T.U.C.GROUP SUV専門 戸田▲近頃、総額600万円前後で狙える輸入SUV群の中でもその存在感を増やしてきた初代ポルシェ マカン。ただそのグレードの選択肢は多い。そこで欧州製SUVを専門に取り扱う「T.U.C.GROUP SUV専門 戸田」でリアルな選択肢について聞いてみた

前期型で走りを取るか? 後期型の新しさを取るか?

2025年9月27日に発売されたカーセンサーEDGE 2025年11月号では、「600万円前後で探せる“人生一度は乗っておくべきクルマ”」を、様々な角度から紹介した。

そこにはアルピーヌ A110などのスポーツカーも登場したわけだが、昨今一番人気のカテゴリーといえば、なんといってもSUV。そして総額600万円前後で狙えそうな輸入SUVの中でも特に気になる存在は、「初代ポルシェ マカン」かもしれない。

初代マカンはご存じのとおり、2014年から2024年まで販売されたポルシェのコンパクトSUV。

まぁコンパクトといっても、あくまで欧米目線で区分けした場合の話であり、全長4680mm×全幅1925mm×全高1625mmという寸法は、日本では「ミドルサイズ」と呼ぶべき数字だろう。



ポルシェ マカン▲2014年11月に日本でもお披露目された初代マカンの前期型。3.6L V6ツインターボを搭載した高性能モデルのターボ(写真)や、スポーティグレードのGTSなどもラインナップされた

そしてミドルサイズゆえ、より大ぶりな同門のカイエンに存在感等においては太刀打ちできないが、日本の道路における使い勝手の良さについては、明らかにマカンの方が優れている。

とはいえ総額600万円前後という予算帯は、初代マカンの購入においては微妙な“迷い”を生じさせるゾーンだ。何について迷うかといえば、「後期型のベースグレードを選ぶか、それとも、前期型であることを承知でGTSまたはターボを選ぶべきか?」という点だ。
 

ポルシェ マカン▲2018年のマイナーチェンジで登場した後期型。LEDヘッドライトやテールライトなどエクステリアを変更。10.9インチタッチディスプレイやPCM(ポルシェコミュニケーションマネージメント)などが採用されている

初代マカンは2018年12月に最初のマイナーチェンジを行い、初期モデルと比べてエクステリアデザインの洗練度などをグッと向上させた。今から初代マカンを買うのであれば、正直、マイナーチェンジ後の後期型を選びたいところではある。

しかし実質2019年式以降の後期型を総額600万円以下で探そうとすると、どうしてもベースグレードが中心になってしまい、せいぜいマカンSも選べるというぐらいの話になる。だが「前期型でも良し」と割り切れるなら、ベースグレードとはやや次元が異なるパフォーマンスと質感が堪能可能なGTSまたはターボを選択できてしまうのだ。

これはどちらが正解ということも特にないのかもしれないが、やはり大いに迷ってしまう……ということで取材班は、欧州製SUVを専門に取り扱う「T.U.C. GROUP SUV専門 戸田」で店長を務める佐々木颯太さんに、販売店から見た「ポルシェ マカンのリアル」を尋ねてみることにした。
 

T.U.C. GROUP SUV専門 戸田▲スポーツカーの血統を受け継ぎつつ実用性を兼ね備えたポルシェらしいSUVの初代マカン。T.U.C.GROUP SUV専門 戸田の佐々木颯太さんにリアルな選択肢を聞いた

どちらを選んでも正解、という幸せな迷い

「総額500万~600万円ほどで検討する場合、選択肢は大きく分けて『前期型のターボないしGTSでいくか、それとも後期型のベースグレードにするか?』の2つになります。これは、おっしゃるとおり『どちらが正解』ということも特にはないため、あくまでもお好みで選んでいただければとは思います」

「すなわち、ポルシェらしい俊敏な走りを望むのであれば前期型GTSですし、高速クルージング性能を求めたいなら前期型ターボ。しかしそういった部分よりも、機械的およびデザイン的な“新しさ”を重視したいのであれば、後期型ベースグレードも素敵な選択肢となるでしょう」

そう語る佐々木店長。つまり「あなたはポルシェ マカンという車に“何”を求めるのか?」という話であると理解した。

とはいえ高性能・高出力なターボやGTSは足回りなどにかかる負荷も大きいはずであるため、前期型だと、そのあたりの劣化がやや心配でもあるのだが――という質問に佐々木店長はこう答える。

「確かに物理的にはそうなるのかもしれません。しかし輸入SUV販売の最前線にいる私としては、『最近の車はどれもそう簡単には壊れない』という肌感を持っています。昨今はSNSなどの普及によってユーザーの肉声が共有されやすい社会になっているため、『しょっちゅう壊れるような中古車』って、そもそも売れないんですよ。

例えばエアサスペンションにしても、2000年代初頭ぐらいまでは『輸入車のエアサスは壊れやすいため、エアサス付きの輸入車は買った後のメンテナンス費用で苦労する』的なイメージと現実があったかもしれません。しかし最近のエアサスはそんなこともなくて、マカンにオプションで用意されたエアサスでも、問題が発生するケースはきわめて希なんです。

それゆえ、安心して運転できる適度なサイズの、しかしポルシェという強力なブランド感を味わえる選択肢として、総額500万~600万円ほどのマカンは――後期型ベースグレードでも、前期型のGTSあるいはターボであっても、本気でオススメできる選択肢であると、私は考えています」

ということは、総額600万円前後の予算で初代ポルシェ マカンを買おうと考えるなら「前期型と後期型のどちらを選んでも特に問題はない」との結論になってしまうわけで、迷いはますます増幅されるばかりだ。

しかしこれは言ってみれば「幸せな迷い」であり、何らかの不幸で悲しい迷いではない。

我々は、「自分はポルシェ マカンという車に“何”を求めるのか?」ということを己の心に深く問いかけ、そして出た答えをもとに、「後期型ベースグレード」あるいは「前期型GTSまたはターボ」に決めれば良いのである。

どちらを選んだとしても、それが自分の本心から出た答えに基づくものでさえあれば、得られる幸福の総量にさほどの違いはないはずだ。
 

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ポルシェ マカン(初代)
ポルシェ 911(997型)▲『カーセンサーEDGE』11月号の特集にも登場したポルシェ 911(997型)。総額600万円前後ならカレラやカレラSを中心に狙える

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ポルシェ 911(997型)
レンジローバー スポーツ(2代目) ▲2013年に登場したレンジローバー スポーツの2代目モデル。ハイパフォーマンスモデルのSVR(写真)も支払総額500万円台から探すことができる

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ランドローバー レンジローバー スポーツ(2代目)
文/伊達軍曹、写真/郡大二郎、ポルシェジャパン、ジャガー・ランドローバー・リミテッド
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。