【試乗】新型 フィアット 600ハイブリッド|ドライバーをとりこにするハンドリング、これぞイタリアンコンパクト!
カテゴリー: フィアットの試乗レポート
タグ: フィアット / ハッチバック / ハイブリッド / FF / 600 ハイブリッド / EDGEが効いている / 西川淳
2025/06/28
▲600eに続く600(セイチェント)シリーズの第2弾となる、ブランド初のマイルドハイブリッドモデル。“BIG SMILE”をコンセプトとした愛らしいフロントマスクをはじめ、フィアットらしい内外装も魅力となるファン待望の新たな“エンジンモデル”
フィアットにとっては久々となる“非電動ニューモデル”が上陸した。600(セイチェント)ハイブリッド(イタリア語ではイブリッド)だ。フィアットファンもさることながら、新車販売の最前線に立つ正規ディーラーが何より喜んでいるに違いない。やっと拡販できそうなモデルが入ってきた、と。
いくら魅力的な車であっても、フル電動モデルをこれまでのように“頑張って”売ることは難しい。車そのものの実力や営業努力とは違う理由で、購入の可否が決まってしまうことがどうしても多くなるからだ。500やパンダといった人気のエンジンモデルが日本市場から相次いで姿を消したことで、ディーラーの営業マンは“売るものがない”=苦境に陥っていた。
600も当初はフル電動モデル(600e)としてデビューした。いかにもイタリアのフィアットらしいデザインで、デビューするや多くのファンを魅了したが、BEVのみと聞いて諦める人も多かったようだ。
一刻も早くエンジンモデルの導入を! 切望の声は果たしてトリノにも届いたようだ。600ハイブリッドがついにやってきたのだ。
▲内外装は先に登場した600eと同様、初代600のエッセンスと500eや600eのかわいらしさを取り入れたデザインパワートレインはすでにステランティスグループ内の他ブランド、プジョーやシトロエンで使われている48Vマイルドハイブリッドシステムで、1.2L ガソリンターボに電気モーター内蔵の6速DCTを組み合わせている。
電気モーターの出力が16kW、バッテリー性能は約0.9kWh、とスペック的には頼りなく思えるかもしれないが、先走りして言っておくと、600のようなコンパクトカーには十二分の+α性能を与えてくれるシステムであった。
▲最高出力136ps/最大トルク230N・mの新開発1.2L 直3ターボエンジンに22ps/51N・mのモーターと48Vバッテリーの組み合わせ、システム総合で145psを発揮走り出した瞬間から“良い車感”
ゴー&ストップの多い街中でゆっくり流していると、できるだけエンジンを使おうとしない制御に気づく。時おり変速にもたつくこともあったけれど、おおむねパワートレインマナーも上々だったと言っていい。ちなみに、十分に充電された状態であれば、およそ1km、そして30km/hくらいまで電気オンリーで走らせることもできる。
走り出した瞬間から“良い車感”のあるモデルだったが、何より気持ちよかったのは、峠道に入ってからの加速フィールだ。立ち上がりから力強く感じられ、程よくノリノリのトルクフィールがしばらく続く。もちろんフル電動の600eに比べて驚くほど力強いとは言えない。けれども右足の踏み込み量に対して、リニアに力が増していく感覚はドライブしていて素直にうれしいものだ。制動コントロールが微妙に難しい場面もあったものの、それにも増して右足の裏が喜ぶ感覚があった。こうなると気分もまたノってくる。
▲2スポークステアリングや丸型メータークラスターなど、初代600のデザイン要素を受け継いだインテリアもうひとつ、フル電動モデルではついぞ味わえなかったフィアットらしさ、というかイタリアのコンパクトカーらしい走りを改めて体験することができた。比較的たっぷりとしたサスストロークで粘り強く腰からキレイに旋回していく。軽度なきっかけを与えてやれば車が踊るように曲がっていく感覚さえあった。しかも両腕の操作に忠実な曲がり方をする。そんなドライバーをとりこにするハンドリング性がいかにもイタリアンコンパクトカーらしい。
フィアットの内外装デザインは今なおユニークであり続けている。愛くるしい顔立ちや、ヘリテージに向き合ったダッシュボードなど、見どころも多い。積載能力といった実用性の高さも十分だ。加えて最新の運転支援機能も充実している。
そして何より、ユーザーにも、そして苦労の多かった営業マンにもうれしいことに、このユーロ高のおりにプライスタグの数字が戦略的にかなり抑えられた。600台限定とはいえ400万円を切ったグレードも用意されている。2グレードあるうちの上級モデルがベース。お買い得である。
▲アダプティブクルーズコントロールやレーンポジションアシストなど、運転支援機能も充実付加価値が重要なプレミアムブランドならまだしも、ジェネラルブランドであるフィアットが電動化を機に少しアッパークラスを狙う、という600eの使命がそもそも間違っていた。ユーザーの反応は芳しくなかったし、BEVを売るという気概も特に感じられなかった(車は良いのに! )。
ハイブリッドモデルの展開をこのまま進めてゆきさえすれば、これまでどおり、フィアットファンもまた店に戻ってきてくれるのではないだろうか。ジェネラルブランドには今、常時のモデル更新と、その結果としての豊富な選択肢が求められているのだと思う。
ともあれ、興味を持った人が純粋にデザインと性能で選んでいい久々のフィアットが現れたのだった。
▲フロントマスクはヘッドライトを目に見立てた、笑顔のようなデザイン(BIG SMILE)を採用した
▲ラ プリマはグロスブラック加飾や18インチホイールなどで、精悍なイメージを演出した
▲FIATモノグラムを用いたシートを装備。ベースモデル(受注生産)はファブリック、ラ プリマ(写真)はエコレザーを採用する
▲後席は6:4分割可倒式を採用、前席同様にFIATモノグラムで飾られた
▲ラゲージ容量は通常385L、後席を倒せば最大1256Lまで拡大する
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
フル電動モデル(BEV)のフィアット 600eの中古車市場は?

フィアットのBEV第2弾となるコンパクトハッチ。スタイルは1955年に登場した初代600や500eからインスピレーションを得ている。ステランティスグループの電動コンパクトモデル用プラットフォーム(e-CMP)を採用。最高出力156ps/最大トルク270N・mのモーターで前輪を駆動、容量54kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電走行距離は493km(WLTCモード)とデイリーユースに不満のないレベルとした。
2025年6月中旬時点で、中古車市場には25台程度が流通。支払総額の価格帯は420万~490万円となる。
▼検索条件
フィアット 600e(初代)【試乗車 諸元・スペック表】
●ラ プリマ
| 型式 | 3AA-FH1FIM | 最小回転半径 | 5.3m |
|---|---|---|---|
| 駆動方式 | FF | 全長×全幅×全高 | 4.2m×1.78m×1.6m |
| ドア数 | 5 | ホイールベース | 2.56m |
| ミッション | 6AT | 前トレッド/後トレッド | 1.54m/1.53m |
| AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 4WS | - | 車両重量 | 1330kg |
| シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
| 乗車定員 | 5名 | 車両総重量 | -kg |
| ミッション位置 | インパネ | 最低地上高 | -m |
| マニュアルモード | ◯ | ||
| 標準色 |
ホワイト |
||
| オプション色 |
サンセットオレンジ、スカイブルー、シーグリーン |
||
| 掲載コメント |
- |
||
| 型式 | 3AA-FH1FIM |
|---|---|
| 駆動方式 | FF |
| ドア数 | 5 |
| ミッション | 6AT |
| AI-SHIFT | - |
| 4WS | - |
| 標準色 | ホワイト |
| オプション色 | サンセットオレンジ、スカイブルー、シーグリーン |
| シート列数 | 2 |
| 乗車定員 | 5名 |
| ミッション 位置 |
インパネ |
| マニュアル モード |
◯ |
| 最小回転半径 | 5.3m |
| 全長×全幅× 全高 |
4.2m×1.78m×1.6m |
| ホイール ベース |
2.56m |
| 前トレッド/ 後トレッド |
1.54m/1.53m |
| 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 車両重量 | 1330kg |
| 最大積載量 | -kg |
| 車両総重量 | -kg |
| 最低地上高 | -m |
| 掲載用コメント | - |
| エンジン型式 | HN09-ZA03 | 環境対策エンジン | - |
|---|---|---|---|
| 種類 | 直列3気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
| 過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 44リットル |
| 可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 総排気量 | 1199cc | 燃費(WLTCモード) |
23km/L
└市街地:23.5km/L └郊外:23.6km/L └高速:22.3km/L |
| 燃費基準達成 | - | ||
| 最高出力 | 136ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
230(23.5)/1750 |
| エンジン型式 | HN09-ZA03 |
|---|---|
| 種類 | 直列3気筒DOHC |
| 過給器 | ターボ |
| 可変気筒装置 | - |
| 総排気量 | 1199cc |
| 最高出力 | 136ps |
| 最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
230(23.5)/1750 |
| 環境対策エンジン | - |
| 使用燃料 | ハイオク |
| 燃料タンク容量 | 44リットル |
| 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 燃費(WLTCモード) | 23km/L
└市街地:23.5km/L └郊外: 23.6km/L └高速: 22.3km/L |
| 燃費基準達成 | - |
【関連リンク】
この記事で紹介した車
あわせて読みたい
“日本の誇り” 日産 R35 GT-Rは果たしてスーパーカーなのか?【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
’07 フェラーリ F430|空力とヘリテージが息づくV8ミッドシップ【名車への道】
光岡 M55とダッジ チャレンジャーは本当に似てるのか問題。アメ車好きにも刺さるのか、ガチ比較してみた!
’73 シトロエン DS|独自のデザインと乗り心地、そのすべてに“哲学”がある【名車への道】
トヨタ アクアが、プリウス顔に大胆イメチェン! でもマイルドな見た目がお好きなら、前期型もいいんじゃない? 中古車相場をチェック!
フェラーリの維持費ってどれくらいかかるの? そんなリアルな疑問、専門店に聞いてきた!
~300万では選べない、1000万では高すぎる~ 600万円で探せる一度は乗っておくべきクルマ【カーセンサーEDGE 2025年11月号】
新型T-Rocが海外で発表されたけど初代なら100万円台で買える? 日本にぴったりのコンパクトSUV、中古車相場やオススメの狙い方を解説!
マセラティ MC12ストラダーレ最高額落札の盛り上がりの陰で、マクラーレンの“最終車両”コレクションがひっそりと販売されていた!?
【祝! 頭文字D30周年】 主人公・藤原拓海の愛機ハチロクことスプリンター トレノAE86の中古車状況は今どうなってる? モデル概要、狙い方も併せて解説









