VW ID.Buzz ▲なんとも素敵なデザインを伴って登場したフォルクスワーゲン ID.Buzzですが、難点は、支払総額が1000万円級になってしまう新車価格。1000万円はさすがにキツい! ということで、その半額以下で狙える「ID.Buzzみたいな車」を探してみることにしましょう!

超ステキなID.Buzzだが、「総額1000万円」はさすがにキツい

「ワーゲンバス」の愛称で親しまれてきたフォルクスワーゲン タイプ2のイメージを継承しつつ、フォルクスワーゲンの新たなブランドアイコンとなるべく開発された話題のフル電動ミニバン「フォルクスワーゲン ID.Buzz」が2025年6月20日、ついに発売されました。

ワーゲンバスのデザインエッセンスを大胆に取り入れつつも、決して単なる懐メロでは終わらせず、きわめて現代的でもあると感じさせるエクステリアデザインは「お見事!」といえるもの。

そして車内は広々としたラウンジのような雰囲気と、スペースを最大限に活用したことで生まれた快適性と利便性が大いに魅力的で、荷室容量も、標準ホイールベース車の場合で2123Lという超たっぷりサイズ。

パワートレインは最高出力286ps/最大トルク560N・mという強力な駆動用モーター&バッテリーで、WLTCモードの一充電走行距離も524~554kmという十分なものです。
 

VW ID.Buzz▲写真は2-2-2の6人乗りシートレイアウトを採用するノーマルホイールベース仕様(NWB)。この他、2-3-2の7人乗りとなるロングホイールベース仕様(LWB)もラインナップされている
VW ID.Buzz▲スイッチ類や突起物が少ない今どきのデザインを採用しているID.Buzzの運転席まわり。車内全体の開放感も十分以上

デザイン的にも機能の面でもここまで魅力的だと、猛烈に「コレ欲しい!」と思ってしまうわけですが、しかし車両価格を見てみると……一番安いグレードでも車両価格は888万9000円。様々なオプション代や諸費用を加えると、乗り出し価格はたぶん約1000万円? ……さすがにちょっと無理めな金額です。

であるならばフォルクスワーゲン ID.Buzzの半額以下で、つまり総額500万円以内で買える、ID.Buzzと同じぐらいデザインが良くて、なおかつ機能的でもあるミニバンを探してみようじゃないですか!
 

 

候補1:シトロエン ベルランゴ(3代目)/ベルランゴロング(初代)
→想定予算:総額250万~490万円

ID.Buzz並みにデザインがステキで、なおかつ機能的でもあるミニバンといえば、コレが最右翼でしょう。フランスのシトロエンというブランドが作っている「シトロエン ベルランゴ」またはその7人乗りバージョンである「ベルランゴロング」です
 

シトロエン ベルランゴ▲こちらがシトロエン ベルランゴ
シトロエン ベルランゴ▲こちらは3列シート・7人乗りのベルランゴロング

シトロエン ベルランゴは、2019年10月に登場した全長4405mm×全幅1850mm×全高1850mmの5人乗りマルチパーパスビークル(MPV)。ちょっとポテっとしたフォルムとフロントまわりのデザインは「ブサかわいい」ともいえるニュアンスですが、そこが逆にこの車の個性であり、魅力であるといえるでしょう。

そしてインテリアも、さすがは「おフランス」の車だけあってかなりのおしゃれさんです。
 

シトロエン ベルランゴ▲細部のデザインがいちいちおしゃれな運転席まわり。Apple CarPlayなどが使える8インチのタッチスクリーンは標準装備(写真は左ハンドル仕様で、日本国内向けは右ハンドルとなる)

パワーユニットは最高出力130ps/最大トルク300N・mの、力強くて経済的な1.5L直4ディーゼルターボ。高速道路などで前車を追従してくれるアダプティブクルーズコントロールやアクティブセーフティブレーキ(車両および歩行者検知機能付き)、ブラインドスポットモニター等々が標準装備である点も魅力といえるでしょう。

そして標準のベルランゴは2列シート・5人乗りのMPVですが、2023年1月には3列シート・7人乗りの「シトロエン ベルランゴロング」も追加。こちらのボディサイズは、フォルクスワーゲン ID.Buzzに若干近い全長4770mm×全幅1850mm×全高1870mmです。

そんな、フォルクスワーゲン ID.Buzzに負けず劣らずおしゃれで機能的なシトロエン ベルランゴの直近の中古車価格は、おおむね下記のとおりです。

●ベルランゴ:総額250万~430万円
●ベルランゴロング:総額330万~490万円

 

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シトロエン ベルランゴ(3代目)

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シトロエン ベルランゴロング(初代)
 

候補2:ルノー カングー(2代目)
→想定予算:総額120万~410万円

全長4715mm×全幅1985mm×全高1925mmと大柄なフォルクスワーゲン ID.Buzzと比べるといくぶん小ぶりですし、3列シートではなく2列シートにはなってしまうのですが、「デザインがかわいい箱型の車」という意味ではID.Buzzに引けを取らないのがこちら、フランスのルノーが作っている「カングー」というMPVの先代(2代目)モデルです。
 

ルノー カングー▲何とも愛らしいデザインの2代目ルノー カングー。写真は「ラ・ポスト」という限定車
ルノー カングー▲無理やり3列シートにしていない分だけ、荷室は広く設定されている

2009年に登場した2代目ルノー カングーは、リア両側にスライドドアを備える全長4490mm×全幅1860mm×全高1810mmのトールワゴン。

前述のとおり3列シート・7人乗りではなく2列シート・5人乗りのMPVですが、その分だけ観音開きのバックドアの先にある荷室は広大で、ラゲージスペース容量は5名乗車時でも660L。分割可倒式リアシートと助手席を倒せば最大2866Lまで拡大可能です。

そして何より「ちょっとファニーなエクステリアデザイン」こそがこの車の大きな魅力で、その愛らしいキャラクターゆえか、「カングージャンボリー」という大規模なオーナーイベントはかれこれ20年にわたって開催され続けています。
 

ルノー カングー▲エクステリアと比べて、インテリアのデザインは比較的オーソドックス

2代目ルノー カングーに搭載されたパワーユニットは様々ありますが、オススメは1.2Lガソリンターボエンジンか、モデル末期に追加された1.5Lのディーゼルターボエンジンです。

このいずれかであれば、ただかわいいだけでなく「しっかり走る車」として気持ちよく使うことができるでしょう。

またその他、多種多様でカラフルな限定車の存在している点も、カングーという車の大きな魅力であり特徴です。

2025年7月上旬現在、注目すべき物件の中古車価格はおおむね下記のとおりです。

●1.2Lガソリンターボ搭載グレード:総額120万~370万円
●1.5Lディーゼルターボ搭載グレード:総額340万~410万円

 

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ルノー カングー(2代目)
 

候補3:ホンダ ステップワゴン(6代目)エアー
→想定予算:総額300万~440万円

信頼性の高い国産ミニバンの中から「ID.Buzzの代わり」を探すとしたら、現行型ホンダ ステップワゴンのエアーというモデルが最も適任でしょう。
 

ホンダ ステップワゴン▲こちらが現行型ホンダ ステップワゴン エアー
ホンダ ステップワゴン▲きわめてシンプル&クリーンなフォルム。今どきこういったミニバンは、新型モデルではほとんど見かけない

ホンダ ステップワゴンは、いわゆる5ナンバーサイズのミニバンとして長年愛されてきたモデルで、2022年5月に登場した現行型(6代目)は5ナンバー枠を少々超えることになりましたが、それでも全長4800mm×全幅1750mm×全高1840mmという扱いやすいサイズ感は維持されています。

そんな現行型ステップワゴンには「エアー」と「スパーダ」という2種類のデザインが存在しているのですが、その中の「エアー」は近年の国産ミニバンとしては異例なほどシンプル&クリーンなデザインを採用。

そのため、妙にゴテゴテした造形になっている場合が多いその他のミニバンと違い、フォルクスワーゲン ID.Buzzにもちょっと通じる「シンプルなかわいらしさ」を味わうことができます。

「とはいえちょっとシンプルすぎるかも?」と感じる場合には、「SPORTS MIX」というギア感たっぷりの純正アクセサリーを後付けするか、もしくは自分なりのセンスに基づいたカスタムをちょこっと行えば、すぐにグッといい感じになるでしょう。
 

ホンダ ステップワゴン▲フォグライトガーニッシュやボディサイドモール、ディッシュデザインの16インチホイールなどで構成されるエアー用の純正アクセサリー「SPORTS MIX」を装着すると、このようなイメージに変わる

パワーユニットは1.5Lガソリンターボエンジンと、2Lエンジンにモーターを組み合わせた「e:HEV」というハイブリッドの2種類。痛快に走りたい人にはe:HEVがオススメですが、走りにはさほどこだわらないというのであれば、1.5Lターボでも何ら問題ありません。

それぞれの中古車価格は下記のとおりです。

●1.5Lガソリンターボ:総額300万~390万円
●e:HEV:総額300万~440万円

 

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ホンダ ステップワゴン(6代目)×エアー系グレード
 

候補4:ダイハツ ムーヴキャンバス(2代目)
→想定予算:総額120万~240万円

ここまでは、やや大柄な車であるフォルクスワーゲン ID.Buzzのサイズ感を考慮しながら「半額以下の代わり」を挙げてまいりました。

しかしよく考えてみれば、一番大切なのは「ID.Buzzまたはワーゲンバスっぽいデザインであること」であり、「ID.Buzzに近いボディサイズ」ではないのかもしれません。

そして、もしもあなたが「大勢では乗らないのでボディサイズは小さめでも構わない」と考えるのであれば、イチ推しはこちらになります。

ダイハツの「ムーヴキャンバス」という軽乗用車の現行型です。
 

ダイハツ ムーヴキャンバス▲大きさはずいぶん異なるが、デザイン的にはワーゲンバスやID.Buzzをほうふつさせるダイハツ ムーヴキャンバス
ダイハツ ムーヴキャンバス▲写真は「ストライプス」というバージョンで、この他に「セオリー」という、シックなモノトーンのバージョンもラインナップされている

現行型ダイハツ ムーヴキャンバスは、2022年8月に登場した軽トールワゴン。1655mmという程よい全高の軽乗用車の場合、リアのドアはヒンジ式(ちょうつがいで開くタイプ)になるのが一般的ですが、ムーヴキャンバスは、そこにスライドドアを組み合わせているのが非常に斬新なポイントです。

そして全体のデザインは、まさにID.Buzzのご先祖様である「ワーゲンバス」をほうふつさせるもの。そして広々とした開放的な車内の雰囲気というかテイストも、どこかワーゲンバスを思わせるものがあります。

また細かいことをいえば「置きラクボックス」など、車内にモノを収容する際の使い勝手が異常に良好なのも、ムーヴキャンバスという車の特徴です。
 

ダイハツ ムーヴキャンバス▲実際には小さな車だが、水平基調のインパネと助手席前方のトレーが広々とした印象を与えている

2016年に登場した初代ムーヴキャンバスはターボ付きエンジンのラインナップがなかった点が若干のネックでしたが、2代目ではターボ付きエンジンをしっかり用意。

必ずしもターボ付きでなければならないわけではありませんが、高速道路を使って遠出する機会が多い人には、ターボ付きエンジン搭載車がオススメです。

そんな現行型ダイハツ ムーヴキャンバスのパワーユニット別の中古車価格は、おおむね下記のとおりです。

●ノンターボ:総額120万~210万円
●ターボ付き:総額150万~240万円

 

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ダイハツ ムーヴキャンバス(2代目)
 

候補5:フォルクスワーゲン タイプ2(ワーゲンバス)
→想定予算:総額370万~600万円

かなりチャレンジングな選択肢ではありますが、本気でID.Buzz並みの、いやID.Buzz以上のデザイン性とかわいさを追求したいのであれば、選ぶべきはコレしかありません。 ID.Buzzの本家本元のご先祖様である、ワーゲンバスことフォルクスワーゲン タイプ2です。
 

VW タイプ2▲「ワーゲンバス」という愛称で呼ばれることが多い、フォルクスワーゲン タイプ2

フォルクスワーゲン タイプ2は、ドイツのフォルクスワーゲン社が1950年から1979年にかけて販売したワンボックスタイプの商用車。エンジンは、「ビートル」などにも積まれていた空冷方式の水平対向4気筒OHVという、かなり古典的なものです。

「ワーゲンバス」といったときに一般的に連想されるデザインは、1950年から1967年まで販売されたT1(愛称=アーリーバス)と呼ばれる第1世代でしょう。しかし1968年の大幅改良でデザインを変更したT2(愛称=レイトバス)も、これはこれで味のあるデザインといえるでしょう。
 

VW タイプ2▲こちらが1968年以降のレイトバスことT2

もちろん半世紀以上前に誕生した車ですから、快適装備や先進安全装備の類はいっさい付いていませんし、MT免許がなければそもそも運転することもできません。

そして整備済みの個体であってもたまには壊れるでしょうから、そういった部分についての耐性も必要になる車です。

しかし世界中で愛され続けてきた名車ですから、今なお整備するうえで必要なパーツは豊富に流通していますし、経験豊富な専門店もたくさんあります。

そしてオーナーイベントなどへ行けば、ベテランのオーナーさんが、乗り方やメンテナンスのコツなどを快く教えてくれるでしょう。

もちろん、それでも「買いやすく、乗りやすい車である」とは決していえないのですが、本気で“入門”すれば、意外となんとかなってしまう車であることは間違いありません。
 

VW タイプ2▲現代の車と違っていろいろ手間がかかることは事実だが、それでも世界中で本当に数多くの愛好家が、のんびりと自然体で「ワーゲンバスがある暮らし」を楽しんでいる

ごく少数の人かもしれませんが、もしも本気で「ID.Buz超え」を目指すのであれば、本家ワーゲンバスもチェックしてみることをオススメいたします。
 

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フォルクスワーゲン タイプ2
文/伊達軍曹 写真/フォルクスワーゲン、ステランティス、ルノー、ホンダ、ダイハツ
記事内の情報は2025年7月2日時点のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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