【試乗】新型ランドローバー レンジローバー|風格を感じるデザインと走りをもつプレミアムSUV
2022/11/10

歴史をもつプレミアムSUV
半世紀以上、最高峰SUVに君臨するレンジローバーは5世代目を迎えた。
とはいえ、追従を許さない高級路線へと一気に舵を切ったのが2002年に登場した3代目のレンジローバーからといっても異論はあるまい。
BMWからフォードへと傘下の変更はあったが、基本設計のクオリティは高かった。
その継承は4代目、5代目へと伝わっていることはデザインを見ても明白である。
3代目も寛容なサスペンションストロークと独立懸架になって一気にロイヤルワラントにふさわしい乗り心地となった。
4代目となってさらにレンジローバーというアイコンが強調され、エンブレムがなくても見ればレンジローバーだと理解できるフォルムを作り上げた。
私が試乗した中で、東京~京都をADAS(高度運転支援システム)を使わずに往復し、最も疲れないモデルこそレンジローバーである。
風格を感じるデザインと走り
前置きが長くなってしまったが5代目となっていかがなのであろうか。
期待が高まる中、今回は軽井沢での試乗の感想をお伝えしたい。

まず、ボディを一周見回すととにかく作りは素晴らしいにつきる。
とてもじゃないけどこれだけ思い切ったクオリティを加飾でごまかさないプレス構造物を作るのは他のメーカーでは見たことも触れたこともない。それほど素晴らしいプレス技術と精度を感じるのだ。
プレミアムカーの真髄を知っていなければこのような作りこみはできないであろう。この製法は高級車のベル・エポックのド級のモデルのみに使ったカロッツェリアがこしらえたような作りこみだ。
わかりやすく言えばショーカーのクオリティというべきだろうか、初代レンジローバーから流れる水平基調のインテリアは装飾を可能な限り少なくしたエクステリアとの関連性がうかがえる。

レンジローバーが素晴らしいのは、5mを超える全長と2m以上の幅を感じさせない視覚性にある。これはデザインによるところも大きい。

続いて、ワインディングでの走りはどうか。
基本的にガソリンモデルの試乗を中心に行った。
グレードはP530でBMW製の4.4L V型8気筒ツインターボエンジン。
車内の静粛性はとにかく抜群だ。内燃機関においてこれ以上の静粛性は存在する意義さえも分からないほど静かである。
出力は530馬力、トルクも76kg・mを超えた値をわずか1850回転から発揮している。
およそ2.7トンあるボディを考えると王者の風格を体感させるには必要なパワーなのであろう。上り坂も余力をもって静かにそして力強く走る。
8速ATのあんばいは緻密で動力とギアの関係性が最適に保たれており、どこからでも加速し、エンジンがビジーにならない懐の深さを感じさせる。

サスペンションストロークは計り知れない奥行き感があり、それでいて追従性は抜群だ。中速コーナーが連続するところも、ロールを適度にさせて抑えながら身体を安定させ曲がる。
大きな船に乗れば、波のうねりもなんのそのという印象である。
続いて20cm長いロングホイールベース仕様にも試乗した。
期待は大きい。なぜならLWBとなればボディ剛性が高ければ、路面からのうねりに対してキャビン内の乗員の動きは少なくなるからだ。

通常のホイールベースモデルが良かっただけに「もっと良くなっちゃうの?」という期待感が高まる。
しかし、動きだして感じるのは思った以上に乗り心地がよいわけではなかった。それが正直な印象だ。理由は定かではないが、ボディのバイブレーションが感じ取れたのだ。
LWBのメインは後席だから代わりに運転してもらい後ろに座ってみたが、広々としてゆったりはしているものの期待以上ではなかったのは「期待しすぎ」からくるものだろうか。
とはいえ、無二のプレミアムSUVとして文句のつけようがない。すべてにおいてのクオリティの高さがうかがえる。50年以上の王者はやはり王者であった。
過去にこれほど乗り心地と運転のしやすさを兼ね備えたSUVは乗ったことがない。
素晴らしいにつきるモデルといえる。


自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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