【名車試乗】トヨタ チェイサー ツアラーV(JZX100)|1JZのフィーリングは今も最高! 「いい時代」を思い出させてくれた
2025/04/08

今や希少になった5速MTのスポーツサルーン
最近では「5速MTを搭載するサルーン」は皆無となった。
私が最後に乗ったのはいつだろうか。記憶にあるのが国産では6気筒搭載のトヨタ アルテッツァ AS。似ているのが15年くらい前のBMW 3シリーズで、ドライビングを楽しむ通好みの仕様が良かった。
そして、だいぶ時をさかのぼることになるが、記憶に残る最もホットなサルーンモデルがトヨタ チェイサー ツアラーVである。試乗したのは、確か2000年ごろだっただろうか、X100系の最終型だった。

その時は箱根で試乗したのだが、乗りやすいが一気に高まるパワーによってターンパイクの滑りやすい下りの路面でのアクセルワークが難しく、オーバーパワーによるスピンを起こしてしまうのではと思ったほどだ。
今見れば、たかだか280馬力自主規制下の車と思うかもしれない。しかし、現在の車ほど緻密ではなく、アクセラレーションによるトラクションコントロールは、大きく滑ってからようやく制御が入るという仕様であり、最新の車と比べるとドライビングは格段に難しいのだ。
しかも、チェイサー ツアラーVはダイレクトな5速MTのみ。それにトルセンLSDが標準で装着されているのも素敵だ。
トルセンLSDは、私の記憶だと緩やかにねっとり利く作動制御装置である。それに加えて標準ではフロントが205/55R16 、リアは225/50R16という前後違ったサイズのタイヤを装着していたことからもわかるように、「本気のスポーツサルーン」である。
あれから四半世紀が経過した今、こんな機会が訪れるとはお釈迦様でもわかるまい。そして、年を重ねると「いい時代を知っている」と改めて思う瞬間がある。今日がその日のひとつと言えよう。
今乗っても感動できる1JZ-GTE
前置きが長くなったが、今回は「Vintage Club by KINTO」にてしっかりとレストアされた、トヨタ チェイサー ツアラーVに試乗する機会をいただいた。
痛烈な記憶としてあるX100系に改めて試乗できるのだ。過去の記憶をたどりつつ、レポートをお届けする。

ボディカラーは細かなパールを配合したホワイト。同社のスーパーホワイトと比べると上品さも感じられるカラーだ。
ちなみに、チェイサー ツアラーVはこのパールホワイトが標準色であるから、お借りしたモデルはほぼ当時と同じような雰囲気を醸し出している。

ホイールとタイヤが標準サイズではなく、車高も低いが雰囲気はいい。フルオリジナルよりも良い方向にカスタムされているのであれば問題ないだろう。
25年の時を超え、シリンダーに火を入れる。クランキングは非常に短く、直列6 2.5Lの1JZ-GTEエンジンはとてもスムーズだ。
「R154」と呼ばれる、アイシンがトヨタのために作ったハイパワーに適した5速マニュアルトランスミッションのコンディションはとてもいい。クラッチを切ったりつないだりしてみると、ミッションレリーズともにベアリングの音は皆無である。
では、スタートだ。クラッチのキレ具合はとても良好。スロットルをゆっくりと開いていき過給がほぼない状態で走らせる。

2.5Lという排気量のアドバンテージはあるが、9.0の圧縮比はシャープでレスポンスもいい。
少し踏み込みスピードを速めて圧力を上昇させる。過給圧が加わっても極めてスムーズな移行だ。
シフトアップで伸び感の加速を味わう。マフラーを交換しているということもあり、気持ちいい音を響かせる。昔を思い出し、思わずシフトチェンジのタイミングに“中ふかし”を入れてイキってしまいそうだ。


続けて瞬間だが280psを感じるドライビングをしてみると、十分速い――というよりも速く感じさせる。
シングルターボになった2世代目の1JZ-GTEであるが、ドライバビリティは最高! レスポンシブでラグを感じさせず、ヒール&トーもしやすい。
交換したサスペンションはしなやかでスポーティなハンドリングだ。当時の乗り味とは違いはあるが、これだけスペシャルな仕様にしても十分に耐えられるボディのポテンシャルである。
ブレーキの立ち上がりが急で、低速では慣れが必要な点はお伝えしておこう。



ベロア調のシートはソフトでリラックスできる。現代の考え方だとこのスポーティさを考えると違和感を感じる人もいるだろう。しかし、このギャップこそツアラーVの価値かもしれない。
優しく包み込みながら、まるで巨人に押されたかのような加速から、チェイサー ツアラーVの本質を感じずにはいられないのだ。
▼検索条件
トヨタ チェイサー ツアラーV(JZX100)×全国
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
チェイサー ツアラーVをはじめ、往年の名車に乗れるサービス
「Vintage Club by KINTO」では、様々な往年の旧車を借りられるサービスを展開している。各車両の整備はトヨタ自動車やレストアを手がける新明工業が行う。
レンタルできるモデルは下記サイトを参照。
今回試乗したチェイサー ツアラーVについては、現在埼玉キャラバンとして、次の各トヨタディーラーにてレンタルを行っている。
3/13(木)~6/10(火):埼玉トヨペット株式会社 GR Garage 浦和美園(埼玉県さいたま市岩槻区美園東2-1-1)
詳細、レンタルの予約は下記のリンクより。

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