三菱 パジェロイオ(初代)▲5ナンバー&5ドアのSUVは、ジムニーノマドだけじゃない! 四駆の三菱がかつて販売していた、あのモデルも……

現代のコンパクトSUVトレンドを先取りしていた

目下、SUV界隈で最大の話題と言えば、ジムニーノマドに違いない。ジムニーファンにとって長年の夢だった5ドアモデルの国内導入が今年1月に開始。しかし注文が殺到し、わずか数日でオーダーストップとなってしまった。

その後、スズキはインド工場でのジムニーノマド生産体制を月販目標1200台から約3300台に引き上げると発表。今年7月からの増産が予定されているが、受注再開のニュースは未だ聞こえてこない。

仮に再開されたとしても、既に数万台規模のバックオーダーを抱えているというから、すぐに注文しても納車までに年単位の時間がかかることはほぼ確定。中古車も流通し始めたが、最安価格の物件でも新車価格の約100万円高という状況だ。
 

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スズキ ジムニーノマド(初代)

それならいっそ、他の車種に目を向けてみるのはどうだろう? コンパクトで本格的な悪路走破性能を備えた5ドアのSUVという条件なら、あの車があるじゃないか……そう、パジェロイオ(初代)だ!

この記事ではかつて三菱から販売されていたパジェロイオ(初代)の魅力を振り返りつつ、中古車市場での状況をチェックしてみたい。意外な発見があるかもよ!

三菱 パジェロイオ(初代) ▲専用設計だけにリアからのルックスも端正に見える。パジェロ譲りの本格的な設計をもつSUVだ

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三菱 パジェロイオ(初代)
 

モデル概要:サイズはコンパクトでも中身は本格派

パジェロイオ(初代)が登場したのは今から約27年前の1998年。ジムニーの先代であるJB23型やテリオスキッドがデビューしたのと同年で、本格四駆が華やかだった時代だ。

小型車枠の本格四駆として登場したパジェロイオ(初代)だが、軽自動車にオーバーフェンダーを取り付け、エンジンの排気量を拡大する定番の手法を採らなかった。骨格もボディも専用開発。パジェロミニの兄貴分ではなく、パジェロの弟分とされるに相応しい、堂々としたスタイルと本格的な設計だった。

三菱 パジェロイオ(初代) ▲FRベースの駆動系ゆえ、現代のコンパクトSUVよりもエンジンフードが長い。写真は3ドア仕様

ボディサイズは全長3675~4025mm×全幅1680mm×全高1700~1750mm。シャーシはフレームがビルトインされたモノコック構造で、オンロードでの剛性とオフロードでの耐衝撃性を狙った設計だ。

サスペンションも前マクファーソンストラット式、後5リンク・リジッド式というオンオフ両刀の作り。4WDシステムについても同様の目的で、ロック機構つきビスカスカップリングで前後輪に駆動力を配分し、副変速機も備える「スーパーセレクト4WD-i」が採用された。

その走りはオンロードでマイルド、ダートなどの悪路で頼もしく、SUVらしい使い方に適したものだ。現代のコンパクトSUVに比べると、かなり本格四駆寄りの乗り味と思って良いだろう。

三菱 パジェロイオ(初代) ▲インテリアもパジェロを意識したデザイン。シフトレバー後方にはトランスファーレバーが備わる

デビュー時は3ドアのみの設定だったが、その2か月後に5ドア車を追加。後席の空間、荷室スペースを大幅に拡大し、ファミリーニーズにも応えられる仕様としたものだ。ちなみに3ドア車は4人乗りだが、5ドア車は5人乗りと乗車定員にも違いがある。

三菱 パジェロイオ(初代) ▲広大とまではいかないが、必要十分な広さを備えた後席と荷室

約9年間のモデルライフを通じて、何度かマイナーチェンジやラインナップの変更を受けている。主なものは以下のとおりだ。

・2000年6月:1.8L GDIガソリンエンジンを2L GDIガソリンエンジンへと変更。同時にフロントグリルやバンパーのデザインを変更。
・2002年9月:3ドア車を廃止し、5ドア車のみのラインナップに。
・2006年1月:2L GDIガソリン車に5速MT車を追加。

カタロググレードでは2000年に全車2Lエンジンとなったが、1.8Lエンジンも特別仕様車として残り、その後2006年にカタロググレードでも復活した。

モデル最終期になって5速MT車を追加するなど、国内販売では苦戦し、試行錯誤していた様子が分かる。ただ欧州など海外ではなかなかの人気モデルだった。

 

中古車紹介:流通量は少ないが、コンディション良好の物件も

まずはパジェロイオ(初代)の中古車市場概況から見ていこう。現在、カーセンサーに掲載されているパジェロイオ(初代)は約30台。3ドア車はごくわずかで、ほとんどは5ドア車となっている。中古車平均価格は80万円前後という状況だ。

年式別分布では、パジェロイオ(初代)全体の中では後期にあたる2002~2005年のモデルが充実。エンジン別の分布では、1.8Lガソリン車と2Lガソリン車の割合がおよそ半々となっている。ちなみに一時期、2WD車が設定されたこともあったが、現在の中古車市場に流通している物件はすべて4WD車だ。

走行距離別分布では5万~9万kmのボリュームが比較的多い。10万kmを超えている物件も少なくないが、一方で4万km未満の物件もある。

三菱 パジェロイオ(初代) ▲GDIは三菱が開発した、筒内直接噴射式のガソリンエンジンだ

トランスミッション別では4速AT車が圧倒的に多いが、モデル最終期に追加された5速MT車も全体の1割以上を占める。マニュアル派の選択肢が残されているのは嬉しいところだ。

めぼしい物件を探してみると……。2004年式・走行距離2.3万kmの「1.8 TRスポーツパッケージ 4WD」などは、なかなか魅力的。マイナーチェンジ後のフロントマスクは洗練されていて好印象だ。

こちらの物件、走行距離が極端に少なく、塗装や内装のコンディションも悪くない様子。ちなみに価格は総額82.9万円。コンディションの良さを考えると、決して高くはないだろう。

他にも2006年式・走行距離3.5万kmの「2.0 アクティブフィールドエディション 4WD」で総額49.8万円など、お買い得感の高い物件もある。流通量そのものは決して多くないが、今ならまだ程度良好な物件も見つけられる状況と言えるだろう。

三菱 パジェロイオ(初代) ▲2000年6月のマイナーチェンジで、フロントグリルとバンパーに連続性をもたせたデザインに変更された

もちろん約18年前に生産終了となったモデルだけに、ある程度のメンテナンス費用は見込んでおきたい。本格四駆的な作りでタフな設計ではあるが、ゴムブッシュ類など経年変化する部品の交換は必然だ。

5ナンバーサイズながら5ドアでアウトドアレジャーにも使えるパッケージの良さがパジェロイオ(初代)の美点。極端な悪路での走破性能についてはジムニーノマドに譲るところだが、舗装路から荒れたダートまでをフィールドとするマルチパーパスな走りは今見ても魅力的だ。

コンパクトSUVの人気が高まっている現在。今こそ、パジェロイオ(初代)の価値が見直される時かもしれない。

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三菱 パジェロイオ(初代)
文/田端邦彦 写真/三菱
記事内の情報は2025年7月2日時点のものです。
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。