プレリュード ▲新型ホンダ プレリュードが発表されたことで、昭和のプレリュード(写真上)をリアルに知る世代は何かと盛り上がっていますが、令和の時代である今、我々が本当に選ぶべき「デートカー」はどれなのでしょうか? 自身も昭和世代である中古車評論家が真剣に考えてみました!

プレリュード復活! でも今はクーペの時代じゃない?

昭和の時代に「デートカー」として一世を風靡したホンダ プレリュードが2025年秋、新型となって復活する。

昭和末期にプレリュードにてデートに励んだ者、あるいは当時、経済的な理由でプレリュードや日産 シルビアなどを買うことができず、複雑な思いでそれらを遠くから眺めていた者――つまり現代の中高年たちは今、プレリュードの復活に色めき立っている。

だが当然ながら令和の時代となった現在、プレリュード=デートカーという図式はほぼ成り立たない。我々は今、過去の残像ではなく「令和のデートカー」こそを探さねばならないのだ。

この命題については過日の当欄にて、Z世代のモータージャーナリストである瀬イオナさんが5つの選択肢を示した。そのZ世代的な視点は尊重しつつも、筆者からは「中高年のおっさん」としての視点をここで示したい。
 

プレリュード▲今秋に発売される予定の新型ホンダ プレリュード(写真はプロトタイプ)
 

前提|昭和のプレリュードはなぜ、デートカーとして重宝されたのか?

前述したとおり、令和の時代に「プレリュード=デートカー」という図式はほぼ成り立たないだろう。だが昭和末期にデートカーとして活躍した2代目ないし3代目ホンダ プレリュードの「本質」は、令和の今でも十分に応用可能なはず。まずはそこから考えてみよう。

当時のホンダ プレリュードはなぜ「デートカー」たり得たのか? プレリュードの何が、主には男女間のデートにおいて有効な役割を果たしたのだろうか?

つまるところそれは、2代目ないし3代目ホンダ プレリュードが醸していた「適度な特別感」と「所帯じみてない感じ」であったはずだ。
 

プレリュード▲1982年に発売され、いわゆるデートカーとして一世を風靡した2代目ホンダ プレリュード
プレリュード▲2代目に続いてデートカーとして絶大な人気を獲得した3代目ホンダ プレリュード。1987年発売

せっかくのデートだというのに、実家のオトーサンが所有する地味で世帯じみた白いセダンを借りてきたのでは、デートに臨むマインドはどうしたって盛り上がらない。やはり「ハレ」と「ケ」の区別は付けるべきなのだ。

とはいえハレすぎる車、例えば1980年代後半のスーパースポーツであったフェラーリ テスタロッサなどに乗ってこられても、今の言葉でいう「どん引き」という状態が発生してしまう。だからこそ、当時のスペシャルティクーペがもっていた「程よいハレ感」がデートに効いたのだった。
 

プレリュード▲プレリュードなどのスペシャルティクーペがもっていた「実家のセダンとは少し、しかし確実に違うしゃれた雰囲気」に、当時の若者たちは酔いしれた

その他、当時はトヨタ マークIIやチェイサー、クレスタなどの「ハイソカー」と呼ばれていたセダンも、デートカーとして一定の人気を集めていた。このことからわかるのは、「デートカーには“ハイクラス感”も求められる」ということだろう。

しかしこれも前述のテスタロッサと同様に、例えば本当のハイソサエティカーであるロールスロイスのセダンでは「どん引き」が発生してしまう。つまりここでも程よさが重要になるということだ。

 

条件|選ぶモデルとデートのシチュエーションを定義してみる

以上を整理すると、令和のデートカーのあるべき姿がおぼろげに見えてくる。その姿を計算式で表すならば、以下のとおりとなるだろう。

令和のデートカー=(程よいハレ感+程よいハイクラス感)×令和人が求める要素

「令和人が求める要素」の部分には様々な事柄が代入されるはずだが、主には「SUV」「アイポイントの高さ」「乗り心地のよさ」「安全な印象」あたりが入ってくることになるはずだ。

このように整理した「令和のデートカー要件」に基づき、現代の中高年が買い求めるべきデートカーを次章から具体的に挙げていこう。

なお、中高年のおっさんである筆者が若い女性とデートをしても、それはほとんどパパ活にしか見えないはず。そのため今回のデートシチュエーションは「中高年である筆者(男性)が結婚相談所に登録し、そこでマッチングしたおおむね同世代の女性と初めてデートする」というものに設定したい。

また自分以外の中高年各位のことはわからないが、少なくとも筆者はカネがない。そのためデートカー購入の予算は、青天井ではなく「総額300万円以内」と規定する。

 

中高年的令和のデートカー①|トヨタ FJクルーザー(初代)
→想定予算:総額230万~300万円

「程よいハレ感」と「程よいハイクラス感」があって、なおかつ令和人の多くが求める「SUV」という要素をあわせもった車を総額300万円以内で探すとしたら、その筆頭格はトヨタ FJクルーザーになるだろう。
 

FJクルーザー▲日本では2010年に発売されたクロカン的SUV、トヨタ FJ クルーザー

トヨタ FJクルーザーは、もともとは北米市場専用車として2006年に販売開始となったモデルだが、その逆輸入車が大人気を博したことから、2010年12月からは日本市場でも販売された中型SUV。

レトロな味わいと現代的なポップセンスを融合させたエクステリアデザインには程よいハレ感があると同時に、本来はアクティブに使われるべきクロカン車だけあって「アクティブで楽しい休日感」を、同乗者に感じてもらうこともできるだろう。運転者が実はバリバリのインドア派であったとしても、だ。

そしてもともとの新車価格は決して安価ではなく、サイズもまあまあ大柄であるため「程よいハイクラス感」があり、SUVゆえのアイポイントの高さから「見晴らしの良さ=爽快感または非日常感」も同乗者に味わってもらえる。
 

FJクルーザー▲FJクルーザーの運転席および助手席まわり。着座位置の高さに伴う見晴らしの良さも、ドライブデートを盛り上げる要因のひとつだ

ラダーフレーム構造のオフローダーゆえ、モノコック構造のSUVと比べて乗り心地は若干劣るが、それでもFJクルーザーの乗り味は十分にソフトで快適。その点においても同乗者はまったく不満を覚えないはずだ。

このように「令和のデートカー」としてはほぼ言うことなしなFJクルーザーの中古車は、高いモノだと総額500万円を超えるが、総額250万円前後の予算感でも普通に好条件な1台が見つかる。

そしてもちろんデート時だけではなく、自分1人で乗っても何かと楽しめる車であるということで、筆者としてはトヨタ FJクルーザーに「令和の最強デートカー」の称号を与えたいと思っている。
 

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トヨタ FJクルーザー(初代)
 

中高年的令和のデートカー②|ジープ グランドチェロキー(4代目)
→想定予算:総額210万~290万円

米国のトランプ大統領が「日本人はもっとアメリカ車を買え!」と騒いでいるが、騒いでいるということは、つまり今、アメリカ車は日本ではあまり売れていないということだ。

あまり売れていないがゆえの希少性=非日常性を同乗者に味わってもらえると同時に、デートカーの必要条件である「程よいハイクラス感」も確実に有しているのが、ジープブランドのフラッグシップSUV、グランドチェロキーである。
 

グランドチェロキー▲こちらが先代ジープ グランドチェロキー。写真は2013年11月のマイナーチェンジを受けた世代
グランドチェロキー▲おしゃれというほどではないが、上質感は十分にある助手席&運転席まわり。アメリカ車らしい広々感があるのも、この車のデートカーとしての美点といえる

全長4835mm×全幅1935mm×全高1825mmのボディサイズは見る者に程よい威厳を感じさせ、インテリアのあつらえや舗装路での乗り味も、フラッグシップモデルだけあって十分に上質。それでいて本格オフローダーでもあるため、その全体からは自然と筋肉質な雰囲気がただよう。その結果として乗員は適度なハレ感=非日常感を味わうことになるのだ。

本当は2022年10月に発売された現行型がベストではあるのだが、そちらの中古車はあいにく総額590万円以上。しかし先代であっても2013年11月のマイナーチェンジを経た世代であれば、つまり2014年式以降の中古車であればデザインはかなりシュッとしていて、古さはほとんど感じさせない。

こちらも総額250万円前後にて、かなり悪くない1台が容易に見つかるだろう。
 

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ジープ グランドチェロキー(4代目)
 

中高年的令和のデートカー③|ランドローバー レンジローバーイヴォーク(初代)
→想定予算:総額220万~290万円

ここまでに挙げたトヨタ FJクルーザーとジープ グランドチェロキーは、令和のデートカーに必要な要素のうち、どちらかといえば「ワイルド系のハレ感」を重視した選択だった。しかし世の中にはワイルド系のニュアンスよりも「上質でソフトなハイクラス感」を重視したい善男善女もいらっしゃるだろう。

そんな各位にオススメとなるデートカー候補が、先代のランドローバー レンジローバー イヴォークだ。
 

レンジローバーイヴォーク▲コンセプトかーとほぼ同じ超絶おしゃれな造形でもって市販化された初代レンジローバー イヴォーク

レンジローバーイヴォークは、ランドローバーのコンセプトカーだったLRXがほぼそのままのカタチで市販車となったスモールSUV。スモールSUVといっても全長4355mm×全幅1900mm×全高1635mmであるため、日本においては、全長以外はミドルサイズに属するニュアンスだ。

そんなレンジローバーイヴォークは、内外装の造形センスの良さに関しては「世界トップクラス」といってもまったく過言ではなく、インテリアの質感なども、さすがはレンジローバーの小型版ともいえる車だけあって、きわめて高い。自分自身も同乗者も、これに乗っている間はひたすら「うっとりするような時間」を過ごすことができるだろう。

しかし、レンジローバーイヴォークは決して格好だけのSUVではなく、舗装路でも雪道などでも実直で痛快な走りを披露してくれる車だ。そのためデート時は快適かつ安全に走らせることで、場の空気をなごませると同時にある意味盛り上げ、そして自分1人で運転する際には「スポーティなSUV」として快走させることができる。
 

レンジローバースポーツ▲インテリアの造形は外観同様なかなか美しく、いわゆる“雰囲気”も十分

どの年式を購入しても構わないとは思うが、細かな年次改良を繰り返したモデルだけあって、高年式であればあるほど細部と全体は充実している。

その意味で、何度目かの年次改良を経た2017年式以降を選ぶのがベストとは思うが、それでも総額270万円前後の予算で十分に好条件な1台が見つかるはずだ。
 

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ランドローバー レンジローバーイヴォーク(初代)
 

中高年的令和のデートカー④|マツダ MAZDA6ワゴン(初代)
→想定予算:総額240万~300万円

ボディタイプに関する令和の最大公約数というか一番人気は間違いなくSUVであるはずだが、「猫も杓子もSUV」みたいな世の中が好きになれない人もいらっしゃるだろう。

そう考える人が「(程よいハレ感+程よいハイクラス感)×令和人が求める要素」という計算式に基づいて令和のデートカーを探すとしたら、有力候補はマツダのMAZDA6ワゴンになるだろうか。
 

MAZDA6ワゴン▲マツダのフラッグシップステーションワゴンとして2024年12月まで生産されたMAZDA6ワゴン

ご承知のとおりMAZDA6ワゴンは、マツダのフラッグシップであったアテンザが2019年にMAZDA6へと車名を変更したモデルのステーションワゴン版。SUVのような車高の高さや走破性能に基づく「ワイルド系のハレ感」はないが、フラッグシップモデルゆえの上質な世界観に起因するハレ感とハイクラス感は十分だ。

そして全グレードに標準装備される「G-ベクタリング コントロール プラス」によって同乗者の体の揺れは最小限に抑えられるため、快適な時間を過ごすことができ、その結果、車内での会話も自然と弾むはず。

かりにもしも会話がしばしやんでも、無理やり話す必要はない。上級グレードには標準装備となるBOSEサウンドシステムから流れる素敵な音楽に耳を傾けているだけでも、ドライブデートというのは十分に成立するものだ。
 

MAZDA6ワゴン▲ゴテゴテしていないシンプルな造形がひたすら美しいMAZDA6ワゴンの運転席および助手席まわり

そんな素敵なMAZDA6ワゴンの中古車は、走行距離3万km台までの物件に限った場合でも総額200万円台にて余裕でOK。SUVであることに特にこだわりがないのであれば、ぜひとも注目したい令和のデートカー候補である。
 

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マツダ MAZDA6ワゴン(初代)
 

中高年的令和のデートカー⑤|メルセデス・ベンツ Aクラスセダン(初代)
→想定予算:総額220万~290万円

冒頭付近で示したとおり、令和のデートカー像は「(程よいハレ感+程よいハイクラス感)×令和人が求める要素」という計算式で表現できる。その中の「令和人が求める要素」という部分にはどうしても「SUVなどの背が高い車」という文言が入ってくる場合が多いため、今や世間的には人気薄である4ドアセダンや2ドアクーペなどは、どうしても候補から外れがちになる。

とはいえ、まぁ2ドアクーペは「乗り降りがしづらい」「なんとなく車オタクっぽく感じる」ということで正直難しいが、4ドアセダンであれば「今や逆に新鮮!」ということもあって、令和のデートカーになり得る可能性も残されているのではないか?

そう考えたときに注目したいセダンのひとつが、メルセデス・ベンツ Aクラスセダンだ。
 

Aクラスセダン▲こちらがメルセデス・ベンツ Aクラス セダン

日本へは2019年7月に上陸したメルセデス・ベンツ Aクラスセダンは、ハッチバックであるAクラスやBクラスと同じFFプラットフォームをベースにした、メルセデスとしては初のコンパクトセダン。コンパクトといってもボディサイズは全長4549mm×全幅1796mm×全高1466mmなので、ひと昔前の国産セダンと比べればむしろ大柄であるといえ、ある程度の存在感は十分である。

搭載されるパワーユニットは最高出力136psの1.3L直4ターボか同224psの2L直4ターボ、あるいは同150psの2L直4ディーゼルターボが中心となるわけだが、今回は、そのあたりの話はわりとどうでもいい。

なぜならば、デートカー選びにおいて重要となるのはエンジンの種別ではなく、「程よいハレ感」と「程よいハイクラス感」だからだ。

まず「程よいハイクラス感」に関しては、Aクラスセダンは十分にクリアしている。車に詳しいマニアは「しょせんはFFプラットフォームのちっこいベンツじゃないかwww」的な冷笑もするが、そんなことはデートカーには関係のないことであり、デートカーではなかったとしても関係ない。

メルセデスのFFプラットフォームは普通に優秀であり、「メルセデス・ベンツというブランド力=適度なハイクラス感」も、うるさ型のカーマニア相手でさえなければ、Aクラスセダンであっても十分以上に感じてもらえる。

そして「程よいハレ感=適度な非日常性」についても、今や完全に少数派なボディタイプとなったセダンは逆に新鮮であるため、同乗者にはある種の非日常性を感じてもらうことができる。走行中には「そういえば昔は、車といえばセダンだったよねぇ」とかなんとか言いながら、楽しい会話が始まっていくことだろう。

そしてその際の乗り心地や静粛性も、セダンというボディタイプはそもそもの特性として優れているため、2人の会話を邪魔することがない。
 

Aクラスセダン▲スポーティでありながら上質感もたっぷりなインテリアは、大人にこそ似合うかも

さらにいまひとつ人気薄なジャンルだけあって「中古車価格が手頃である」という点も、実はAクラスセダンの魅力だ。2023年2月以降の後期型はまださすがに若干高額だが、前期型であれば、走行距離3万km台までの物件であっても総額220万円程度から見つけることが可能なのだ。

令和的デートカーの「大穴」として、Aクラスセダンやアウディ A3セダンなどの輸入コンパクトセダンにもぜひご注目いただきたい。
 

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メルセデス・ベンツ Aクラスセダン(初代)

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アウディ A3セダン(2代目)
文/伊達軍曹 写真/ホンダ、トヨタ、ステランティス、ジャガー・ランドローバー、マツダ、メルセデス・ベンツ
※記事内の情報は2025年5月20日現在のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。