ジムニーノマドが受注停止中だが、シエラじゃダメなのか? 比較して本気で考えてみた!
2025/07/19

本当に5ドアが必要?
ジムニーにロングホイールベース・5ドアのモデルがあったらなあ……というのは、ジムニーファン長年の夢だった。
ところが、そんなジムニーファンの夢がかなうときが、ついに来た。そう、今年1月に発表されたジムニーノマド(以下ノマド)だ。スズキのインド工場で生産される海外市場向けのモデルを日本向けに手直しすることで、コストの問題を解決した。

とうとう、ファミリーで乗れるジムニーが日本でも手に入る……と思われたが、注文が殺到し、発表からわずか数日でオーダーストップに。中古車市場にも若干量は流通し始めたが、新車価格よりもかなり高めのプライスという状況だ。
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スズキ ジムニーノマド(初代)あれ、でも冷静に考えると、ジムニーシエラで事足りない要素って何だっけ? ノマドとシエラ、改めて見比べてみよう、というのが今回の企画。利用シーン別の使い勝手などを徹底的に比較しつつ、中古車市場をチェックしていこう。

モデル紹介:長さとドア数だけでなく乗り味も違う
まずは、ジムニーノマド(5ドア)の比較対象となるジムニーシエラ(3ドア)がどんなモデルなのか詳しく紹介しよう。
3代目 ジムニーシエラ(以下シエラ)は軽自動車である4代目 ジムニーをベースに、オーバーフェンダーを付けて小型車化したモデルだ。車体そのものはジムニーと共通。ボディサイズはオーバーフェンダーやバンパー形状の違いによってのみジムニーとの差が生じており、全長3550mm×全幅1645mm×全高1730mmとなっている。

搭載されるエンジンは自然吸気1.5Lガソリン。先代シエラ(2代目)では1.3Lエンジンが搭載されていたが、ジムニー(3代目)のターボエンジンと比べてパンチ力に欠け、小型車の割りにはトルク感も乏しい印象だった。
そこで3代目では排気量を1.5Lへと拡大してパワー&トルクアップを図り、十分な動力性能に。豊かなトルクと静粛性の高さというジムニーにない魅力を手に入れた。

3代目 シエラの長所はなんといっても、ワイドトレッド化による安定性の高さと自然吸気エンジンの扱いやすさだ。ストロークの長い前後コイル式リジッドサス、十分に減速比の低い副変速機といった利点はそのままに、ジムニー唯一の弱点と言える重心の高さを克服している。
その恩恵はコーナリングの安定感、乗り心地の向上、極悪路での転倒リスク軽減など、あらゆるシーンでもたらされる。全幅は4代目 ジムニーより170mm広いが、オーバーフェンダー分なので車両感覚的にはほぼ同じ。もはやランニングコスト以外のウイークポイントが見当たらない1台となった。そうした状況を反映して、新車販売台数でも先代を大きく上回っている。
モデル差異:荷室の広さや乗り味にも違い
シエラとノマド、3ドアと5ドアという違いは分かるが、他にはどんなところが違うのだろう? 数字で比較してみよう。まずはボディサイズから。
全長 | 3550mm | 3890mm |
---|---|---|
全幅 | 1645mm | 1645mm |
全高 | 1730mm | 1725mm |
荷室長(2名乗車時) | 980mm | 1240mm |
荷室長(4名乗車時) | 240mm | 590mm |
荷室幅 | 1300mm | 1210mm |
荷室高 | 850mm | 960mm |
ホイールベース | 2250mm | 2590mm |
車両重量 | 1070~1090kg | 1180~1190kg |
全長 | 3550mm | 3890mm |
---|---|---|
全幅 | 1645mm | 1645mm |
全高 | 1730mm | 1725mm |
荷室長(2名乗車時) | 980mm | 1240mm |
荷室長(4名乗車時) | 240mm | 590mm |
荷室幅 | 1300mm | 1210mm |
荷室高 | 850mm | 960mm |
ホイールベース | 2250mm | 2590mm |
車両重量 | 1070~1090kg | 1180~1190kg |
ノマド(初代)の方が全長で340mm長い。これは完全にホイールベースの違いによるもので、リアドアを追加するための伸張だ。当然、車内寸法もノマドの方が広くなっていて、後席が約50mm後方に移動されている。さらにリアホイールハウスが後方に移動したため、後席の左右座席間距離も90mm拡大された。
その違いは荷室にも。荷室幅、荷室高については計測位置の違いによるもので、実質的な差はなし。荷室長については350mmもノマドの方が長い。後席の乗降性、居住性、荷室の使い勝手などユーティリティ性能についてはノマドの圧勝と思ってよいだろう。

なお、動力性能については両車とも1.5Lガソリンエンジン搭載で、最高出力、最大トルクは共通。ただ車両重量は100kgほどノマドの方が重い。決定的な差とまでは言わないが、登坂路や高速合流時の加速といった場面では違いを感じるかもしれない。
むしろ大きく異なるのは乗り味で、ノマド(初代)はホイールベース伸張に合わせ、ボディ剛性を向上させ、フロントサスの剛性も高めている。これはホイールベースが長くなってもキビキビしたハンドリングを実現するための施策だが、同時に乗り心地もやや硬めとなった。どちらが良いかの判断は、オーナーの好みによるだろう。

最後にランニングコストについて。自動車税や重量税、車検費用、自賠責保険料などは両車同じ。燃費ではシエラ(3代目)が14.3~15.4km/L(WLTCモード)、ノマド(初代)が13.6~14.9km/L(WLTCモード)と若干シエラ(3代目)の方が有利で、一般的な使用条件(年間走行距離1万km程度)なら、ガソリン代の差額は年間4000円ほど。考慮するほどの違いではないかも。
結論:本当はシエラが適任かも
さて、結論としてはシエラとノマド、どっちがいいの? ということで具体的な利用シーンを想定しながら検討してみたい。
これはシエラの方が圧倒的に有利! 全長が短いことに加え、最小回転半径についてもノマドが5.7mなのに対して、シエラは4.9mと小回りが利く。燃費においてもシエラ(3代目)が有利だ。

家族で出かける機会が多い人にとって、後席の広いノマドは便利だろう。ただ、後席に乗るのが1名もしくは子共ならシエラでも全く問題なし。
乗り心地についてはノマドの方が高速道路での安定感に優れており、こちらは一長一短あり。利用シーンによって優劣は異なるだろう。
こちらはホイールベースが短く、キビキビしたハンドリングを実現しているシエラの方が楽しい。ただし、ノマドは安定感があるので、初心者向きではあるかも。
シエラの場合、4人乗ってしまうと荷物はほとんど積めず3人が限界。荷物を積んでの移動なら、やはりノマドが有利だ。ただキャンプとなると、ノマドであっても3人以上の乗車+キャンプ道具を積載しての移動は無理がある。逆に2名でのキャンプならシエラでも事足りそうだ。そのあたりは家族構成や目的によるところだろう。


ジムニーの本領発揮となるオフロード走行でも、やはりシエラ(3代目)が有利だ。もちろん地形によってはノマド(初代)の長いホイールベースが有利に働くこともあるが、シエラ(3代目)の方で腹下クリアランスに余裕があるのは確か。もっとも、ノマドで苦労するような地形に挑む人はごく一部だろうが……。
これらを総合的に考えると、家族4人で移動する機会が多い人、長い荷物を載せたい人はノマドが有利だが、それ以外の人はシエラ(3代目)で十分、むしろシエラ(3代目)の方が楽しいシーンも少なくない、という結論になる。


ちなみに、新車における両新車の価格差は60万円弱。価格差分の価値があるかどうか、慎重に検討すべきだろう。
中古車概況:シエラは中古車市場も充実!
最後に、3代目シエラの中古車状況をチェックしておこう。
2018年の登場以降、シエラ(3代目)の中古車流通量は安定的に増加しており、今年に入ってからは2000台を維持。軽自動車のジムニー(4代目)に比べると3分の1ほどだが、それでも十分な物件数と言えるだろう。ちなみに、2025年7月10日時点でのノマド(初代)の流通量は130台前後だ。

中古車価格においてもシエラ(3代目)は好調。2023年ごろまでは上昇傾向にあったが、2024年春頃から緩やかに下降し始め、直近の中古車支払総額平均は270万円以下にまで下がってきている。
もちろん新車価格(176万~218.4万円)に比べてまだまだ高めの水準ではあるものの、ノマド(初代)の中古車支払総額平均と比べれば100万円以上安い。
価格推移の要因は供給量が順調に増えていることと、デビューからの経年によるもの。ネガティブな要因を心配する必要はなさそうだ。

中古車でも俄然、狙いやすくなってきたシエラ(3代目)。ノマド(初代)が魅力的な車であることは間違いないが、いつになるか分からない新車の納期、中古車もかなり高めの価格帯であることを考えると、シエラ(3代目)に狙いをシフトするのも選択肢のひとつではないだろうか?
▼検索条件
スズキ ジムニーシエラ(3代目)
自動車ライター
田端邦彦
自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。
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