三菱 ディスティネーター(新型)▲インドネシアで発表されたデスティネーター。角張ったフォルムはパジェロの新型を期待させるが……

復活に期待せず中古車で4代目を狙うのが吉

三菱パジェロが生産終了してからはや6年。

ピックアップトラックのトライトンが日本に再導入されて堅調な販売を続けていたり、海外市場ではパジェロスポーツが人気だったりと、相変わらずSUVを主軸に据えている三菱だが、“パジェロ復活”については現状まだウワサの域を出ていない。

そうした中、2025年7月にインドネシアで「デスティネーター」なる新型車が初公開された。3列シート・7人乗りの大型SUVだ。これはもしかして次期型パジェロ? 日本導入もあるんではないの? と一瞬願ったが、その淡い期待は崩れ去ってしまった。

というのもボディサイズは同社アウトランダーと競合するし、SUVなのに二輪駆動しかない、ハイブリッドもない、とあくまでアセアン地域に向けられた仕様となっていて、どう見ても国内市場に適していないからだ。

本当ならパジェロの復活に期待したいところだが、今のところいつになるかはわからない。それなら最終型のパジェロ(4代目)に狙いをシフトし、中古車で手に入れるのはどうだろう? 今ならコンディションの良い物件も残っており、中古車価格も落ち着いている。むしろ本格SUV好きにとって狙い目の1台では?

この記事では改めてパジェロ(4代目)の魅力に注目し、現在の中古車状況やオススメの選び方を見ていきたい。
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲惜しまれつつ2019年に生産終了したパジェロ(4代目)。中古車としてはまだまだ旬な1台だ

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三菱 パジェロ(4代目)
 

モデル概要:今も世界で愛されるタフで快適なSUV

80年代後半から90年代に巻き起こった一大SUVブーム。その立役者となったのがパジェロだった。最終型は2006年10月に発売された4代目だ。

外観は3代目から大きくイメージチェンジし、大ヒットした2代目を連想させるエッジの効いたデザインとなった4代目。シャシーは3代目とほぼ共通で、フレームがボディにビルトインされたモノコック構造が採用された。
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲2代目で人気だった3ウェイ2トーンのボディカラーが4代目で復活した

4代目パジェロは、3列シートを備える5ドアロングの他に2列シートの3ドアショートもあるのが特色だ。

当時、かなり大きく感じたものだが、周りのSUVが大型化した現在ではミドルクラスとラージクラスの中間といったところだろう。具体的なサイズは以下になる。
 

  ロング ショート
ドア数 5ドア 3ドア
全長 4900mm 4385mm
全幅 1845~1875mm 1845~1875mm
全高 1875mm 1850mm
  ロング ショート
ドア数 5ドア 3ドア
全長 4900mm 4385mm
全幅 1845~1875mm 1845~1875mm
全高 1875mm 1850mm

四輪独立懸架のサスペンションはオンロードでもオフロードでもしなやかで、接地性に優れた作り。まさに猫足(「パジェロ」という車名は山猫の一種から命名)というべきだろう。4WDシステムも遊星歯車とビスカスカップリングを組み合わせ、前後不等配分とした凝った機構「スーパーセレクト4WDⅡ」が採用されている。

パワーユニットではデビュー当初に設定された3L V6ガソリン、3.8L V6ガソリンに加え、2008年10月には3.2L ディーゼルターボが追加された。3.8Lガソリンはショートとロングで、ディーゼルは2008年10月~2010年8月の前期型と、2010年9月以降の後期で出力が異なっている。

3L V6ガソリン
最高出力178ps/5250rpm、最大トルク26.6kg・m/4000rpm

3.8L V6ガソリン
ショート:最高出力249ps/6000rpm、最大トルク34.5kg・m/2750rpm
ロング:最高出力252ps/6000rpm、最大トルク34.5kg・m/2750rpm

3.2L ディーゼルターボ
前期型:最高出力170ps/3800rpm、最大トルク37.8kg・m/2000rpm
後期型:最高出力190ps/3500rpm、最大トルク45.0kg・m/2750rpm
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲「スーパーセレクト4WDⅡ」はオンロードでもオフロードでも万能なロック機構&副変速機付きフルタイム4WD

ショート、ロング合わせたバリエーションは実に豊富だった。パジェロに設定された主なグレードは以下のとおりだ。

VR(2007年10月~2008年9月)
デビュー翌年に追加されたショートのエントリーグレード。3Lガソリン。

VR-Ⅰ(2006年10月~2018年9月)
ショートのベーシックグレード。3Lガソリン。

VR-Ⅱ(2006年10月~2018年9月)
ショートの最上級グレード。3.8Lガソリン(~2012年9月)or 3.2Lディーゼルターボ(2008年10月~)。

ZR(2006年10月~2008年9月)
ロングのベーシックグレード。3Lガソリン。

GR(2007年10月~)
上級グレードと同様の外観をもつロングの中級グレード。3Lガソリン or 3.2Lディーゼルターボ(2008年10月~)。

ZR-S(2006年10月~2007年9月)
GRの前身となるロングの中級グレード。3Lガソリン。

エクシード
ロングの上級グレード。3Lガソリンor3.2Lディーゼルターボ(2008年10月~)。

エクシード-X(2006年10月~2009年11月)
ロングの上級グレード。3.8Lガソリン(~2012年9月)。

スーパーエクシード
ロング、ショートともに本革シートなどを装備する最上級グレード。3.8Lガソリン(~2012年9月) or 3.2Lディーゼルターボ(2008年10月~)。
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲本格四駆らしく、センタートンネルの存在感が大きいインテリア

約13年という長い期間にわたるモデルライフの中で、数多くのマイナーチェンジが行われた。主なものを以下に挙げる。

・2008年10月:新長期規制をクリアした3.2L直噴ディーゼルターボエンジンを設定。3L V6ガソリンエンジンのATを5速化(従来は4速)
・2010年9月:3.2L 直噴ディーゼルエンジンをポスト新長期規制に対応(クリーンディーゼル化)
・2011年10月:フロントグリルなどのデザインを変更
・2014年7月:フロントバンパー、フロントグリルのデザインを変更。吸遮音材を追加して静粛性を向上

ショートは生産終了の約1年前となる2018年7月に廃止。その後、2019年7月をもってロングも国内での販売を終了した。現在でも多くのファンから復活が望まれている1台だ。
 

 

中古車概況:平均支払総額も台数も大きな変動はなし

さて、パジェロ(4代目)の中古車市場は今、どうなっているのだろう?

まず中古車平均支払総額は、生産終了直後の価格水準からさほど大きく変わっておらず、現状210万~220万円で安定的に推移している。
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲2024年9月~2025年8月までの中古車支払総額推移

中古車延べ掲載台数も同様で、こちらもここ数年あまり大きな変動なく、200~300台を推移。潤沢というわけではないが、すでに廃版となったSUVとしてはまずまずの豊富さと言っていいだろう。
 

三菱 パジェロ(4代目) ▲2024年9月~2024年8月までの中古車延べ掲載台数推移

年式で見ると前期型がやや多め。生産終了直前のモデルはかなり少なめだが、それ以外はほぼ満遍なく分布している。年式や走行距離から考えた中古車価格は、おおむね妥当というところ。

流通量については生産終了からすでに6年の年月がたっているため、ここから大幅に増えることは期待できない。また、価格についても一定の需要があるだけに、急激にダウンする可能性は少なそうだ。

ただ、中古車はメディアやSNSでの登場をきっかけに突如として人気に火が付き、価格が高騰することも最近では少なくない。少しでもパジェロが気になっているのであれば、いつになるかわからない復活を待つより、今中古車で4代目を手に入れる方が賢いだろう。

 

オススメの狙い方①:価格重視なら3L ショートの「VR」「VR-Ⅰ」が狙い目

遊び専用の車として手頃な価格でパジェロ(4代目)を手に入れたいなら、ショートで3L V6エンジンを搭載する「VR」「VR-Ⅰ」がオススメ。かなりトガッたセレクトだが、それには理由がある。

個人的な意見として、パジェロは本来、ショートこそ面白い! と思う。ハンドリングのキビキビ感はロングと段違い。その違いは林道などのオフロードで如実に出る。

2列シート・3ドアである分、乗車定員は限られてしまうが、もともと大柄なボディなので4人までなら問題なし。後席への乗降性にさえ目をつぶれば、ファミリーカーとしても使えるだろう。

三菱 パジェロ(4代目) ▲ショートは対地障害角が大きく、オフロードでも遊びやすい

3L V6ガソリンエンジンはベーシックな特性だが、軽いショートなら必要十分というところ。

価格の一例を挙げると、2007年式・走行距離6万kmの「ショート VR-Ⅰ」で総額109.9万円。多くの物件はATだが、走るを楽しむなら5速MT仕様を選んでも面白いだろう。

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三菱パジェロ(4代目) × 3.0 ショート VR、3.0 ショート VR-Ⅰ系
 

オススメの狙い方②:良コンディションな個体を狙うなら消耗品劣化の少ない後期型

できるだけ新しめの年式、低走行距離のコンディションが良好な物件を狙いたい人もいるだろう。ただ、前述のとおり、パジェロ(4代目)の中古車は生産終了間近の2018~2019年式は極端に流通量が少ない。

しかし、外観の印象が大きく変わった2014年7月以降の後期型に条件を緩和して検索すると、70台弱がヒットする。これなら比較検討する余地があるだろう。

三菱 パジェロ(4代目) ▲2014年7月以降のモデルはバンパー形状が違うので見分けやすい

例えば、2016年式・走行距離4.8万kmの「ロング エクシード」の場合で総額289.9万円となっている。

後期型でも初度登録から10年前後経過しているので、消耗品……特にドライブシャフトブーツなどのゴム部品が破れていないかは入念にチェックしよう。下まわりにオフロードでヒットさせた痕跡がないかも要確認だ。コンディションの良いパジェロ(4代目)を狙うなら、生産終了から6年の今がラストチャンスかも。

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三菱 パジェロ(4代目) × 2014年7月~2019年10月
 

オススメの狙い方③:ディーゼル狙いならメンテナンス歴や乗車フィールをチェック

3.2L ディーゼルターボはパジェロ(4代目)の代表的なエンジン。ガソリンエンジンに遅れて追加され、さらに上級グレードに限られていたにもかかわらず、全流通量の半数以上がディーゼルだ。

実際、このディーゼルエンジンは現代の水準から見ても完成度が高い。エンジン音こそ大きめであるものの、ディーゼルらしい大トルクと吹け上がりの良さを両立したフィーリングは見事。特にクリーンディーゼル化された2010年9月以降のエンジンでは最大トルクが大幅にアップされ、刺激的な加速感が味わえるようになった。

三菱 パジェロ(4代目) ▲ロングの重いボディもディーゼルなら余裕たっぷり

価格の一例を挙げると、2013年式・走行距離4.2万kmの「ロング エクシード」で総額332.4万円と、当時の新車価格より80万円近く安い。

本格四駆だけに耐久性も折り紙付きのパジェロ(4代目)。年式が多少古くても、また走行距離が多少進んでいても、オイル交換などのメンテナンスがしっかり行われてきた物件なら心配ないだろう。一般的なクリーンディーゼル車のような尿素の追加が必要ない点もありがたい。

ただ、ディーゼル特有の高圧噴射やススを燃やす制御など複雑な機構が採り入れられており、使用状況や整備状況によって動力性能や燃費性能に個体差があるとも。できれば定期点検整備記録簿などでメンテナンス歴を確認した上で試乗し、フィーリングをチェックしたいところだ。

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三菱パジェロ(4代目) × ディーゼルエンジン搭載グレード
文/田端邦彦 写真/三菱自動車
※記事内の情報は2025年9月18日時点のものです。
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。