とりあえず選んだスバル レックス。だが、車好きが言う「何でもいい」は信じちゃいけない
2023/08/19

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
何でもいいと選んだ車。多くは求めていなかったが……
「ダイハツ ロッキーのスバル版」であるスバル レックスを2022年に購入した、大の車好きである矢作直之さん……ではあるが、大の車好きであるにもかかわらず、スバル レックスと矢作さんとの間に“恋愛関係”のようなものは成立していない。
少なくとも矢作さんはそう思っており、「この車は単なる“足”なので、正直、走ってくれれば何だっていいんです」と言ってはばからない。
感情はないはずの車であっても、さすがにそこまでハッキリ言われてしまうと、スバル レックスがなんだか不憫にも思えてくるわけだが、矢作さんがそう言うのも無理からぬところではある。

矢作さんはこれの他にもう1台、「純粋に走りを堪能するための車」である初代マツダ ロードスターを以前から所有している。いわゆる自動車趣味的な部分は、そちらがもっぱら受け持っているわけだ。
▲レックスとは打って変わって、矢作さんのこだわりが詰まったロードスター(写真:本人提供)職業は自動車整備士。通勤用の車として軽自動車を使っていたが、趣味であるモータースポーツ観戦などのため遠出をする機会も多く、「さすがにもうちょっと排気量があった方がいいかも……」と思うようになってきた。
とはいえ、趣味車である初代ロードスターの他に3ナンバー車も維持するのはちょっとキツい。「ならば5ナンバー車で」と探していたところにちょうどよくデビューしたのが、ダイハツ ロッキーおよびトヨタ ライズのスバル版OEM車であるコンパクトSUV、スバル レックスだったということだ。
「いや本当に“動けばOK”みたいな感覚で選んだ車ですので、『この車のどこが気に入っていますか?』みたいなことを質問されても困っちゃうんですよね……。まぁ思っていたよりはよく走りますし、1.2Lの自然吸気エンジンですが、出足もかったるくない。燃費も街乗りで15km/Lぐらいは走りますから、『なかなかいい車だな』とは間違いなく思っています。でも『気に入ってます!』みたいな心情とはちょっと違っていて……」
サーキット走行を堪能するための、エンジンチューン済み初代マツダ ロードスターと、完全な“足グルマ”であるスバル レックス。……その中間にあたるような存在を、矢作さんは欲していない。
「もしも中間的な車が手元にあったら、自分の生活は“どっちつかず”みたいな感じになってしまうと思うんです。だったらキッパリ分けた方がいい。ロードスターの方ではとことん走りを追求して、逆に普段乗る車は、徹底的なまでに“ザ・足グルマ”であることを求めたい。だから、この車は便利で快適で経済的でさえあってくれればOKで、それ以上の何かはまったく求めてないんです」
▲広い荷室は、たくさん機材を積む必要があるレース遠征の際に重宝話はわかった。確かに、例えばカリカリにチューンした2シータースポーツ2台を同時に所有していても、基本的にはあまり意味はない。そのため、矢作さんの“割り切り方”は理にかなっている。
だが――あることに気がついた。このレックス、妙に車高が低い。そしてタイヤとホイールも、絶妙なサイズ感のモノに交換されている。
▲車高は落とされ社外アルミホイールを履くレックス。何でもいいと選んだ車のはずでは……?「あ、バレましたか(笑)。車高は、納車3日後にはダイハツ ロッキー用のダウンサスに交換して3~4cmほど下げちゃいましたし、ホイールも、ロードスターが履いているのと同じブランドのものに交換しています。そしてタイヤも軽く“引っ張り”にしてるんです」
タイヤの“引っ張り”とは、タイヤよりも幅広なホイールを履くことで、タイヤが外に向かって引っ張られている状態をあえて作るというカスタマイズ手法。それによりホイールの存在感が増し、得も言われぬ雰囲気ができあがるという次第だ。
そして矢作さんは「動いてくれれば何だっていいんですよ」というスバル レックスで、それをやっている。しかも派手に引っ張るのではなく「少しだけ引っ張る」という引き算の美学で、微妙かつ絶妙にスポーティな世界観を作り上げているのだ。
▲ちなみに、エンジン始動ボタンもスバルのモータスポーツブランドの「STI」のものに変更されている。細かい部分だが、一気にスポーティな雰囲気が漂う……矢作さん、あなた本当にこの車のことを「動けばとりあえず何でもいい存在」だと思ってます?
「いや、まぁその……『動いてくれれば何でもいい』という言葉や気持ちにウソはないのですが――どうしてもやっちゃいますよね。車、やっぱり好きなんで(笑)」
大の車好きが発する「何だっていい」という言葉は、決して鵜呑みにしてはいけない――というのが、今回の取材で得た教訓であろう。
また“恋愛関係”は成立していない矢作さんとスバル レックスの間柄ではあっても、何らかの友情関係は成立しているのではないかと推測できた。
車好きが、手元にある車を“トモダチ”とみなさずに生活を続けるのは、なかなか難しいことなのだ。


矢作直之さんのマイカーレビュー
スバル レックス(現行型)
●年式/2023年式
●購入してからの走行距離/約7800km
●マイカーの好きなところ/ルーズコントロール付きの車は初めてですが、長距離の運転が楽で快適ですね
●マイカーの愛すべきダメなところ/オートライトの感度が良すぎてしょっちゅう点灯する
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/5ナンバーサイズなので、免許取り立ての方も運転しやすいと思います

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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