M55,チャレンチャー ▲2024年11月に発売されて以降、何かと話題のミツオカ M55(写真上)。1970年代のGTカーを感じさせるレトロな造形が素敵な1台ですが、とりわけ「ダッジ チャレンジャー」に似てるのかも? ということで、ミツオカ M55と3代目ダッジ チャレンジャーをいろいろと比較してみました!

ミツオカ M55は「マッスルカー好き」にも刺さるのか?

光岡自動車の創業55周年を記念したコンセプトカー「M55コンセプト」をベースとする市販モデル「M55(エムダブルファイブ)」が2024年11月に発売された。

そして2025年3月には、2026年生産販売予定台数250台としたイヤーモデル「M55 1st Edition」(エムダブルファイブ ファーストエディション)を発表。2026年生産販売予定台数250台の正式発売に先駆け、光岡自動車取扱拠点で先行予約の受付を開始している。

例によって「何か特定のモデルをデザインモチーフにしているわけではない」というのが光岡自動車の公式見解だが、M55のなかなかカッコいい顔つきを見ていて個人的に思い浮かべたのは、米国クライスラーのマッスルカー「ダッジ チャレンジャー」だ。そしてこれは「個人的に」というよりは、多くの人がそのように見ているのではないかとも思う。
 

M55,チャレンチャー▲こちらがミツオカ M55
M55,チャレンチャー▲そしてこちらが3代目ダッジ チャレンジャー
 

果たしてミツオカ M55とは、アメリカンマッスルカーを愛好する人にも刺さる車なのだろうか? この記事ではミツオカ M55とダッジ チャレンジャー(3代目)を比較し、それぞれの美点と購入可能性を検討してみることにする。
 

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光岡自動車 M55(初代)
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ダッジ チャレンジャー(3代目)
 

ミツオカ M55モデル概要:現行型ホンダ シビックがベースの70’s風モデル

ミツオカ M55は、2023年11月に光岡自動車の創業55周年を記念して発表されたコンセプトカー「M55コンセプト」をベースとする市販モデル。車両としてのベースは現行型ホンダ シビックで、その外装と内装をミツオカ独自のデザインに加工している。

ボディサイズはシビックより185mm長く、5mmワイドな全長4735mm×全幅1805mm×全高1415mm。

パワーユニットはシビックと同一で、最高出力182psの1.5L直4ターボと、同141psの2L直4エンジンに同184psのモーターを組み合わせたe:HEV(ハイブリッド)の2種類。駆動方式はFFで、トランスミッションはモデルに応じて6MTかCVT、あるいは電気式無段変速機になる。
 

M55,チャレンチャー▲2024年11月に登場したミツオカ M55ゼロエディション
M55,チャレンチャー▲ベース車両は現行型ホンダ シビックゆえ、ボディタイプとしては「5ドアハッチバック」になる
 

エクステリアデザインは「1970年代のGTカー」のイメージを巧みに取り入れたもので、丸目4灯のヘッドランプやフロントリップスポイラー、ダックテールなど、各所に往年のGTカーのデザインモチーフを採用。

最初のモデルとして発売された「ゼロエディション」には、専用のリアガラスルーバーや専用アルミホイール、そして「Zero Edition」のロゴが刺しゅうされた専用本革シートなども採用。その本革シート表皮には、これまた往年のGTカーをほうふつさせる金属製のリングがあしらわれた。
 

M55,チャレンチャー▲「1970年代」を強く感じさせる丸目4灯のヘッドランプ
M55,チャレンチャー▲往年のトヨタ セリカ リフトバックのオプション装備が思い起こされる黒のリアガラスルーバー
M55,チャレンチャー▲俗にハトメ(鳩目)と呼ばれるシート表皮の金属製リングも、1970年代系GTカーのお約束だった
 

限定100台となる「ゼロエディション」の抽選販売申し込みは2024年11月22日に開始されたが、10日間で応募者数が上限に達したため、受け付けを終了。2025年3月27日には、250台限定で2026年に製造される「M55 ファーストエディション」の予約注文受け付けを開始された。

これまでに発売(申し込み受け付け)されたミツオカ M55各車の新車価格は下記のとおり。

・ゼロエディション:808万5000円
・ファーストエディション LX:756万8000円
・ファーストエディション e:HEV LX:811万8000円
・ファーストエディション e:HEV EX:842万7100円

 

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光岡自動車 M55(初代)
 

3代目ダッジ チャレンジャーモデル概要:初代をオマージュしたレトロ系マッスルカー

初代ダッジ チャレンジャーは、クライスラーがダッジブランドの乗用車として1970年に発売されたポニーカー(アメリカ基準で考えた場合の小ぶりなスポーツカー)。当時、爆発的な人気を得ていた初代フォード マスタングに対抗する目的で開発された1台だった。

1977年から1983年まで販売された2代目ダッジ チャレンジャーは、当時提携していた三菱自動車の「三菱 ギャラン ラムダ」のOEMモデル。搭載エンジンも直4の1.6Lまたは2.6Lで、初代チャレンジャーの面影と思想を継承したモデルではなかった。

しかし2008年に復活した3代目ダッジ チャレンジャーは、初代チャレンジャーのデザインをモダンに仕上げたレトロモダンなスタイルに変貌。
 

M55,チャレンチャー▲こちらが3代目ダッジ チャレンジャー。写真は2015年モデル
M55,チャレンチャー▲シンプルだがきわめて筋肉質な造形が美しいチャレンジャーのリアビュー

基本となるパワーユニットは4種類で、最高出力303psとなる3.6L V6の他、同372psをマークする伝統の5.7L V8 HEMIエンジン。

そしてその排気量を6.4Lまで拡大した同485psのV8 HEMIエンジンと、「SRTヘルキャット」などに搭載された6.2LスーパーチャージドHEMI SRTヘルキャットV8をラインナップ。こちらは最高出力717psあるいは800ps以上をマークするモンスター級ユニットになる。

トランスミッションは8速ATが基本だが、V8エンジンを搭載する一部グレードでは6MTも選択可能だった。

ボディサイズはグレードによって微妙に異なるが、おおむねの数字は全長5020mm×全幅1920mm×全高1450mmといったところ。超高性能バージョンである「スキャットPAC」と「SRTヘルキャット」には、全幅が約9cm広いワイドボディ版も存在する。
 

M55,チャレンチャー▲「HEMIエンジン」と呼ばれるクライスラーの大排気量V8 OHVユニット
M55,チャレンチャー▲3代目ダッジ チャレンジャー2015年モデルの運転席まわりはこのようなデザイン
 

アメリカンマッスルカーとしては久々の大ヒット作となった3代目ダッジ チャージャーだったが、世界的な脱ガソリン車の潮流にはあらがえず、クライスラーの親会社であるステランティスは2023年をもってダッジ チャレンジャーの生産を終了。

以降はEVの「ダッジ チャージャー デイトナ」が、ダッジブランドにおけるマッスルカーとしてのポジションを代替することになっている。
 

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ダッジ チャレンジャー(3代目)
 

ミツオカ M55と3代目ダッジ チャレンジャーを比べてみると?

全長5020mm×全幅1920mm×全高1450mmのダッジ チャレンジャーに対し、同4735mm×同1805mm×同1415mmとなるミツオカ M55は、こと「存在感」においては比べものにならないが、ディテールに関しては健闘している。

M55のベース車両は前述のとおり現行型ホンダ シビックだが、バンパー全体とボンネットフードは専用品であり、しかもその素材は、この種の車にありがちな繊維強化樹脂ではなく、通常の量産車と同様のスチールパネル。それゆえ「後付け感」のようなものは感じさせず、シビックのドア部分のプレスラインも、M55のフロントフェンダーにそのまま違和感なく延伸されている。

フロントマスクのデザインは「ダッジ チャージャーのような、あるいはケンメリ(4代目日産 スカイライン)のような」といったニュアンスだが、とにかく70's風でステキであり、サイドから見た際のフロントセクションは、ダッジ チャレンジャーと比べると厚ぼったさが目立つが、これはこれで個性的かもしれない。
 

M55,チャレンチャー▲全体のフォルムとしては、ダッジ チャレンジャーよりもケンメリ(4代目日産 スカイライン)の2ドアハードトップに近いのかも?
 

リアセクションに目を移すと、ダッジ チャレンジャーがぷりっとしたお尻のノッチバック形状であるのに対し、現行型シビックをベースとするミツオカ M55は必然的にファストバック形状。

しかしそこにダックテールスポイラーを取り付け、さらには懐かしの「ウインドウルーバー」も合わせたことで、結果として「チャレンジャーそのままではない、ちょうどいい感じの70'sミクスチャースタイル」が生まれているように思う。
 

M55,チャレンチャー▲ファストバックの5ドアハッチバックであるミツオカ M55
M55,チャレンチャー▲こちらはノッチバックの2ドアクーペとなる3代目ダッジ チャレンジャー
 

エンジンスペックに関しても、最低でも300psオーバーの3.6L V6、人気の中心はV8 HEMIエンジンとなるダッジ チャレンジャーと、1.5L直4ターボまたは2Lハイブリッドとなるミツオカ M55は、比較すること自体がナンセンスな「まったくの別物」だ。

当然ながらビッグなパワーと超強力なトルクを味わいたいならダッジ チャレンジャーを選ぶほかないが、ミツオカ M55のユニットにも「燃費が良い」「税金が安い」「日本ではこのぐらいのスペックの方が扱いやすい」などのストロングポイントは存在する。
 

 

ミツオカ M55がオススメとなるのはこんな人!

ミツオカ M55をオススメしたいのは、まずは光岡自動車が2023年11月にM55のメインターゲットだと公言した「1968年創業の弊社(光岡自動車)と同じ55年の人生を歩んだ『同世代』の方々」、ざっくり言うと50代後半から60代ぐらいの、アメリカンマッスルカー好きだろう。
 

M55,チャレンチャー▲ミツオカ M55は、いわゆる「アラ還」の車好きに向いている?

アメリカンマッスルカーが好きなのであれば、もちろんマッスルカーそのものを購入するのがベストではあるだろう。だがリアルなマッスルカーはボディもデカく、パワーと税金はちょっと強烈すぎるレベルであり、早朝に出かける際などには近所迷惑が気になってしまうほどのエンジンサウンドも伴っている。

そういった諸々がありつつも、「しかし自分はコレが好きなんだ!」という気概と根性で愛車を維持していくのが自動車愛好家のあるべき姿だが、とはいえ人間も還暦近くになると、自身のパワーは何かと落ちてくる。若い頃であれば気にもしなかったボディサイズや騒音、あるいは税金などに対して、若干ながら弱気になってくるのだ。

だがそんなときでもミツオカ M55は、古き良き70's感をバリバリに感じさせつつも、現行型ホンダ シビックとほぼ同様に楽勝で維持でき、そして楽ちんに稼働させることができる

楽勝・楽ちんなカーライフの本質的な是非をここで議論するつもりはないが、「さすがにちょっといろいろ疲れてきたかも?」という自覚があるアラ還世代の車好きに、とにかくミツオカ M55はいい感じでフィットするだろう。

またその他、アラ還世代のカーマニアではなく「先入観や過去のしがらみは特にない、純粋に『デザインコンシャスなプロダクト』を好む若い世代」にも、ミツオカ M55はフィットするはずだ。
 

M55,チャレンチャー▲「人とカブらないおしゃれな車」を探している若い世代にも向いているのかも
 

筆者のような中高年になると、どうしても「昔はこうだった、ああだった」「M55は、本当の70's車と比べるとここが違う、あそこが違う」等々と、面倒くさくて細かいことを言いたくなってしまう。だが、そのような先入観など持ちようがない若い世代であれば、ややこしい話は抜きに「これ、イイじゃないですか! 好きかも!」というピュアなニュアンスで、ミツオカ M55という車の魅力を味わうことができるはずなのだ。

価格的に若干お高いのが玉にキズではあるが、ミツオカ M55は本来のターゲット層であるアラ還世代のみならず、若い世代にも注目してほしい1台である。
 

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光岡自動車 M55(初代)
 

ちなみに3代目ダッジ チャレンジャーの中古車状況は?

3代目ダッジ チャレンジャーの中古車流通量は、2025年9月下旬現在で約150台。

比較的マニアックなアメリカ車としては「豊富」と言える台数だが、さすがに価格は安くはなく、直近の平均支払い総額は約822万円。しかし、これは1000万円台後半のSRTヘルキャットなどが平均を押し上げているという側面も強く、実際の市場では総額200万円台や300万円台の物件も多数流通している。

 

M55,チャレンチャー▲比較的手頃な物件も流通しているが、平均価格は高値圏から下降してくる気配がほとんどない3代目ダッジ チャレンジャー
 

とはいえ3代目チャレンジャーの平均価格は、その生産終了時から見てほとんど下がっておらず、横ばいまたは微上昇トレンドとなっていること自体は間違いない。もはや新車として購入できるチャンスはなくなった3代目ダッジ チャレンジャーだけに、もしも興味がある場合はカーセンサーnetの情報を毎日(?)、くまなくチェックすることをオススメしたい。
 

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ダッジ チャレンジャー(3代目)
文/伊達軍曹 写真/光岡自動車、ステランティス
※記事内の情報は2025年10月1日時点のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。