T-Roc ▲海の向こうのドイツで新型が発表されたフォルクスワーゲンのSUV「T-Roc」ですが、日本ではまだ現行型であり続ける初代T-Rocの中古車状況はどうなっているのでしょうか? 中古車の上手な狙い方も検討しつつ、チェックしてみることにしましょう!

次期型は大型化され、全車電動パワーユニットになるそうだが?

ちょうどいいサイズ感とスポーティな内外装デザイン、そしていかにもフォルクスワーゲンらしい上質な乗り味によって人気を博しているSUV、フォルクスワーゲン T-Roc。そんなT-Rocの新型モデルが8月27日、欧州で公開されました。

日本への導入時期などはまだ発表されていない新型フォルクスワーゲン T-Rocは、全長を12cm伸ばして大型化するとともに、パワーユニットは全車48Vマイルドハイブリッド機構付きになるようです。

それはそれで気になるニュースですが、この機会に、日本ではまだバリバリの現行モデルであるフォルクスワーゲン T-Rocについて、そのモデル概要をおさらいするとともに、直近の中古車状況と「オススメの狙い方」を検討してみることにしましょう。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代)
 

モデル概要:全長4.2m級のコンパクトながら上質なクロスオーバーSUV

初代フォルクスワーゲン T-Rocは、2020年7月に日本市場に導入されたクロスオーバーSUV。

ボディサイズは全長4240mm×全幅1825mm×全高1590mmという、同ブランドのSUVである「ティグアン」と「T-Cross」のちょうど中間に位置するニュアンスで、シャシーはフォルクスワーゲングループのモジュラープラットフォーム「MQB」を採用。

駆動方式は、一部のグレードを除いてFF(前輪駆動)が基本となります。
 

T-Roc▲こちらがフォルクスワーゲン T-Roc。写真はマイナーチェンジ前の初期モデル
T-Roc▲全長4240mm、ホイールベース2590mmというサイズは同門のハッチバック「ゴルフ」に近い
 

エクステリアデザイン的には「ワイド&ローでスポーティなイメージ」を強調する造形となっていますが、SUVとしての使い勝手に抜かりはありません。

シート高はフロントが572mmでリアが618mmと高めであるため、SUVらしい視界の良さは確保されており、セグメントトップをうたうラゲージスペースの容量も、5人乗車時で445L。具体的には、5人乗車時でも機内持ち込み可能なスーツケースが5個積める作りになっています。またリアシートの背もたれを倒せば、荷室は最大1290Lまで拡大可能です。

充実した運転支援装備もT-Rocの特徴で、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシストに加えて、後方死角検知機能や後退時警告・衝突軽減ブレーキ、さらに歩行者も検知可能なプリクラッシュブレーキシステムは全車に標準装備。衝突時や被追突時に自動的に10km/h以下にまで減速するポストコリジョンブレーキシステムや6エアバッグなど、二次被害を防止する装備も採用しています。
 

T-Roc▲TDIおよびTSI スタイル デザインパッケージの運転席まわり
T-Roc▲荷室は最大1290Lまで拡大可能。フロアレベルは2段階に調節できる
T-Roc▲写真のブラインドスポットディテクションなど、主だった予防安全装備は全車標準装備
 

当初用意されたパワーユニットは最高出力150ps/最大トルク340N・mの2L直4ディーゼルターボで、トランスミッションは7速のツインクラッチ式AT。デビュー翌年の2021年5月には、最高出力150ps/最大トルク250N・mの1.5L直4ガソリンターボエンジンが追加されました。

さらに2022年7月には内外装デザインを小変更するマイナーチェンジを実施。このとき、最高出力300psの強力な2L直4ガソリンターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせたハイパフォーマンスグレード「T-Roc R」も追加されています。

そして2025年1月には、最大トルクを340N・mから360N・mに増強させた2L直4ディーゼルターボにフルタイム4WDシステムを組み合わせた「TDI 4MOTION」が追加され、同年8月27日には、本国ドイツで2代目のT-Rocが世界初公開された――というのが、フォルクス・ワーゲン T-Rocの大まかなモデル概要となります。
 

 

中古車状況:中古車平均支払総額は一時上昇したが、現在は再び下降傾向に

2023年中はダウントレンドだった現行型フォルクスワーゲン T-Rocの中古車平均支払総額でしたが、2024年春頃から反転し、同年の秋にかけては上昇傾向が続いていました。

しかし、同年年末からは再びダウントレンドに転じ、中古車平均支払総額はいいあんばいのペースで下落。結果として直近の中古車平均支払総額は、一昨年の同時期とおおむね同水準の320.6万円となっています。
 

T-Roc▲2024年9月~2025年8月までの中古車平均支払総額推移
 

T-Rocの中古車平均支払総額が再び下がり始めた要因は、おそらくは流通量の増加です。

2024年後半にはなぜか流通量が減り続けていましたが、2025年3月頃からは再び流通量が増え始め、直近では1000台を超える「比較検討しやすい状況」に変わっています。
 

T-Roc▲2024年9月~2025年8月までの延べ掲載台数推移
 

そして前述した「320.6万円」というのはあくまでも平均であって、実際の市場では総額100万円台後半で狙える物件も登場してきているというのが、ここ最近のフォルクスワーゲン T-Rocの流通状況です。

以上を踏まえて次章以降、「オススメの狙い方」を考えていくことにしましょう。
 

 

中古車のオススメ①:価格重視でいくなら総額100万円台の前期型

2025年9月中旬現在、「総額100万円台で買えるフォルクスワーゲン T-Roc」は約20台が流通しています。

結論から申し上げると、これらの格安というかお手頃T-Rocは、内外装の状態と整備履歴に問題がないことさえ確認できたならば、ごく普通に購入してOKでしょう。
 

T-Roc▲最安値圏である「100万円台」の物件であっても、過剰に恐れる必要はない
 

総額100万円台で狙えるT-Rocは、2022年7月に行われたマイナーチェンジ以前のいわゆる前期型で、年式でいうと2020年式および2021年式

走行距離は、物件によりけりではあるものの「だいたい3万~5万kmぐらい」であり、グレード的には「事実上の標準グレード」といえるTDI スタイル デザインパッケージと、「ちょっといいグレード」に相当するTDI スポーツがほとんどです。
 

T-Roc▲こちらがTDI スタイル デザインパッケージ。5種類のツートンカラーの他、単色も3種類が用意された
T-Roc▲こちらはTDI スポーツ。スポーツシートと18インチホイールに加え、パークディスタンスコントロールとオプティカルパーキングシステムが標準装備となる
 

まず「前期型」であることには、特に大きな問題はありません。そりゃ後期型の方がちょっとカッコいいかもしれませんし、インテリアもちょっと刷新されているのですが、「さほど大きな違いはない」ともいえるレベルです。また2L直4ディーゼルターボエンジンの内容も、前期型と後期型で変更があったわけではありません。

そして2020~2021年式であり、走行3万~5万kmぐらいであるという点についても、特に問題はありません。なぜならば、世の中の道路を普通に走っている車のほとんどは「だいたいそんなモン」であり、新車から4~5年が経過したところで、普通の使い方と普通の点検整備をしている限り、現代の車は特に問題が発生することなど(基本的には)ないからです。

そしてグレード的にも、最廉価グレードであった「TDI スタイル」は装備内容がやや貧弱なためオススメしがたいのですが、TDI スタイル デザインパッケージまたはTDI スポーツであれば、装備は普通に充実しています。それゆえ、大きな不満を覚えることはほとんどないでしょう
 

T-Roc▲最高出力150ps/3500-4000rpm、最大トルク340N・m/1750-3000rpmと数値上はやや控えめだが、実際の力感には何ら不満を覚えない2L直4ディーゼルターボエンジン
 

とはいえ世の中には、車を非常に荒っぽく扱うユーザーも一部に存在しています。そういったユーザーが乗っていた総額100万円台のT-Rocは、可能な限り購入を避けるべきです。

前オーナーがその手の人だったかどうかを見極めるためには、主には「内装の状態」をチェックしてみてください。内装の各所にあまりにもキズや汚れが多かったり、車内が妙に臭かったりする総額100万円台のT-Rocは、購入を見送る方がいいかもしれません。

しかし、逆にいうと「そうではない100万円台のT-Roc」であれば、おそらくはしばらくの間、特に何の問題もなく快適に乗り続けられるでしょう。
 

T-Roc▲中古車の内装に小キズや使用感は付きものだが、それがあまりにも過剰な場合、前オーナーがかなり乱暴な扱い方をしていたと推測できる
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代) × 前期型 × 総額200万円未満
 

中古車のオススメ②:幅広い選択肢を求めるなら「総額200万円台前半」の予算感で

総額100万円台の中古車であっても基本的に大きな問題はないはずのフォルクスワーゲン T-Rocですが、とはいえまったく問題がないわけでもありません。

総額100万円台のT-Rocが抱える問題のひとつは、「流通量が少ない」ということ。T-Roc全体としての流通量は非常に豊富なのですが、100万円台で狙える物件の数は少ないため、コンディションやボディカラーなどを含む「自分好みの1台」がうまく見つかる可能性は、どうしたって低くなってしまうわけです。
 

T-Roc▲総額100万円台で流通しているT-Rocの数は多くはないため、好みのボディカラーなどにこだわって探すのはやや難しくなる
 

そして100万円台のT-Rocのもうひとつの問題は、「なんだかんだで“使用感”はある」ということです。

前章で申し上げたとおり、4~5年落ちあるいは走行3万~5万kmぐらいであっても、車としての機能には何ら問題ない場合がほとんどです。しかしそれぐらいの年数および距離を経ると、車というのはどうしても内外装に「使用感」みたいなものが漂ってくるものです。

そのため、もしも「使用感が薄い中古車」の中から「自分好みの1台」を選びたいと考えるのであれば、想定予算を総額200万円台前半に変更してみることです。

総額100万円台でも別にOKではあるのですが、総額200万~250万円ぐらいの予算感でフォルクスワーゲン T-Rocを探すようにすれば「走行1万km台の物件」も余裕で見つかりますし、もしもディーゼルターボエンジンよりもガソリンターボエンジンの方がお好きな場合は、1.5L直4ガソリンターボを搭載する「TSI スタイル デザインパッケージ」を選ぶこともできるようになります。
 

T-Roc▲経済性に優れるのはディーゼルターボだが、ガソリンターボならではの高回転域まで気持ちよく回る特性を重視したい場合は「TSI スタイル デザインパッケージ」も要チェック
 

総額100万円台のT-Rocを否定するわけでは決してないのですが、フォルクスワーゲン T-Rocという車の中古車における主戦場は客観的に見て総額200万~250万円(あるいは270万円ぐらい)であると考えていいでしょう。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代) × 総額200万~250万円以下
 

中古車のオススメ③:スポーティなSUVがお好みなら「R」または「Rライン」で

ここまでに挙げたTDI スタイル デザインパッケージとTDI スポーツ、そしてTSIスタイル デザインパッケージも素敵な選択肢ではあります。

ですが、「よりスペシャルなフォルクスワーゲン T-Rocが欲しい」と考える場合には、2022年7月のマイナーチェンジ時に登場した「R」に注目するべきでしょう。
 

T-Roc▲強力な2L直4ガソリンターボエンジンを搭載する「R」
 

T-Roc Rは、最高出力300psを発生する2L直4ガソリンターボに7速DCTを組み合わせた、4WD方式を採用するフラッグシップモデル。車体前後も専用デザインとなり、19インチアルミホイールとブルーにペイントされた大型ブレーキキャリパーや、後輪に4リンク式のスポーツサスペンションを採用。0~100km/h加速は4.9秒を誇るという、なかなかの1台です。

そんなT-Roc Rの中古車価格はさすがにお手頃ではなく、最安レベルでも総額380万円前後、ボリュームゾーンは総額420万円前後というプライス状況になっています。考え方次第ではありますが、「決して派手ではないのだが妙に存在感があって、本気でアクセルを踏めば妙に速いSUV」みたいなモノが大好きな人であれば、総額400万円級の予算を投じてみる価値は大いにあるでしょう。

とはいえ、もしも「さすがにそこまでは……」と思うのであれば、車名に「Rライン」と付く前期型TDI(2L直4ディーゼルターボ搭載グレード)を探してみるのが吉となるはずです。
 

T-Roc▲19インチホイールとアダプティブシャシーコントロール「DCC」を標準装備する「TDI Rライン」
 

こちらのパワーユニットは通常のTDI系と同一ですが、専用のスポーティな内外装と19インチの5ダブルスポークアルミホイール、そしてアダプティブシャシーコントロールであるDCC(ダンパーの減衰力や電動パワーステアリングの特性を瞬時にコントロールするサスペンションシステム)が標準装備。

TDI Rライン全体としての中古車価格は総額200万~460万円とかなり上下に幅広いのですが、総額250万円前後にて、好条件な1台が容易に見つかるはず。「スポーティ風味なSUV」を好む人は、ぜひこちらにも注目してみることをオススメします。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代) × R系

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代) × Rライン系

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代)
文/伊達軍曹 写真/フォルクス・ワーゲン
※記事内の情報は2025年9月17日時点のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。