クラス最高峰の美しさとスポーティな走り「アウディ A7 Sportback」に酔いしれる
カテゴリー: アウディの試乗レポート
2018/10/05

ラグジュアリーさはもちろん走行性能も磨かれた
2011年の初夏に、初代アウディ A7 Sportbackが日本に導入した当時、ボリューム的にはポルシェ パナメーラと似たボディサイズであった。パナメーラはおよそ1年前から発売されていて、ポルシェ伝統のデザインを踏襲した高速ツアラーであったが、A7の場合は同じ高速ツアラーでもエレガントな4ドアスポーツクーペといった印象であった。
弟分のA5 Sportbackはすでに日本では導入されていたが、ラグジュアリーとまでは及ばなかった。
A7の個性は、ショルダーをぐっと寝かせたクーペのデザインをした4ドアで、新しい高速ツアラークーペを予感させるモデルであった。テールランプが奥にあるようなデザインは、耐久のレーシングカーのようなデザインで新鮮さもあった。
あれから7年。A7は成熟したデザインとなった。アウディは、デザインとクオリティに特化したブランドであることは事実である。最近の方向性を見るとデザインに成熟感を加えて、落ち着いた雰囲気を作り出してきているのだ。そのひとつがフロントとリアにある。

アウディが世界に知らしめたデザインのひとつである、ヘッドライトまわりを繊細に作り込んだシングルフレームグリルがさらに奥行き感を発展させたのだ。
衝突安全性を考えながらもスマートかつシャープなデザインで、精度の高いパーツを作りだしている。繊細な雰囲気の中に高級感を生み出しているのだ。Aピラーも細くなりホイールベースが伸びた分、エレガントな装いがぐっと増した。

試乗したモデルは、3リッターのV型6気筒直噴ターボモデルである。バンク角にターボが収納されており、コンパクトでハイレスポンスを可能にしたユニットだ。高速走行も含めてエンジンを可能な限り停止させつつも、パフォーマンスを落とすことなく走るあたりに燃費への配慮が感じられる。再始動や様々な電気的な制御を効率良く行うのが、48Vのマイルドハイブリッドシステムである。
日本人からするとそれほど目新しさはないが、48V化により効率が良い。高級なマイルドハイブリッドシステムはどのようなものかと、試乗が楽しみである。
試乗するA7を近くで見ると、ボディ面の精度の高さは素晴らしい。鉄板を折り返した際の隙間を最小限にとどめられるようシャープに折り返したヘミング処理は美しく、全体的なフォルムに一体感を感じさせる。

ドアを開けてシートに腰を沈めるとシートは張りのあるレザーにも関わらず、座ると程よい沈み込みとホールド感がある。
手に触れるひんやりとしたメタル類は、ベースが樹脂ながらも金属をどれだけ混ぜているかというコストのかかる処理が施されている。センタークラスターとドアインナーパネルが隣接する部分の精度は、このクラスでは最高峰だろう。よくここまで精度の良さを追求していると思う。
他社のベンチマークになるのもうなずける。いつまでも眺めていたいほどキレイなインテリアはさておき、試乗に移る。ボタンを押してエンジンを始動すると、驚くほど静粛性が高い。マイルドハイブリッドの恩恵による強力なスターターシステムがすごい。発進時も無駄のない振動で静粛性に富んだ状態を維持しながら動力を路面に伝える。7速のツインクラッチ式のATは伝達効率が良く、ステップアップのシフトがラグジュアリーと言うよりもスポーツカーのようだ。
車両設定は特にセレクトはしないで、AUTOの状態で試乗した。とにかく以前よりもボディ剛性が高く乗り心地がすこぶる良い。そして何よりもひと回り小さく感じるようなコックピットからの眺めである。ついA5あたりを乗っているかのような感覚になる。加速はエレガントでどう猛にはならないが、隙あらば瞬時に加速して抜き去るポテンシャルを秘めている。普段は爪は出さずにクルージングに徹する。

避暑地・軽井沢の片側2車線のワインディングを軽快に流す中で考えたことは、先代よりもさらに軽快であってハンドリングの安定感も抜群にいい。これは遠くにツアラーとして楽しみたくなる、ドライバーズカーの1台として記憶にとどめておきたい。
さらにコーナーを攻めると安定性は極めて高い。当日は雨にも関わらず足元に不安をまったく感じたことはなかった。それもこれも長年培われた4WD制御のおかげであろう。といってもフルタイム式ではなく、クラッチ式の電子制御式のパートタイム4WDシステムであるが、フルタイムと遜色ないほど自然である。必要とあらば素早く前後にトルクをかけて、スタビリティの向上を狙ったシステムだ。
走行中のエンジン停止からの再始動のすごさを誇らしげにアウディ側は説明していたが、日本の軽自動車やリッターカーででも搭載しているので感激はない。
アウディも日本のアイデンティティーに目をつけたという感じは否めない。とはいうものの真似できないクオリティーとオンリーワンのデザインアイデンティティーには間違いない。エレガントさとスポーツドライビングを手にしたければ、A7は最有力候補の1台だ。
【SPECIFICATIONS】
■グレード:A7 Sportback 55 TFSI quattro S-line 1st edition
■乗車定員:5名
■エンジン種類:V型6気筒DOHCインタークーラー+ターボ
■総排気量:2994㏄
■最高出力:250(340)/5200~6400 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:500(51.0)/1370~4500[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:電子制御式7AT
■全長x全幅x全高:4975 x 1910 x 1405(mm) ■ホイールベース:2925mm
■車両価格:1161万円(税込)
あわせて読みたい
【試乗】新型 アストンマーティン ヴァンキッシュ|V12を積んだ新たなFRフラッグシップは、リアルスポーツからGTまで劇的に変化する乗り味を得た!
【試乗】新型 ヒョンデ インスター ラウンジ|かわいい見た目に安心感を兼ね備えたコンパクトEV
“SUV疲れ”した人に贈る「代わりに、実用性も備えるスタイリッシュフォルムが新鮮なコレ、どうですか?」5選
【試乗】新型メルセデスAMG G63|改良により心地よさという価値が付加された新たなGクラス
【試乗】新型 アウディ A5|堂々たるサイズの新ネーミング基幹車種、ベーシックモデルも必要十分に実用的!
【試乗】新型メルセデス・ベンツ Gクラス EQテクノロジー|電気の力でよりスポーティに、より高級に
【試乗】新型 ボルボ XC90|マイナーチェンジで真のプレミアムSUVへと進化! 「これで1000km走りたい」
マツダ RX-8の魅力は速さじゃない!? 中谷明彦とZ世代モータージャーナリストが、ロータリーエンジン搭載スポーツカーの魅力に迫る【カーセンサー中谷塾】#4
トヨタ スープラ(A90型)生産終了の発表に絶望した人に贈る「代わりコレ、新車在庫がなくなったときに備えてどうですか?」5選
【試乗】トヨタ ランドクルーザー70(再々販モデル)|現代に蘇らせた意味を再考する