アウディ Q6 e-tron▲ポルシェと共同開発したBEVプラットフォームを初採用する、新世代BEVのミドルクラスSUV。エントリーモデルである後輪駆動と4WDをラインナップ、ハイパフォーマンスモデルのSも用意されている

初採用の電動車用プラットフォームはポルシェと共同開発

アウディのEVシリーズ「e-tron」の第4弾となる「Q6 e-tron」が日本に上陸した。ラージサイズのSUVの「Q8 e-tron」とコンパクトSUVの「Q4 e-tron」の間に位置するミッドサイズSUVであり、新開発の電動車用プラットフォーム「PPE(プレミアム プラットフォーム エレクトリック)」を採用する。

「PPE」は、アウディとポルシェが共同開発したもので、「Q6 e-tron」はそれを採用するアウディ初の量産モデルである。これまでミッドサイズSUVでは内燃エンジンのQ5とポルシェ マカンがプラットフォームを共有する姉妹関係にあったが、それはEVになっても同様で、この「Q6 e-tron」とマカンは姉妹車にあたる。今後はこのPPEをベースに、同じくフォルクスワーゲン グループのランボルギーニやベントレーなどもEVをリリース予定で、その出来栄えが重要な鍵となる。

最新のプラットフォームに求められるのは、動的性能の向上はもとより、コネクティビティをはじめデジタル化を推し進める電子アーキテクチャーと一対のものとして開発されていること。Q6 e-tronでは、5基の高性能コンピュータによって車両ダイナミクスやインフォテインメント、将来の部分的自動運転に至る車両機能が統合制御されている。
 

アウディ Q6 e-tron▲PPEの採用による長いホイールベース(2895mm)に短いオーバーハングを組み合わせた安定感のあるプロポーションを実現させた

エクステリアでは、シングルフレームグリルや四輪のフェンダーの力強さを強調する“quattro(クワトロ)ブリスター”など、アウディの伝統的なデザイン要素を踏襲している。よく見ると穴の空いていない閉じたグリルがEVであることの証しだ。

いわゆる目にあたる部分にあるのはLEDのデイタイムランニングライトで、その真下に配置された四角いユニットがヘッドライトだ。ライティング技術をウリにするアウディらしく、フロントのデイタイムランニングライトおよびOLEDのリアライトは8つの配光パターンからデザインの選択が可能。またリアライトは緊急時に三角停止板をライト内部に表示できるといった機能も備えた。

アウディ Q6 e-tron▲デイタイムランニングライトは8つの配光パターンから選択可能

インテリアは、最新世代のアウディの流れをくむもので、乗員を包みこむようにデザインされている。ステアリングはトップとボトムがフラットな形状のもの。ドライバーの目の前の11.9インチのバーチャルコックピットとセンターの14.5インチのタッチスクリーンを一体化。助手席用の10.9インチスクリーンもオプションで設定する。

シートの一部にリサイクル素材や用い、またレザーフリーシートをオプションで用意するなど、生産から製品に至るまで持続可能性へ積極的に取り組むアウディらしさが見て取れる。アウディはドイツ本社のインゴルシュタット工場においてすでにカーボンニュートラルな生産を開始しており、Q6 e-tronも再生可能エネルギーによってつくられた電気を使用して製造されているという。
 

アウディ Q6 e-tron▲液晶メーターディスプレイとタッチディスプレイを結合させたMMIパノラマディスプレイを採用。シフトは前後にスライドさせるスイッチ式となる

街中で扱いやすく高速で快適

試乗車はクワトロ(4WD)でオプションのアダプティブエアサスペンション装着車だった。フロントアクスルにはASM(非同期モーター)を、リアアクスルにはPSM(永久磁石同期モーター)を搭載する。駆動システムは最高出力285kW(約387ps)、最大トルク580N・mを発生。総容量100kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーによって、一充電走行距離は644kmに達している。

また、新たにドライサンプ方式の冷却システムを採用することで、パワートレインのコンパクト化と軽量化、そしてパフォーマンスの向上を果たしている。

ステアリングを握った瞬間に、マカンとの違いがわかる。ポルシェの手応えはやはりスポーツカーのそれである。一方のQ6 e-tronは、アシストが多くステアリングは軽めで、可変ギアによって低速域での取り回しのよさを高めており、ファミリーをはじめ幅広い層が扱いやすいセッティングになっている。

動きだしもダッシュ力を強調することなくスムーズなもので、助手席の人にもBEVにありがちな加速時の違和感を感じさせないようチューニングされているようだ。高速道路でも風切り音やタイヤからのノイズが低く抑えられている。試乗車は20インチのコンフォートタイヤ、ブリヂストン製TURANZA T005を装着しており、乗り心地はとても快適だった。おそらくオプションのエアサスの効果も大きいはずだ。

走行モードのデフォルトは「バランス」で、「コンフォート」や「エフィシエンシー」などがある。通常走行時は走行状況に応じて調整してくれる「バランス」がいいだろう。もしスポーティに走りたい場合は、「ダイナミック」を選択すると、操舵感もダンパーの減衰力も、わかりやすくダイレクトに変化を感じる味付けになっていた。また、悪路走行時に車高をアップし駆動力配分を最適化する「オフロード」モードも用意されている。

回生ブレーキに関しては、Q6 e-tronはステアリングの左側に備わるシフトパドルを使ってレベル調整が可能。コースティングをはじめBモードでのワンペダルフィールなども選べる。それ以外にもオートモードがあり、交通量の多い市街地では前走車との車間距離を見ながら自動調整してくれる。市街地ではこのモードが使いやすかった。

実際のところ制動の約95%はエネルギー回生によって行われるため、ブレーキパッドが減らないし、ホイールも汚れない。ちなみに、マカンにはシフトパドルは備わらず、回生の強さをドライバーが任意で調整することはできない。これはタイカンとも共通するポルシェの回生ブレーキに対するアプローチだが、プラットフォームを共有するといえども、様々な部分でメーカーの独自性が打ち出されていてとても興味深い。
 

アウディ Q6 e-tron▲ラグジュアリーパッケージを選択すれば可変ダンパーを備えたアダプティブエアサスペンションが装着される

「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」をブランド哲学として掲げるアウディだが、デザイン面もテクノロジー面でも新世代となったQ6 e-tronにはそれがしっかりと感じられた。

また、いまアウディはポルシェ、フォルクスワーゲンとともにPCA(プレミアムチャージングアライアンス)という各ブランドのディーラーネットワークおよび都市部に展開する、最大150kWの急速充電器ネットワークを利用できる充電サービスを展開しており使い勝手が高まっている。

さらにアウディは独自の充電施設にも積極的に投資しており、東京の紀尾井町と芝公園に「Audi charging hub」をオープン。また、郊外型としては新東名高速道路 厚木南ICより約1分の「Audi 厚木」の敷地内に24時間365日利用可能な「Audi charging station厚木」をオープンしている。これらはアウディオーナーのみならずすべてのEVユーザーが利用可能となっている。

Q6 e-tronはChAdeMO方式として国内最大出力の150kW充電器を利用した場合、最大135kWの急速充電に対応し、約35分で10%から80%まで充電が可能となっている。一度、この150kWを体験すれば、EVの充電には時間がかかるという既成概念も覆されるはず。EVはまだ未体験という人も、そろそろ試乗してみることをオススメしたい。
 

アウディ Q6 e-tron▲18インチアルミホイールを標準とし、Sラインパッケージには20インチ(写真)が装着される。ちなみに、Plusパッケージでは19インチとなる
アウディ Q6 e-tron▲Sラインパッケージには前席にSスポーツシートを装備。ベーシックモデルにはスタンダードシートとスポーツシート(オプション)が用意される
アウディ Q6 e-tron▲長いホイールベースによる室内の広さとセンタートンネルのないフラットな床面により、後席の快適性を高められている
アウディ Q6 e-tron▲フランクと呼ばれるボンネット下のトランクは64Lの容量を備える
アウディ Q6 e-tron▲ラゲージ容量は通常526L、3分割の後席をすべて倒せば最大1529Lまで拡大する

▼検索条件

アウディ Q6 e-tron(初代)
※中古車の流通状況により物件が表示されない場合があります。
文/藤野太一 写真/阿部昌也

ライター&エディター

藤野太一

カーセンサー、カーセンサーネットの編集デスクを経て、カーセンサーエッジの創刊デスクを務める。現在はフリーランスのライター&エディターとして、自動車誌をはじめビジネス誌、ライフスタイル誌などにも寄稿する。

姉妹車となるポルシェ マカン(2代目)の中古車市場は?

ポルシェ マカン

2024年にBEVモデルへと進化したスポーティなミドルクラスSUVの2代目。Q6 e-tornと同じ新開発の電動車用プラットフォーム(PPE)を採用する。こちらはポルシェらしいスポーティな走りが魅力、2WDのベーシックモデルやハイパフォーマンスなターボなど4グレードを展開する。

2025年7月上旬時点で、中古車市場には5台程度が流通。支払総額の価格帯は890万~1100万円となる。
 

▼検索条件

ポルシェ マカン(2代目)
文/編集部、写真/阿部昌也
※記事内の情報は2025年7月5日現在のものです。

【試乗車 諸元・スペック表】
●クワトロ アドバンスト Sラインパッケージ 4WD

型式 ZAA-GF11S 最小回転半径 5.7m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.77m×1.97m×1.67m
ドア数 5 ホイールベース 2.9m
ミッション その他AT 前トレッド/後トレッド 1.68m/1.66m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 2410kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 -kg
ミッション位置 不明 最低地上高 -m
マニュアルモード -
標準色

マグネットグレー

オプション色

グレイシアホワイトメタリック、マンハッタングレーメタリック、ミトスブラックメタリック、ソネイラレッドメタリック、プラズマブルーメタリック、アスカリブルーメタリック、デイトナグレーパールエフェクト

掲載コメント

※一充電走行距離(WLTCモード)644km
※交流電力量消費率 WLTCモード 167Wh/km 市街地モードWLTC-L 146Wh/km 郊外モードWLTC-M 158Wh/km 高速道路モードWLTC-H 183Wh/km

型式 ZAA-GF11S
駆動方式 4WD
ドア数 5
ミッション その他AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 マグネットグレー
オプション色 グレイシアホワイトメタリック、マンハッタングレーメタリック、ミトスブラックメタリック、ソネイラレッドメタリック、プラズマブルーメタリック、アスカリブルーメタリック、デイトナグレーパールエフェクト
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
不明
マニュアル
モード
-
最小回転半径 5.7m
全長×全幅×
全高
4.77m×1.97m×1.67m
ホイール
ベース
2.9m
前トレッド/
後トレッド
1.68m/1.66m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 2410kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
掲載用コメント ※一充電走行距離(WLTCモード)644km
※交流電力量消費率 WLTCモード 167Wh/km 市街地モードWLTC-L 146Wh/km 郊外モードWLTC-M 158Wh/km 高速道路モードWLTC-H 183Wh/km
エンジン型式 ECF-ECC 環境対策エンジン -
種類 電気モーター 使用燃料 電気
過給器 - 燃料タンク容量 -リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 -cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 387ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
-/-
エンジン型式 ECF-ECC
種類 電気モーター
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 -cc
最高出力 387ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
-/-
環境対策エンジン -
使用燃料 電気
燃料タンク容量 -リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -