ランボルギーニ ウルスSE▲2024年に登場した“スーパーSUV”のPHEVモデル。燃費だけでなくパフォーマンスや快適性、ドライビングプレジャーなどにおいて従来のガソリンエンジンモデルを凌ぐとされる

ランボルギーニの最新SUVは “無音”スタート

V8ツインターボ+電気モーターのプラグインハイブリッド搭載でシステム総合の最高出力は800ps、なんてうたい文句だけを聞いていると、とてつもないSUV(彼らがいうところのスーパーSUV)だろうと誰もが身構えて乗りこむに違いない。

0→100km/h加速は3.4秒。もはやぺったんこなスーパーカー級じゃないか。そんな速さで重さ2.4t超のでっかいSUVが加速する。そりゃアナタ、想像を絶する世界だと思ってしまうじゃないの。

ところがどっこい。そんな期待と恐怖に反して、都内のいつものホテルから走り出したウルスSEは、まずは静かにそして極めて従順だったので、かえって驚いてしまった。

エンジンスターターボタンを押す。無音だ。周囲を驚かせるあの爆音はもはや幻聴でしか聞こえてこない。ホテルのエントランスでタクシーを待っている大勢の外国人がこちらを見つめている。ランボのSUVでしかもエンジン音がしないことに驚いているようだ。本当はすさまじい音を期待していたのかもしれない。そう思うとなんだか愉快だ。これが新しいランボルギーニなんだぜ、と説明してやりたくなる。

バッテリーの容量は26kWh近く。フル充電であれば60kmくらい電動で走る計算だ。要するに日常域ではほぼガソリン要らずということ。買い物に出て、用事を済ませて、戻ってまたわが家のガレージで充電、を繰り返せば日常的にガソリンスタンドへ行く必要はない。

PHEVやBEV最大のメリットは、ガソリンスタンドがわが家にやってくること。充電インフラが整っていないなんて実はほとんど関係ない。一軒家限定ではあるけれど、日本を見渡せば世帯の半分くらいはそうであるらしい。
 

ランボルギーニ ウルスSE▲最高出力620ps/最大トルク800N・mの4L V8ツインターボに192ps/483N・mのモーターを組み合わせ、システム総合で800ps/950N・mを発揮する

気がついたらV8エンジンがかかっていた

というわけなので、いつものように東京からわが家のある京都を目指して東名高速に乗り入れても、ウルスSEはしばらく電動走行を続けた。電気モーターだけでピークトルクが500N・m近くある。2.4tを苦にせず十分な加速を見せるし、その速さはちゃんとランボ級だから、静かに風を切って走ることもなんだか面白かった。

どの辺りからエンジンがかかったのか。実はよくわからなかった。多分、厚木は過ぎていたと思うけれど定かではない。見逃したことが悔やまれる。気がついたらV8エンジンはかかっていたのだ。裏を返せば、それくらいシームレスにエンジンは作動する。ドライブモードは“ストラーダ”、いわゆるノーマルだった。

往路は我慢してノーマルモードで走り続ける。どれくらい燃費が伸びるのか知りたかったからだ。重量が増したこともあって高速クルーズの安定感はさらに増している。途中、雨に降られた。悪天候になってもびくともしない。ビタッと路面を捉えて安定した走りを続けてくれる。このあたり、四駆システムがより制御の早い電気式多板クラッチへと変わったことも良い影響を与えているようだ。

とにかくよくできたGTであった。もっともそのことは基本的なメカニズムを共有するポルシェ カイエン GTターボでもそう思ったから、当然の結果だろう。

バッテリーの電力をほとんど使ってしまったあとは、もちろんV8エンジンが主役となるわけだが、このあとの制御がまた目まぐるしい。エンジンを切っては動かし、切っては動かしの繰り返し。なるほどできるだけ不健康なエンジンをかけたくないのだと分かる。

カタログでは80%ものCO2を削減した、とうたっているが誇張ではなさそう。しかもドライバーはそんなパワートレインの目まぐるしい変化を音や振動で感じることはまるでない。本当にエンジンのオンオフやってるの? と疑ってしまったほどだ。

そんなこんなで感心しているうちに、“ストラーダ”のままあっという間に450kmを走破した。驚くべきことに、ガソリン残量が燃料計のほぼ半分もあった! そんなランボルギーニの燃料計など見たことない。もちろん無給油(なんなら無充電)。

ガソリンタンクは80Lくらい入るはずだから40Lちょいで京都まで走ったことになる。50kmくらいを電動で走ったと仮定すると、正味のガソリン消費は10km/L。800psのランボルギーニとしては上出来すぎるだろう。
 

ランボルギーニ ウルスSE▲バンパーやグリルなどのデザインも変更され、空力が向上している。リアゲートはガヤルドから着想を得た一体型デザインを採用

休日にはホームワインディングの嵐山高雄パークウェイを攻め込んだ。モードはスポルト。以前に比べて明らかにハンドリングが良くなっている。ウルス ペルフォルマンテを上回る俊敏さだ。下りのコーナーなどではさすがに重量を感じてしまうけれど、そもそも2tオーバーのSUVである。まがりなりにも曲がってくれれば十分というものだろう。

わが家には充電器がない。だからBEVはもちろんPHEVも購入する資格がない。

後者は特に日本の急速充電施設では“招かざる客”だ。いや、電気を供給する側としては良い客である。なんせ電池容量が少ないからそんなにのみ込まない。CHAdeMO(チャデモ)の充電スタンドはほとんど時間制料金で電気量は関係ないからだ。裏を返すと、使う側にとっては実に高い電気料金を払うことになるし、BEVユーザーにとっては貴重なスポットを独占するKY(空気読めない)なヤツでしかない。

仕方がないので、本末転倒とは知りつつ少しだけチャージモードを使う。当然ながらめちゃくちゃ燃費が悪くなる。やっぱり今どきこの仕事をしているのなら家のガレージに充電器が必要だ。

もちろん充電しなくてもフルハイブリッドだから通常の走行に支障はない。東京への復路もまた快適のひとことであった。
 

ランボルギーニ ウルスSE ▲エアサスペンションはSEに合わせてセッティングが変更されている。タイヤサイズは標準で21インチ、撮影車両は22インチが装着されていた
ランボルギーニ ウルスSE ▲12.3インチセンターディスプレイを備えた、最新ブランドデザインのインテリアを採用
ランボルギーニ ウルスSE ▲スタート/ストップボタンの右側にはEVモードのスイッチが備わる
ランボルギーニ ウルスSE ▲シートのトリムやカラーはラインナップが変更された
ランボルギーニ ウルスSE ▲ラゲージの床下に25.9kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載
文/西川淳 写真/タナカヒデヒロ

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

ランボルギーニ ウルス(初代)の中古車市場は?

ランボルギーニ ウルス

ブランド初のターボエンジン(4L V8ターボ)を搭載、2017年にブランド初のSUVとして登場した“スーパーSUV”。

クーペフォルムやブランドのデザインモチーフなどにより、ランボルギーニらしいスタイルに仕立てられている。2022年には改良が行われ、より高性能なペルフォルマンテとS(写真)の2モデルに進化。2024年にはPHEVのSEへとバトンタッチされた。

2025年8月上旬時点で、中古車市場には170台程度が流通。支払総額の価格帯は2450万~5500万円となる。ちなみに、右ハンドル仕様は40台程度流通している。
 

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ランボルギーニ ウルス(初代)
文/編集部、写真/タナカヒデヒロ
※記事内の情報は2025年8月4日現在のものです。