ラジコンカーを買ってもらえなかった幼少期。その悔しさをバネに、今は憧れのスーパーカーオーナーに!
2025/10/09

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
スーパーカー好きの少年が抱いた夢
「僕の少年期は、まさにスーパーカー世代の真っただ中でした」
中学校教諭の父の家庭に育った大塚さんは、裕福ないとこが持っていたラジコンカーをうらやましく眺めていたという。スーパーカー消しゴムの収集やラジコンカーへの憧れこそが、車に興味を持った原点だった。
幼心に家庭環境の違いを感じていたため、親に欲しいとねだることはしなかった。正月に親族が集まった際、経営者だった叔父が腹巻からたくさんのお金を取り出す姿を目にし、「大人になったら頑張って経営者になり、好きな車を買えるようになろう」と強く思ったのだという。
経営者を志し、大学では政治経済学部に進学。本を読みあさる中で司馬遼太郎の「竜馬がゆく」と出合った。
「本を読んで、一度きりの人生、国を動かすような人物にならないといけないと思ってしまったんです。若気の至りというか、野望を抱いちゃったんですよ(笑)」

祖父が政治家だったこともあり、当初は自らもその道を志していた。しかし大学3年時に教育学を学び、人生を変える出会いを果たす。 「そのときの教授が、“国を動かすなら政治家じゃなく教育者だ”と言ったんです。衝撃でしたね」
その言葉をきっかけにいくつかの経験を重ねた後教育へとかじを切ると、学ぶほどに可能性を感じた。行き着いたのは人格形成において最も重要な幼児教育だった。幼稚園教諭、中学校、高校と資格を取得し、卒業後は大学附属幼稚園で勤務。教育を徹底的に学び、自らの知識を深めていった。
その最中、父が中学校教諭を辞め、昼は幼稚園、夜は塾を経営するようになった。大塚さんは大学附属幼稚園に勤務し研鑽していたが、その姿をみた大学理事長から大学教授を目指すよう言葉をかけられた。
しかし、両親から「実家に戻り、跡を継いでほしい」と懇願され戻るが、教育感の相違から衝突してしまう。
「もうこうなったら! と、27歳で起業してベビーシッター派遣を始めたんです」
人生を賭け、所有していた車やバイクを売って資金を作り起業。当時BMW 5シリーズが仲間内で流行する中、彼女のコンパクトカーを借りて乗ることもあり、強烈な悔しさをバネに努力を重ねたと笑う。
事業は託児所から病院・企業内保育へと拡大し、全国展開するまでに。年商も右肩上がりとなっていった。

「おかげさまで事業が軌道に乗り、夢だったスーパーカーをついに手に入れることができました」
最初に購入したのは、フォルムに強く引かれたという「フェラーリ 328GTS」。それ以来、会社が成長し何かの節目を迎えるタイミングに、“成功のご褒美”として憧れていたいろいろな車を手に入れてきた。
現在はGT-R、アヴェンタドールSVJ、カウンタック、テスタロッサ、ロールスロイス、MINI、そして新たに迎えたポルシェ 911タルガをコレクションに加えている。
「男としては白洲次郎とジェームズ・ディーンに憧れていて、人生最後の1台はポルシェ 911と決めていたんです。60歳手前になり、そろそろいいかなと思って。もっとも、仲間たちにはまだまだ最後じゃないだろ、と言われますけどね(笑)」
注文から納車まで2年ほどかかると聞き、待ちきれなかった大塚さんは知人に依頼し、オークションで探してもらった。条件は走行20km以内。いわゆる新古車という条件で、見つかったのはカブリオレとタルガ。大人の雰囲気を感じたタルガを選んだ。
「なんといっても、この造形美はたまりませんね。ずっと見ていられます」


ハンドリングやスロットルレスポンスの鋭さは日常の走行でも十分に体感でき、運転そのものが楽しいひとときになるという。タルガでの夢は、雪の降る冬に那須高原の宿「山水閣」を訪れること。
過去に4WD車で訪れた際、ポルシェで来ている人を見かけ、その姿がとても格好良かったからだそうだ。「雪の中をRV車ではなくスポーツカーで走っている姿が、映画のシーンのようでとても格好良かった。絶対行きます!」と笑顔で宣言する。
地元の宇都宮を盛り上げていきたい
そして大塚さんは現在、教育事業の傍ら熱中していることがある。
まずは、GTワールドチャレンジ・アジア Japan Cup GT3 AMクラスに参戦するレーシングチーム「MACCHINA」。
2024、2025年と2年続けてシリーズチャンピオンを獲得するなど、今では強豪チームの仲間入りを果たしている。

そしてもうひとつが、スーパーカー好きが集まる憩いの場を提供したいとオープンさせた、「スーパーカー&カフェ MACCHINA」の運営だ。
大塚さんは栃木県出身。地元を盛り上げたいとの思いで、宇都宮で開店することに迷いはなかったという。
店内にはスーパーカーを展示し、間近に眺めながら飲食を楽しめる夢のような空間を演出。駐車スペースも一般より広めに確保するなど、スーパーカーならではの配慮が随所に施されている。

「スーパーカーに乗っていない方もぜひ来てほしいと思っています。栃木は観光地がとても多く、旅の中継地点として一息つける場所にもしていきたい。車好きかどうかは関係なく、気軽に足を運んでいただきたいですね」
またオーナーイベントの開催や、地域の学生・子供たちとの交流の場を設けるなど、車を身近に感じてもらえる取り組みを積極的に行っている。カフェを拠点に、さらに地元を盛り上げたいと語る。
大人になり、仕事を頑張った結果、幼い頃にうらやんでいた“ラジコンカー”の代わりにスーパーカーを手にする環境を自ら築き上げた大塚さん。幼少期の自分に「努力の結果」を見せてやりたいと笑う。夢をみて夢を目標にし、努力を続けて叶えることの大切さを伝えたい。
「スーパーカーは憧れや格好良さ、そしてワクワクを与えてくれる存在です。僕が子供の頃に感じたように、今のお子さんたちにも実際に見て触れてもらい、“車にはこんなにワクワクする世界があるんだよ”と伝えていきたいです」

▼検索条件
ポルシェ 911(992型)×タルガ系グレード
大塚雅一さんのマイカーレビュー
ポルシェ 911タルガ(992型)
●購入価格/2800万円
●マイカーの好きなところ/その造形美にはうっとり、ずっと見ていられます
●マイカーの愛すべきダメなところ/僕は車をいじることも好きなのですが、カスタムするとディーラーが扱ってくれなくなるのがちょっと残念です
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/車をかっこよく乗りこなしたい人。特に女性が乗っていたら、僕はほれちゃいますね(笑)

自動車ジャーナリスト
瀬イオナ
車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。
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