トヨタ スプリンタートレノ

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

学生時代に見たアニメの車を忠実に再現した1台

2025年9月13~14日、静岡県の富士スピードウェイにて『頭文字D』の連載開始から30周年を記念したイベント「頭文字D 30th Anniversary 2days」が開催された。

会場には作中車専用の駐車場が設けられており、そこにはAE86やRX‐7といった主要キャラの愛車から、カプチーノやMR2といったバイプレイヤー的存在の車まで、いまとなっては路上で目にする機会も減ってしまった国産スポーツカーが全国各地から集結した。

そんなイニD好きにはたまらない空間で、ひときわ注目を集めていたのが京都から雨の中を自走でやってきた「スプリントレノさん」の愛車。白黒パンダカラーのトレノのハッチバックといえば、言わずと知れた主人公である藤原拓海の愛車と同じモデルだが、その高い再現度が多くの来場者の目を引いていた。

トヨタ スプリンタートレノ▲ナンバープレートも主人公と一緒のものを作ってイベント時に付け替える徹底ぶり

「僕は漫画ではなく、アニメから入りました。大学時代にリアルタイムで見て『なんだこれは!』と衝撃を受けたんです。イニDのアニメって3D CGで描かれた車がグリグリ動くじゃないですか。ああいうアニメって当時は他になかったのですごく新しさを感じました」

そのときに放映されていたのは「プロジェクトD」に参加した拓海が、県外の走り屋チームとアツいバトルを繰り広げていた「Fourth Stage」。そのインパクトもあり、スプリントレノさんのAE86はそのときの作中車の仕様、いわゆる「プロジェクトD」を再現している。

ワタナベの8スポークにイエローのフォグランプ、ドアに貼られた「藤原とうふ店」のデカール、カーボンボンネット、ラゲージには豆腐を運ぶ番重(プラスチック製の食品トレイ)まで積んである。

じつは公式グッズとしても番重は販売されているらしいのだが、スプリントレノさんは市販の番重に藤原とうふ店のデカールを貼ってDIYしたものだとか。

トヨタ スプリンタートレノ

19年大事に乗ってきた車は、とにかく運転が楽しい!

「AE86を購入したのは主人公の愛車というのはもちろんですが、リトラクタブルライトを採用するボディスタイルが好きだったことも大きいです」

「当時、すでに新車ではリトラクタブルライトの採用モデルはなくなっていたので。大学を卒業する前から『就職したら絶対AE86を買う』って友達に宣言していました」

トヨタ スプリンタートレノ

宣言どおり、就職してすぐに専門店で自身の出生年と同じ1983年式AE86を購入。当時もイニDの影響で中古車価格は高騰していたが、それでも現在と比べればまだ手が届く現実的な価格だった。それから現在まで約19年にわたって大事に維持してきたという。

「長く乗っているのでもちろん故障することだってあるんですが、とにかく運転していて楽しいです」

トヨタ スプリンタートレノ▲内装のレトロな感じもお気に入り

軽快な操縦性に加えて、名機4A‐Gが発するサウンドも大きな魅力とスプリントレノさん。現在、エンジンは5バルブ化し、カムやピストンなども交換するチューニングが施されており、峠を軽く流すだけで快音を楽しめるという。

そんな愛車のサウンドを多くの人と共有しようと、エンジンの吸気音や排気音に特化したASMR(音響効果)コンテンツを配信するYouTubeチャンネルも運営しているそう。日本だけではなく、海外からのファンも多く、数万人のフォロワーを獲得している。

「こうしたイニD関連イベントへの参加やYouTubeチャンネルや運営などを通じてつながった人たちがたくさんいるんですよ。もしハチロクを買っていなかったら僕の人生は今とはまったく別のものになっていたと思います」

トヨタ スプリンタートレノ▲作中で主人公がもらう手作りのキーホルダーは、家族のお手製で忠実に再現

先述のイベント「頭文字D 30th Anniversary 2days」は2日間合計で延べ3万7600人(主催者発表)ものイニDファンが来場したという。

いまや頭文字Dは世界的なコンテンツ。同じ物語を共有する世界中の人との出会いが、これからもスプリントレノさんの人生を豊かにしてくれることだろう。

トヨタ スプリンタートレノ

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トヨタ スプリンタートレノ(4代目)
文/佐藤旅宇、写真/尾形和美
トヨタ スプリンタートレノ

スプリントレノさんのマイカーレビュー

トヨタ スプリンタートレノ(4代目)

●購入金額/約125万円
●他に迷った車は?/DMC デロリアン。高価でタマ数が少なく、故障も多いと聞いていたので断念
●購入の決め手/大学時代に当時TV放送されていた『頭文字D』のアニメにハマって購入を決意
●マイカーの愛すべきダメなところ/すぐサビるところ。油断するとすぐ土に還ろうとします

佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はフォルクスワーゲン クロスUP!と日産 ラルゴの他、バイク(HONDA)とたくさんの自転車。