お決まりじゃないアレンジをあえて楽しむ。「正体不明系」のボルボ 940エステート
2021/04/29

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
車購入のきっかけは「二拠点生活」と「保護犬」
九州の鹿児島と宮崎の県境付近で生まれ育ち、大学卒業後、東京へ。プロのイラストレーターとして活動を始めた。
車は子供の頃から大好きであり、「イラストレーションのモチーフとしての車」も、オカタオカさんの大好物ではあった。
しかし、公共交通網が発達していて、なおかつ駐車場の月額相場もきわめて高い都内では自家用車を購入する気になれず、「車なし生活」をしばらくの間続けた。
転向の最初のきっかけは「二拠点生活」だった。
「東京に来て最初のうちは都内だけで活動をしていたのですが、近年は実家がある九州と今住んでる東京で、ある種の二拠点生活をしていたんです。制作は向こうで行う――みたいな」
車なしでも何ら問題なく暮らせる東京都内と違い、地元では、自家用車がないことは「極度の不便」を意味する。
そのため、「九州拠点での足」として人生初の自家用車購入を決めたのだが、そこへやってきたのが、いわゆるコロナ禍だった。九州拠点まで行くことが事実上難しいとなると、維持費というものもかかる車をあえて購入する意義はきわめて低くなる。

だが、そんなオカタオカさんに、もうひとつの出来事が起こった。
保護犬を飼うことになったのだ。
「犬が来るからには……もう都内に納車しよう!」と心を決めたオカタオカさんおよび奥さまは、まずはボルボ 240エステートの購入を思い立った。1970年代からの基本デザインを1993年までほぼそのまま残し続けた、多くの人から「おしゃれ!」と思われている車種だ。
お世辞ではなく、非常にハイセンスでおしゃれなイラストレーションを描くオカタオカさんには、ボルボ 240エステートというのはぴったりな車だったのではないかと、筆者は思う。
▲ボルボ 240エステート
だが、結果としてオカタオカさんがボルボを購入することになった大阪の販売店『ゼロカートラブル』の店主氏は、そうは思わなかったようだ。
「僕にとっては遠方のお店なので、まずは電話で問い合わせたのですが、そうしたら1時間も相談に乗っていただけて。で、社長さんいわく『お仕事やご趣味などのいろいろなお話をお聞きすると、オカタオカさんにはネオクラシックの超定番である240エステートではなく、非王道である940エステートの方が似合うと思うんです』とのことでした」
そう聞いても「いやどうなんだろう……?」とは思ったが、同時に「まぁそうかもしれないな」とも思ったオカタオカさんは、店主氏が勧める97年式のボルボ 940エステートTACKを契約した。2020年1月のことだった。

ドレスアップの反意語である「チープアップ」を得意としている人気店であるため、ベース車両を整備して仕上げて納車して――までは時間がかかってしまったが、特に急ぐ事情もなかったため、オカタオカさんは気長に待った。
そして、待っている最中にボルボ 940エステートのことを調べていけばいくほど、やや地味な存在ともいえる940のことが大好きになっていった。
そして2020年11月、待ちに待った97年式ボルボ 940エステートがオカタオカ家にやってきた。
「チープアップ」あるいは非王道なるカスタマイズ
納車までの間に、基本的な整備以外の部分で、オカタオカさんが販売店と相談しながら行った(あるいは、あえて行わなかった)主なチープアップ作業は下記のとおりだ。
▲前オーナーの意向でボディ同色に塗装されていたバンパーやサイドモールは、純正風の「黒」に塗装
▲純正状態では全体がメッキ加工されているフロントグリルは、その内側だけを黒く塗装。バッジによるカスタムは納車後だ
▲この種のネオクラシック系では「黒いスチールホイール」に換えるのが鉄板手法だが、あえて「純正ホイールのまま」に
▲クリアタイプに換えられている場合もあるウインカーレンズだが、ネオクラ系では純正時のオレンジタイプに戻すのがお約束。オカタオカさんも最初はそうしようと思った。だが、クリアタイプがはまっている状態の写真を見ると、「……これはこれで正体不明感があって=ありがちではない感じがして、いいかもしれない」と思い直し、オレンジウインカーへの変更依頼をストップ
▲古傷が多く入ったドイツ製ルーフボックスを取り付けてもらう。販売店に眠っていた、過去のお客様の置き土産だというまぁ他にも細かなチープアップ作業はいろいろあるわけだが、主だったポイントはおおむね以上だ。
コーナリングがうんぬんではなく『運転が楽しい』
そのような状態でやってきた97年式ボルボ 940エステートは、オカタオカさんにとっては「最高の1台」となった。
「や、最高というか『じわじわ気に入ってきた』という感じでしょうか。納車されたときはもちろんハイテンションになりましたが、乗れば乗るほど、ボルボ 940という車の良さがじわじわ伝わってくる――みたいな感じなんですよね」
かなりせわしないビートを発している街・東京であっても、このステーションワゴンに乗っていると、ゆったりとした気持ちになれるのだという。せかせかした気持ちにならずに済むのだそうだ。
「だから、コーナリングがうんぬんみたいな話ではなく『運転が楽しい』んですよね。そしてこういった方向性の、ちょっと正体不明っぽいカスタマイズ(笑)をしている車とすれ違うこともほとんどないので、そのあたりにも満足できていますし」

▲ステッカー類は納車後のカスタマイズ。自作のイラストを用いたものに混じり、「GT HAWKINS」のブランドロゴのステッカーも。これもまた「正体不明感」を醸し出している正体不明系ボルボは、保護犬とともに
ボルボ 940エステートの後部座席を指定席としている元・保護犬の名前はアビー。オカタオカさん夫妻が飼うことになる前に、預りボランティアをしてくれていた人が付けた名前だ。

「本当は自分たちで別の名前を付けたかったんですけどね。でも、ずっと孤独に暮らしていたアビーは人間に対して極度におびえていて、何をどう言っても、どう接しようとしても、ただおびえて震えるだけでした。そんなアビーが唯一反応を示してくれたのが、預りボランティアさんが付けた『アビー』という名前だったんです」
オカタオカさん夫妻は、そこに賭けた。賭けるしかなかった。
「もうわらにもすがる思いでアビーという名前のままにしたのですが、最近は――まだ100パーセント完璧ではないのですが――僕たち夫婦にずいぶん慣れてくれました」
▲アビーが来たのをきっかけに制作した「INUIMASU」ステッカー世の中のもろもろが落ち着いたら、活動と生活の拠点を地元九州へと完全に移し、そして2頭目の保護犬を迎え入れる予定だ。
いわゆるミックス(雑種)であるアビーと、おそらくはミックスであるだろう、2頭目の保護犬。その2頭が後席にちょこんと座っている、正体不明系の(?)非王道カスタマイズが施されたボルボ 940エステート。
想像するにその絵面は、果てしなく素敵だ。
▲今はアビーの指定席だが、近い将来、2頭の元保護犬が仲良くくつろいでいるはずだ
オカタオカさんのマイカーレビュー
ボルボ 940エステート(初代)
●年式/1997年式
●グレード/TACK
●購入金額/約120万円
●走行距離/7万8000km
●マイカーの好きなところ
・なんとも言い難い純正ボディカラー(ワインレッドでもなくクラシックレッドでもないレッドパール)
・快適に車中泊ができる
●マイカーの愛すべきダメなところ
・強いて言うならカセットテープが壊れている
・悪くもないけどよくもない燃費
●マイカーはどんな人にオススメしたい?
・あまり人と被りたくない人
・荷物たくさん載せたい人

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグSTIスポーツEX。
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