2台のイタリア車が生んだ“恋”。1台になった今はさらに“濃い”時間を紡ぐ
2018/10/28
車は単なる移動の道具ではなく、大切な人たちとの時間や自分の可能性を広げ、人生をより豊かにしてくれるもの。車の数だけ、車を囲むオーナーのドラマも存在する。この連載では、そんなオーナーたちが過ごす愛車との時間をご紹介。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

夫のテーマと妻のイプシロン、残すべきはどちらだ?
どちらも車が好きということがきっかけで知り合い、そして気がつけば約1年後の今年8月には夫婦となっていた、新婚ほやほやの鈴木喜裕さんと彩未さん。
現在の「鈴木家」のいわゆるファミリーカーは往年のイタリア製セダン、ランチア テーマ ターボ16V LS。
しかし結婚直前までは彩未さんも、同じくイタリア製の車を所有していた。2世代目のランチア イプシロンという、かなり素敵なデザインのコンパクトカーだ。
社会人1年目にネットオークションを通じて購入した、彩未さんにとって初めてのマイカーで、とてつもなく愛着があったという。
だが結婚を機に、駐車場代など諸々の経済的負担を考えると、テーマかイプシロンのどちらかを整理せざるを得なかった。
結果、鈴木夫婦は「テーマを残す」という選択をした。
喜裕さんは「無理強いをしたり、我を通したつもりはありません。むしろ僕は『まぁイプシロン1台の生活も悪くないかな?』と考えていたぐらいで」
かなりの愛着があるイプシロンを売却すると決心したのは、彩未さん自身だった。
「なんとなくなんですけど…このランチア テーマって、もうこの人(喜裕さん)の一部になってる感じなんですよ」
そう彩未さんは語る。
「テーマに乗ってないこの人は、もはやこの人じゃない……っていうのはちょっと大げさかもしれませんが(笑)、でもそのぐらい似合ってたし、愛してるのも知ってたんで、わたしは言ったんです。『アナタはずっとコレに乗ってなさい』って」

執着しているわけではない。でも、これに代わる車がない
以来、94年式のランチア テーマは鈴木喜裕さんの車から「2人の車」になった。独身時代に購入した際の走行距離は9.2万kmだったが、現在は約13万kmに達した。
ちょっと神経質な側面もなくはない古めのイタリア車だが、ごくごく普通に「若い夫婦のファミリーカー」として、まるで普通の国産コンパクトカーと同じように(?)日々活躍させているからだ。
「でもそれを実践するために、けっこう整備はしましたけどね」と喜裕さんは言う。
ボディにサビを発生させないよう屋根付きの駐車場に保管し、昨年夏から約1年がかりでエンジンマウントやタイミングベルト、各種センサーやエアコン等々を、コツコツと整備してきた。

先ほどのたとえ話ではないが、新しめの国産コンパクトカーにでも乗り替えれば、そんな苦労(?)などする必要もなくなる。
しかし喜裕さんは、いや喜裕さんと彩未さんはなぜ、そこそこの手間と苦労を押してでもランチア テーマに乗り続けるのだろうか?
「テーマに執着しているつもりはないんですよ。ほら、モノに執着するのってあんまりカッコいい話でもないじゃないですか?」
喜裕さんが言う。
「でも……これに代わる車がないんですよね。ゆったり走っても、ちょっとスポーティに走っても、とにかく車内にはおだやか~な時間が流れる感じの車なんです。僕も車好きですからいろいろな車に乗ってはみましたが、こんな車、他のどこにもなかった。テーマは僕にとって、いや僕たち夫婦にとっていちばん落ち着ける場所であり、いちばん大切な部屋なんです」


ランチア テーマに乗っている心地よい、おだやかな時間がずっと続けばいいなぁ……と言う喜裕さんと、横で「うん、まさに」といった顔でうなずく彩未さん。しかし同時に、喜裕さんはポツリと言った。
「でも機械ですから、いつか別れの日はやってくるんですよね……」
確かにそうなのかもしれない。だがこの2人の94年式テーマに対する愛情のかけっぷりから推測するならば、「その日」は、まだまだずいぶん先のことなのではないだろうか?
どんなクルマと、どんな時間を?
ランチア テーマ(初代)と、どこよりも濃い時間を。
イタルデザインの創設者でイタリアを代表するカーデザイナー・ジウジアーロがデザインを担当した、ランチアの4ドアセダン。1984年~94年まで販売された。直線形状の端正なスタイリングと、シンプルながら上品で豪華装備を備えたインテリアで高級感に溢れる1台。


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