各車でそれぞれ違いがあるが、「ピュアエディション」「ブラックエディション」「プレミアムエディション」いずれも5万km超で支払総額約750万円から探すことができる。
 

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日産 GT-R(初代) × 2007年12月~2016年6月 × 走行距離5万km以上 × ピュアエディション、ブラックエディション、プレミアムエディション
 

オススメの選び方②:コスパ重視なら5万km未満の2007年12月~2016年6月式 プレミアムエディション

一方で走行距離を5万km未満に絞ると価格差に出てくるが、その中でも比較的手頃な価格で狙いやすいのが「プレミアムエディション」だ。
 

GT-R▲他グレードと異なり、ラグジュアリー志向のプレミアムエディション。装備はモデルイヤーによって異なるが、写真は手縫いで仕上げられセミアニリン本革を用いたシートを前席に備える2013年モデル

5万km未満でプレミアムエディションなら支払総額約850万円から、ピュアエディションとブラックエディションは約900万円から見つけられる。

新車時の車両本体価格は、最も手頃なのがピュアエディションで、プレミアムエディションやブラックエディションはそれよりも高い(この2グレードはモデルイヤーによって高低が入れ替わる)。

それにも関わらず、ラグジュアリーグレードのプレミアムエディションの方が安いということは、それだけ値落ち率が高いということ。つまり、コストパフォーマンスが高いというわけだ。

ただし、後期型になると価格差はほとんどなくなるので、「コスパ重視」なら2007年12月~2016年6月式の「プレミアムエディション」ということになる。
 

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日産 GT-R(R35型) × 2007年12月~2016年6月 × 走行距離5万km未満 × プレミアムエディション
文/ぴえいる、写真/日産
※記事内の情報は2025年9月5日時点のものです。

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。先日、中古車のホンダeも加わった。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。